東方剣士、僕剣士の力量をはかる
「どうした。抜けと言っている」
「えっ、そ、そんな……東方さんに剣を向けるだなんて、できっこありませんよ」
ひどい動揺っぷりだ。
しかし、ここは抜いてもらわねばならない。
「ほう。これは大した自信だな。
まさか、私を傷付けることができるつもりか」
「いっ、いえいえ! まさかそんな!!」
「敵はモンスターばかりとは限らんぞ。女子どもが斬りかかってきても、そう言うのか。
やらねば、チャンスはない。
抜け」
言いながら、剣を抜く。
エルンストは、「で、でも」とかゴニョゴニョ言いながら、後退っていく。
少し、焚きつけるかな。
俺は無言でエルンストに向かって歩いていきつつ、月光を発動する。
刀身が青く光る。
そのまま踏み込み、大きく袈裟斬りにする。
「うわわっ!」
青い軌跡を残し、横っとびで、エルンストは避けた。
ほう。やるじゃないか。かすらせるつもりだったのに。
だが、エルンストの体勢は崩れたまま。
次は避けられまい。
間髪入れず、星光を発動。
緑色の光を見て、エルンストも気付いた。
いくぞ、5連撃。
「くっ……! 星光!」
咄嗟に剣を抜き放ち、同じく星光を発動して打ち合ってくる。
なかなかやる。だが……。
体勢が悪い上、込めた力もこちらが上だ。
それに、星光のレベル不足で3連撃までしか発動できないようだ。
こちらの4、5撃目は、左右からまともに入った。
5撃目で大きく振り抜き、吹き飛ばす。
「ぐふっうっ! ……ハァ……ハァ……」
距離ができた。
仕切り直すかな。
「漸く抜いたか。最低限凌げたじゃないか。次は攻めてこい」
「本気、なんですね。……分かりました。行きます!」
やっと覚悟を決めて、剣を構え直すエルンスト。
ばっちこいやあ!
「こい」
「う……うっぉぉぉおおおおおおおおお!」
「吠えて強くなるのか?」
挑発しつつ、待ち受ける。
箍を外さないと、好きな女になど斬りかかれない、ってとこか。
先程よりも力の籠った剣戟を、捌いていく。
どうやら今度は本気のようだ。
だが、それでもなお、軽い。
鏡の軌跡で合わせながら、少しずつ押し返す。
最後に、また大きく振り抜き、吹き飛ばした。
「ぐっ! ハァ……ハァ……」
たったこれだけの攻防で、エルンストは大量に汗をかいている。
対するこちらは、涼しい顔だ。
まあ、それだけ集中した、ってことだろう。
この分なら、多少の時間稼ぎくらいにはなりそうだな。
「振り出しに戻ったな。これで仕舞いか?」
それにしても、やけに剣が軽い。
単なるレベル差によるものか。
それとも、別の理由があるのか。
気になった俺は、エルンストの詳細を見てみることにした。
エルンスト・パークス
中級剣士 LV63
HP 2264/3060
SP 1534/1594
腕力 134
体力 246
敏捷 134
知力 122
精神 134
スキル 星光 影光 影心
ふむ、なるほど。LV差は20程度か。
体力に多めに振ってるな。制圧するより、耐えるタイプか。
東方剣士と打ち合うには、ちょっと厳しい数値だな。
中級剣士か。
道理で、星光が3連撃までしかできないわけだ。
ちなみに、東方剣士の詳細は、こうだ。
東方剣士
上級剣士 LV89
HP 3140/3140
SP 966/1186
腕力 760
体力 98
敏捷 98
知力 98
精神 98
スキル 星光 月光 陽光 月照
見ての通り、腕力特化。
俺のキャラは、全員、単一のステータスに極振りしてるからな。
敏捷に振っても攻撃力が上がるんだけど、剣士は腕力での上り幅が最大だから、極振りしている。
王道の一形態だ。
他の王道なら、手数を増やす敏捷タイプとかだな。
ただ敏捷特化なら、やはり闘士がいい。
さすがに腕力を上げたほうが基礎攻撃力は上がるんだけど、闘士のメインスキル、シュートは敏捷値依存だから、腕力しか上げてないと残念スキルになってしまう。
以上を勘案するに、エルンストのステ振りは、けっこう邪道だ。
しかも不人気スキル、影光を育てているとは……。
さては、エルンストめ、病に罹っているな。
あの病に。
「ハァ……ハァ……フゥ~~~…………」
あれこれ考えている間に、エルンストが呼吸を整え終えた。
というか、呼吸の仕方、変わったな。
「フゥ~~~~……フゥ~~~……影心!」
影心を発動するエルンスト。
その全身から黒いオーラが立ち昇る。
構えも変わり、正眼から下段になった。
「影光!」
そして、そのままの距離で、影光を発動。
刀身も黒いオーラに包まれ、斬り上げてきた。
剣の届く距離じゃない。
しかし……この攻撃は届く!
剣撃の跡が黒い刃となり、こちらへ目掛けて飛来する。
これは剣では斬れない。避けるしかない。
「ふっ!」
廻り込みつつ、回避。
エルンストは再び構え、第二撃を放とうとしている。
俺は影光のスキルを取得していないから、相殺する方法がない。
採るべき選択肢は二つ。
避けるか、出される前に潰すかだ。
接近する俺に、エルンストが焦りを見せる。
「これでどうだ! 影光ぉっ!」
むっ。
今度の刃は、横への広がりが大きい。
これは、影光LV5か。
あるんじゃないか、範囲攻撃が。
奥の手ってやつか。
近付きすぎて、避けるのは骨だ。
下がれば避けきれるかも知れないが、せっかく詰めた距離をあけるのも悪手。
ここは、押し通る!
「南無三!」
剣を盾にして、正面から突っ込む。
「なっ!」
エルンストが驚いている。
距離をとって、立て直すつもりだったな。
だが、そうはいかんざき。
黒い刃が全身を斬り刻む。
黒い刃の威力は、範囲を広げることで弱まっている。
どうということはない。
俺はそのまま滑るようにエルンストの首元まで剣を構えて接近し―――――
「ま……参りました」
寸止め。
決着した。




