表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/77

東方剣士、丁重に交際をお断りする

「剣士殿」

「フヒャイ!」

「二、三、質問をしたいが、宜しいだろうか?」

「ハッハイィ! 何なりと!」


 ガッチガチやん。

 なんだこれ。


「ではまず、貴殿の名は?」

「エルンスト。エルンスト・パークスです!」


 何でそんな勢い込んで教えてくるんや。

 目、輝かせんなや。

 ウザッ。


「エルンスト殿、か。

 エルンスト殿。私は先程、地下での護衛PTの募集をかけ、貴殿が応じた。そうだったな」

「ハイッ! その通りです!」

「うむ。そして、今回のPT参加への動機を聞いた。

 ここまでは良いな」

「ハイッ!」


「済まんが、今一度、理由を聞かせて頂こう」

「ハイッ! 好きです!」


 ……。


「聞き間違いかと思っていたが、先程と同じように聞こえるな。念の為、何が好きなのか、聞いておこう」

「フヒャ!? も、もちろんそれは……」

「それは?」

「あ、あなたです!!」


 真っ赤になって答えるエルンスト。


 ないわー。

 ドン引きですわ。


 逆にこっちはどんどん冷めていきますわ。


「エルンスト殿。私は今回の依頼への応募動機を聞いた筈だ。些か的外れではないか? これでは納得できない」

「えっ!? そ、しょんなぁ……」

「言った筈だ。どうしてもと言うのなら、私を納得させてみろ。

 そもそも、私は貴殿と面識すらない。それなのに、好きなどと言われてもな」

「あっ。た、確かに、おかしいですよね!? ご、ごめんなさい。僕、前の依頼を片付けて、大聖堂に来たんです。旅の無事を神に感謝するのが習慣なので……。そうしたら、お祈りをしているあなたを見かけて。

 きれいでした。とても、きれいでした」


 うっとり。

 エルンスト、思い出しているようだ。

 旅立ってしまった。


「左様か」

「それから、毎日通い詰めました! また、会いたくて!」


 会いたくて、って。

 会ってないわ。遠くから見てただけやろ。


 そう言われてみれば、東方剣士にチェンジして大聖堂にいたとき、男も何人かいた。

 その中に、彼もいたのだろうか。

 いたような、いなかったような……。

 大して興味がなかったから、覚えてないな。まあ、いたんだろう。

 ってか、噂の美人剣士って、もしかしなくても俺のことか?


「それで、募集をされていたので、思い切って。

 僕、僕、どんな依頼でもがんばります! 連れて行ってください!」

「成程。話は分かった」

「えっ!? そ、それじゃあ……!」


 嬉しそうな表情になるエルンスト。

 そんな彼を見据えながら、俺はため息をついて、話し始めた。


「要約すると、だ。エルンスト殿。

 貴殿は私と共に在りたいと願い、依頼の内容は問わない、と。

 こういうことだな」

「ハッハイ! おっしゃる通りです、はい!」


 目をキラキラさせて、勢い込んで答えるエルンスト。


 こんな純粋な告白されてもなあ。

 一ミリもときめかない。むしろゾワゾワする。

 30男には、ハードル高すぎるわ。


 こっちも若けりゃ、気持ち悪いとかなんとか言って、スッパリお断りなんだが。

 中身が俺なのは、こいつのせいじゃないからなあ。

 受け入れるつもりは皆無だが、PTすら組まない、ってほどじゃない。

 考えようによっては、俺に危害を加えることはない絶対的な味方になり得る。


 ……別の危険は、あるかもしれない、のか。

 その時は、すぐチェンジしよう。

 勝手に撃退してくれるに違いない。


「早まるな。私は未だ納得した訳ではない。

 重ねて問おう。賊が現れ、護衛対象に危機が迫ったとする。貴殿は、その身を賭して、守れるか?」

「もちろんです! やっ、やってみせます!」

「その意気や良し。では、私が負傷したら、どうする?」

「全力で、あなたをお守りします!!」


 ……。


 即答か。

 キュンと、せんわ!


 あかん、ただのバカやったこいつ。


「依頼は失敗に終わるな。護衛対象を置き去りにする気か」

「あっ! そ、それは! えっと……それでも、僕はあなたをお守りします!」


 護衛任務のことについては、今、思い当たったようだな。

 速攻でこっちを選ぶとか、ホントバカだなこいつ。


 しかし、ある意味決断力は、あるか。

 PTに応募したことからも、実行力もあるといえる。


 ……ふぅむ。


 ここは、バカとハサミは使いよう、という格言にのっとって、彼を採用する方向で行くか。


「よく分かった。質問は終わりだ。

 ……まず、私は貴殿の気持ちに応えることはできない。そして……今のままでは、連れていくことも出来んな」

「そう……ですか。あっ! 『今のままでは』って言いました? 言いましたよね!? チャ、チャンスがあるんですか」


 しゅんとしたかと思ったらすぐに復活して尋ねてくるエルンスト。

 これが若さか。


「うむ。二点ある。ひとつは、私の指示に従うこと。例えば、何があろうと、依頼を優先することだ。例え、私が戦闘不能に陥ろうともな」

「はっ、はい! そうします! そうしますから連れて行って下さい!」

「逸るな。そして、もう一点だが……」


 俺はそこで言葉をきり、剣の柄に手をかけた。


「抜け」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ