東方剣士、地下への護衛PTを募集する
「大聖堂地下護衛PT@2。範囲攻撃優遇」
マッハでのPT募集に続き、二度目のPT募集だ。
自律行動中に、砂漠募集とかしてたけど、俺じゃないからノーカン。
配管工は兄弟二人らしいから、東方剣士を含めて三人。
残りの枠は二人だ。
……配管工の兄弟って。
やっぱり赤と緑かな。
「ハッ! ハイ! ハイッ! その募集、僕も連れて行って下さいです!」
応募か。
剣士だな。
「宜しく頼む」
「えっ? いいんですか? 範囲攻撃優遇って……」
自分から応募しておいて、拍子抜けしたような顔になってる。断られる前提でダメもとで応募したようだ。
剣士はねずみを倒すのには向いてないが、まあいいだろう。
要は修理が終わるまで、邪魔をされないようにすれば良いのだから。
ねずみを殲滅しなければならないわけではない。
「問題無い。大聖堂地下護衛PT@1。範囲攻撃優遇」
答えつつ、募集枠を改めて呼び掛ける。
限定商品なんかと一緒だ。
こういうのは進捗状況を細かく知らせ、早くした方がいいと思ってもらった方が、すぐ集まる。
ほら、おいでなすった。
「判決レベル7が扱えます。よろしいでしょうか?」
ハンケツ聖職者か。
「いいだろう。大聖堂地下護衛PT〆」
「よろしくおねがいします」
ハンケツ、といったが、別に不埒な格好をしているわけではない。
純白のローブに身を包んだ、シスター然とした聖職者だ。
判決は、聖職の範囲攻撃スキルだ。
対象のカルマ値によってダメージが増減する、やや扱いにくい対人戦特化スキルで、善行を積んだ者には全く効かず、逆に悪行を重ねた者には大ダメージを与える、というものだ。
ねずみにも牽制程度には使える。
まあ、本領を発揮するのは、下水都市に蔓延る盗賊とかに出くわした時だろうな。
回復もできるし、不測の事態に備える護衛PTには、申し分ないメンバーだ。
「改めて、お二方。宜しく頼む」
「はい、よろしくお願いします」
「ハッハヒィッ! がんびゃりますので、よろしくおねがいしますです!」
……。
剣士の方はなんか、舞い上がってるというか、入れ込んでいるというか。
挙動不審だな。
一体どうしたんだ。
「出発は明朝。地下道の下水管修理に立ち会う。暗闇での戦闘に備えて頂きたい。
各自準備を整え、明朝八時に大聖堂北門で落ち合おう」
「かしこまりました。八時に北門ですね」
「ひゃいっ」
「では解散」
ハンケツ聖職者の方は、すぐさま行動に移り、立ち去って行った。手慣れた感があるな。
巡礼かな。
巡礼だと、路銀稼ぎにチマチマと依頼をこなしたりしてるやつが多いから、対応力がある。
それに比べてこっちは……。
チラッと横目で僕剣士の方を見やると、何やらメモを取っていた。
メモを取るのは感心だが、不安しかないぞ。
「時に。剣士殿」
「えっ、ハイ! 僕に、何でしょうか?」
「うむ。剣士殿は、護衛の経験はお有りだろうか」
「ハイ! 商隊の見張り程度なら」
「では、地下都市は?」
「いえいえ! 僕はそんな、地下都市なんて恐ろしくて。普段はえっと、シンバツとノーウィやガイザンなんかを行き来してますです!」
都市間定期ルートでの堅実派か。
実入りは多いとは言えないが、まずもって安全だな。
「ふむ。では何故今回は、地下の護衛PTに参加されたのだ?」
先程までの言動と、普段受けているという依頼とは、毛色の違うPT。
それなのに、いの一番に名乗りをあげてきた。
何か怪しい。
「え……っとそれは……その……いろんな経験を積むのが大事だと思ったっていうか、僕もそろそろ仲間を作ったりしていく足がかりになったりするとか……え~~~と、それから……」
しどろもどろだな。
なんかゴニョゴニョ言い出した。どんどん小声になっていくな。
「剣士殿」
「ッハィィ!」
俺は、僕剣士の言い訳染みた発言を遮って、冷徹に一声掛けた。
ビクッとして気をつけの姿勢になる僕剣士。
「率直に言おう。今述べたような理由もあろうが、それは本当の理由ではあるまい。人それぞれ、事情もあろう。
しかし、私を納得させられなければ、組むことはできない」
今回のような少人数の護衛PTで、信頼できない奴と組むわけにはいかない。
単に足手まといなだけならまだいいが、盗賊やらの手先でないとも限らないのだ。
見たところ、僕剣士がそういうスパイのような真似事ができるとは思えないが。
メモとかも、ただ普通に不慣れでメモってるだけだと思う。
そこらへんは、よく分からずに指示されてる可能性も、否めないな。
ま、こんなんより、さっさと別の奴を集めることにするか。
ハンケツ聖職者には、PTが変わったと知らせれば良いだろう。
再びギルドで募集をかけよう。
踵を返したところで、僕剣士から待ったがかかった。
「あっ! 待って! 待ってください!
……分かりました。正直に! 正直に言いますから、行かないでください! お願いです!」
振り返る。
「そうか。では、私を納得させてみろ」
何故このようなクエストにこだわるのか。厄介事の匂いがプンプンするなぁ。
俺は冷たく僕剣士を睨み据えながら、彼が口を開くのを待った。
……。
「えっ……と……そのぉ……」
……。
「だから……僕はですね……」
……。
「その……つまり……」
……。
クルッ
ザッザッザッ。
「あ~~~! 待って! 待ってください。
今、今言いますから、お願いです」
何だよもう。
めんどくさくなってきた。早く言えよ。
……。
「え~~~、あ~~~~~……ん、ん、ゴホン!」
……。
「実は……僕は……あのぼきゅはですね……」
……。
クルッ
「好きです!」
……。
…………。
……………………………えっ?
は?
えっなにそれ?
どういうこと?
バッと振り向いて、僕剣士を見る。
頬は紅潮し、若干目が潤んでいる。
ついに言ってしまった、というやってしまった感と、僕は言いました! というやりきった感が混在した顔をしていた。
え~~~~~~~……………。
まさかの告白っすか。




