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東方剣士、湯浴みする

 俺は、風呂に入ることにした。

 大浴場、というわけじゃなく、脱衣所の先に、3、4 m四方くらいの浴槽があり、洗い場も数名分あった。


 いわゆる「銭湯」よりも、さらにちっちゃいな。


 しばらくは誰もこないっていうし、パパっと済ませてしまおう。


 俺は正面を向き、無心で服を脱いで畳み、桶に入れていった。


 ……。


 サラシ、巻いてあるな。

 動くのに、邪魔だもんな。


 硬ってぇな、これ。どこから取るんだ。

 ん、お。これか。


 え、なにこれ、固結びになってる。


 お~~い。これ、固すぎるんですけど。

 と、とれない。


 んぬぬぬぬぬぬぬんう!


 ハァ、ハァ。


 え、これどうしよう。



 ……。



 斬ろう。


 スチャ。


 インベントリから取り出した小太刀を胸の間に挿し入れて、サラシを斬る。


「Oh……」


 サラシを斬り、解放された胸が、胸が……。



 デカい。



 ハッ!



 いや、イカンイカンイカンイカン。

 考えるな、感じろ。


 Don't think,feel!


 ちゃうちゃう。

 ちゃうねん。


 感じたら、もっとあかんやろ。


「Oh~~~~! コレガジャパニーズハラキリデスネ~~~~!」


 片言外国人の勘違い実況を入れてみる。


 ふう。


 ちょっと思考が逸れた。


 無心、無心。


 なに、俺はただ、風呂に入りたいだけなんだ。

 何の問題もないさ。


 俺は欲情、じゃなかった、浴場へと向かった。



 洗い場の一つに腰かけると、銭湯よろしくシャワーが設置してある。

 なんかもう、時代とか風情とか色々台無しなのな。

 使い方が分かるのは、助かるんだけどさ。


 なるべく正面を見ながら、桶に湯をためていく。

 正面に鏡が設置してあるから、顔だけじっと見て、意識を逸らさないようにする。


 切れ長の目。

 力強い眉。


 凛々しい。

 頬とかに汚れが付着しているが、それが逆に地下での大冒険を彷彿とさせてさらに凛々しい。



 ……。



 ハッ。


 いつの間にか、桶に湯はたまりきって、溢れ返っていた。


 タオルを濡らして、石鹸で泡立てる。


 泡立てる。

 泡立てる。

 泡立てる……。



 モコモコモコモコモコ。



 ……。



 ハッ。


 モッコモコになった。


 視線を固定して、考えないように考えないようにしてたら、どうもな。


 まあ、下手にゴシゴシする羽目になるより、意識しないで済みそうかな。


「モッコモッコにし~てあげるぅ~~~♪」



 ……。



 静寂が痛いなぁ。



 泡立ててモッコモコになったタオルで、全身を撫でる。



 ……とりあえず背中から。

 前はちょっと、ハードル高い。


 ふう。

 なんてことないな。


 さて、じゃあいよいよ……。



 ゴク。



 いあいあ。

 いよいよとか考えてる時点でダメじゃん。


 耐えろ俺。

 湯船に浸かるその時まで。



 しかし、俺は背中だけモッコモコになった状態で止まっていた。


 いかん、なんかのぼせてきた。


「南無三!」


 前もタオルで撫でていく。



「あっ」



 ピク。



「ふ……」



 いかん。なんか意識すると……。


 ダメだダメだ。煩悩を捨てろ、俺!



「一々が一一二が二一三が三一四が四一五が五一に努力二に努力三四がなくて五に努力武具馬具武具馬具三武具馬具合わせて武具馬具六武具馬具お湯屋へ寄った居合屋さん湯屋で嫌々居合やる衆生無辺誓願度煩悩無尽誓願断法門無量誓願学仏道無上誓願成 」


 よし!



 シャンプーまでありやがる。

 シャワーでまずは頭から濡らし、シャンプーもする。


 全身も、シャワーを浴びて泡を落とす。

 手やタオルで擦ると意識してしまうから、胸の前で片手を立て、ひたすらお経を唱える。


「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無眼耳鼻舌身意無色声香味触法無眼界乃至無意識界無無明亦無無明尽乃至無老死亦無老死尽無苦集滅道無智亦無得以無所得故菩提薩埵依般若波羅蜜多故心無罣礙無罣礙故無有恐怖遠離一切顛倒夢想究竟涅槃三世諸仏依般若波羅蜜多故得阿耨多羅三藐三菩提故知般若波羅蜜多是大神呪是大明呪是無上呪是無等等呪能除一切苦真実不虚故説般若波羅蜜多呪即説呪日羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶般若心経」


 修行僧か。

 滝行か。


 とセルフツッコミを入れながら、はい終了!

 ごめんもうこれでカンベンして下さい!


 俺は心の中で大聖堂のシスター達に謝りながら、洗い場から立ち上がり、湯船へと向かう。


「遂にきたか、この時が! 湯船よ、私は帰ってきた!」



 いや、どっからや。もうええわ。


「てぇいっ!」


 コレクターアイラ、エンター!



 ジャボンッ!



「う゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁ~~」



 芯からあったまりますのお。


 あれですわ。

 異世界へきてからこっち、色々ゲーム要素を楽しんだりもしたけど、なんか心休まる時がなかったっていうか。

 あんまり落ち着かなかったっていうか。


 この風呂、なんかハーブのいい香りがするな。

 何が入ってるんだろう。後で聞いてみるかな。


 やっぱリラックスするには風呂!

 断然、風呂。


 DANZEN俺のハートをキャッチだぜ!


「DAN ZEN 心惹か~れ~て~く~~そーのーぬっくい湯~船~に~~~♪」


 あ~~気持ちいい。

 思わず歌っちゃうね。

 いいね、風呂の独り占め。


 なんか、エロいこととか考えてた自分が恥ずかしいですわ。

 解放されたね、今、俺は。

 解き放たれたね。


 賢者の気分だね。

 言うなれば今は、賢者タイムだね。


 ふぅ。

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