中の人、未分化の世界で神と邂逅する
浮いている。
上も下も、右も左もない。
どことも分からないそんな場所に、俺はいた。
ぼんやりした頭で、思い出そうとしてみる。
東方剣士として宿に着いてから、マッハに切り替えようとしたら、また切り替えられた。そしてもう1度、東方剣士に戻りたいと念じたら戻れた。
正直な話、色々とわけが分からなかったが、疲れていたのでまた起きてから考えようと思って、寝たんだった。
あれが夢だったとしたら、目覚めても良いようなものだが、ここはまた夢とも現実ともつかないような、フワフワとした気持ちになるところだ。
周りの景色は、はっきりとしない。
果てしなく広がる草原のような気もするし、どこまでも水平線が続く海のようにも感じられれば、真っ暗闇のようにも思える。
何でもあるようで、何でもない。
これはそう、未分化な細胞のような……。
どこかであって、どこでもない。
どこでもないようでいて、どこでもある。
認識できない世界。
『そうだね。その認識で合っているよ』
急に、頭の中に声が響いてきた。
慌てて周囲を見回した……と思う。
見回したような気もするし、動いていないような気もする。
うぇっぷ。
酔いそうだ。
『キミはもう、ここに半分足を踏み入れているんだから、考えるんじゃなくて感じるといいよ』
また声。
今度は、左の耳元で話し掛けてきた……気がしてそちらを向くと、少年の形をとった真っ白い塊がいた。
宇宙空間にいるようにお腹辺りを軸にくるくる回っている。
……いや、回っているのは俺の方だった。
止まれ、と念じたら止まった。
『お~、うまいうまい。まあ、もう世界をひとつ創ったキミからすれば、どうってことないよね?』
俺が、世界を創った……?
俺が、神か?
『神、ね。そうともいえるし、そうでないともいえる。色々と不確かなんだ。ただ、確かなことは、キミはもうしばらく、キミの創った世界で楽しめるってことかな?』
俺が、創った世界? もしかして、それって……。
『そう。キミがFBWと呼んでいたゲーム。その特徴を色濃く残した世界。あれはキミが創ったんだ。
平行世界、なんていう言葉を聞いたことあるよね。泡のように無数の世界が、この世には存在している。
キミが現実として認識していた世界は、その中でも高次の世界でね。キミのいた世界の人たちが創造の翼を広げ、数多の世界を生み出し続けている。
古くは、妖精の世界や、海底の世界。悪魔や幽霊の世界。
最近では、あらゆるモノが人格を持った世界や、今いる世界の文化を持ち込んで、それを広めることを楽しむ世界なんかが人気だね。
そして、キミが創ったような、ゲームや仮想、空想の世界。そうやって誰かが創った世界に飛び込んでいくのも、また、流行ってるね』
戸惑うオレの周りで、消えたり現れたりしながら、白い少年は話し掛けてくる。
『そう。そういう意味で、キミは神だし、キミの世界にいる人はみんな神であるともいえる。
キミがボクのことをちゃんと認識できないのは、ボクが、キミよりもさらに高次な存在だからなんだ。
ま、ボクのことはあんまり気にしないで。キミも、運が良ければ……っていうか、まあ、機会があれば、ボクを知ることもあるよ』
理解が追いついていかない。
ただ、あの世界が俺の創ったものだとすれば。
もう少し、もう少しだけ。
そう、楽しかった、楽しかったのだ。
FBWはもう、終わってしまった。もう2度とできないだろう。
だが、俺が創った世界だというのなら、もう少し。
いちプレイヤーとして、延長プレイをしたい。
『世界は泡のように不確かだ。キミがいても、いなくても、いずれは弾けて消えてしまう。キミが元いた世界でさえ。
ただ……キミのような創造力を持った者たちが支えれば、運命の時を先延ばしにすることもまた、できるかも知れないね』
唐突に、白い少年はフッと消える。
『どうやらキミの目は覚めるようだね。どっちの世界で覚めるかな? まあ、おそらく……』
偶然ですが、年内で表題に絡んだ一つの区切りに辿り着きました。
ようやく中の人が認識を終え、これから益々盛り上がっていくなりきりえくすちぇんじ。
とはいえ、この文章を執筆している10月時点で、ブクマおひとり、評価は2点。
評価も益々盛り上がり、多くの人の目に触れて、サービス終了してしまったオンゲブラゲの悲しみを分かち合えるといいな、と思います。
良いお年を。




