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時空交差点~フタリノキョリ~  作者: かんな らね
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第五章 現在・過去・未来 4 side 麻生聖

 4 side 麻生聖


 不思議な機械に乗せられて、次に目を開けた時には別世界に居た。


 海沿いにある倉庫の前に居た筈なのに、此処は大広間。空が晴れ渡っていて吸い込まれそうに青い。視線を上から正面に向ける。

「聖様!」

「我らの永遠の母!」

 凄まじい歓声と共に迎えられる。人々が全員緑色の髪の毛で長髪な事から、彼らがp‐typeだと気付く。しかし、状況が理解出来ない。

「さあ、聖様。こちらへ……」

 東雲さんに腕を引かれて一本の大木の方へ歩み寄る。


 とても不思議な木だ。

 水晶のようなもので出来ている透明な木だ。

 僅かに青い色が入っている。

 木の中心部に何か有る。

 否、

 何か居る……。

 肩にかかる茶色い髪。

 白い肌。

 赤い唇。

 見覚えのある顔。

 毎日見てる顔。

 私の顔。


 少し大人っぽいけど、これは間違い無く私だ……。


「これは」

「p‐typeの原木……聖木せいぼくになられた未来の貴女のお姿です」

「…………」

 やはりこういう未来を選んだのか。


 信じている人に裏切られた。

 愛している人に裏切られた。

 東雲さんが私に見て欲しいものがあると言われ此処まで付いて来た。移動する直前、響の声を聞いた気がする。でも、きっと幻聴だろう。響は私を殺しに来たんだ。

 呼び止めてどうする?

 今更私に何を言うつもりなのか?



「出雲響さんを愛していますか?」

 何の前触れもなく、東雲さんが質問してくる。

「……ええ」

 私は一瞬の迷いもなく答える。

 この気持ちは偽れない。

 例え裏切られても偽れない。

「貴女にしか出雲響さんを始め、この二十六世紀の人類とp‐typeを救う事は出来ないのです」

「二十六世紀……」

 響はそんな未来から来たのか……。


 漫画を初めて見せた時、読み方が分かってなかった。

 色鉛筆を知らなかった。

 今年の流行語を一つも知らなかった。

 顔を思い出すと愛しくて、逆にむかついてくる。


「私にしか救えないって、どう言う事ですか?」

 思い出に浸っている場合ではないので、思考を現実に戻す。

「単刀直入に申し上げて、p‐typeの種子が足りないのです。このままでは食糧不足で人類は滅びてしまいます。聖木を治せるのはあなたしか居ないのです」

「響は何故私を殺しに来たの?」

「貴女の発明により、世界が変化してしまうからです。懐古主義者たちが人類の変化……進化を促した貴女を疎ましく思っているのです。そこで、彼が貴女を抹殺する為に未来から派遣されたのです。しかし貴女には聖木になり、後の人類を支えると言う大事な使命が有るのです。このままでは貴女の愛する出雲響さんもp‐typeになれずに餓死してしまいます!」


 やっぱり私にはこの未来しか無いのか……。響とは一緒に居られない運命だった。だったらせめて間接的にでも響の役に立ちたい。


「私の出来る事なら何でもします」


 そう言うのと同時に、私と聖木の間の空間が歪す。


 そして現れた。

 あまりにも唐突に。

 愛しい人。

 私は上ずった声を振り絞ってその名前を呟く。


 裏切られた

 騙された

 辛い

 愛しい

 欲しい

 悲しい


 感情が入り乱れる。

 でも本音はそこじゃない。


 例え裏切られたとしても

 例え騙されたとしても

 例え辛い思いをしても

 例え愛しいと思っても

 例え欲しいと思っても

 例え悲しいと思っても


 気持ちは不変

 好き

 大好き


「響……」


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