砂彩をからかってみると
「やっぱり返して!」
そう言い、俺からマフラーを奪い返そうとするが、俺はヒラリと砂彩の事をかわして素早く首にマフラーを巻いた。
I Love Youの文字が、砂彩からはっきり見えるようにして首に巻く。
「絶対返さないね。これはもう俺のものだ」
う……と、いった感じで、マフラーを巻いた俺の姿に尻込みをする砂彩。それから、俺に向けて恥ずかしさやら、なんやらの感情をぶつけるようにして言った。
「そんなに欲しいならあげるわよ! 絶対大切にしなさいよね!」
俺の顔は、いまでもたまらなくニヤついているだろう。自分で言うのもなんだが、いい性格をしていると思う。
「それで……まだお礼をもらってないわよ」
おいおい、からかわれた腹いせにお礼の要求か? 今の俺は機嫌がいいから無理な事でもなければ聞いてやろう。
「頭……ナデナデなんてどう……?」
「なんだよそれ? お前は魅成でもないだろう?」
「別にいいじゃないの! それを作るのってすっごい時間がかかるんだから! ナデナデ一回でお礼になるんだから、別にいいでしょう!」
俺は、強情に主張をする砂彩に言われるとおり、砂彩の頭に手を伸ばしていった。砂彩は、それを受け入れるようにして頭を下げる。
「みぃーちゃった……」
そこに、背後から声が聞こえてきた。
「みぃーちゃいましたー……」
続けてそう声も上がる。砂彩の顔を見ると、驚いた顔で顔を固めている。
俺も、後ろの光景を振り返って見る。
学校の校門の影から、魅成と、見空がこちらを窺っていたのだ。
「二度目の抜け駆けは、さすがに見逃さないよー」
校門の影から、半分顔を覗かせた状態で言う魅成。
「二度目って何よ! 一度目っていうのは何の事を言っているのよ!」
砂彩が魅成にくってかかるようにして言う。
砂彩の剣幕など、意に介していない様子で、クスリ……と笑いながら魅成が言う。
「二人でスーパーで買い物してたよねー」
あの時の事か……料理勝負の前日、俺はカレーの材料を買うのに付き合ったのだ。
というか……魅成も、なぜ知ってる……?
「あれは……抜けがけなんかじゃ……」
砂彩が言う。それに合わせて、見空が声をあげる。
「抜けがけですよー。スーパーで買い物なんて、デートみたいじゃないですかー?」
「デートって……そんなんじゃ……」
砂彩も、反論の言葉が見つからないようだ。二人の剣幕に押され、ジリジリと後ろに下がっていく。
校門の影から顔を出している状態のままの二人は、全く動かないのだが、言い知れぬ圧迫感は、どんどんと増大していっている。
「手編みのマフラーをこっそり渡すなんて、完全にアウトですねー。乙女の恋愛まっしぐらですねー」
「乙女……恋愛……そんなんじゃ……」
どんどん追い詰められていく砂彩。
「そんなんじゃないのよ! 最初から全員の分を作るつもりだったの! だけど、慶次のだけが先に完成しちゃって、二人の前で慶次にだけ渡すのもどうかと思って……」
追い詰められた砂彩はとんでもない事を口走り始めた。
いいのか? そんな事を言ってしまって?
「それじゃあ、私たちの分のマフラーを期待しておいていいという事ですかー?」
見空も言う。
「も……もちろんよ! 慶次に渡したようなチンケなものよりも、何倍もすごいものを渡してみせるわよ」
おい……チンケとか言うな……
自分で自分をどんどんと追い詰めていっている砂彩。
「まあいい……そういう事にしといてあげる」
魅成は、そう言って校門の影に姿を消した。
「これからも、行動は監視していますからねー」
見空も、校門の影に姿を消す。
「なぜ、校門の影に姿を消す!」
どうせ、下校時間なんだから、校門から出てくればいいのに……
俺は校門をくぐって魅成と見空の姿を探した。
「あれ! いない! どこに行った!」
校門をくぐって、二人のことを探しても影も形も見えない。
二人は、まるで煙のように姿を消してしまった。




