砂彩のお祈り
次の日、また竜の池にやってきた俺達。
「今日は雲行きが悪いですね」
見空が空を見上げながら言う。
雲がかかった空が木々の間から見える。今にも雨が降り出してきそうな感じである。
「傘は持ってきましたか?」
全員に確認をする見空。それに対して、全員持ってきているという返事をする。
この天気だ。傘を持ってこない奴などいない。
「お供え物を置いて、お祈りをする。これ以外に何かいい方法はあるかな?」
魅成が聞いてくる。
竜を呼ぶにはどうすればいいか? 方法なんて、それ以外には思いつきなんかしない。
結局はスーパーで買った果物なんかをお供えして、目の前でお祈りをする。それしかないのだ。
並んで手を合わせる俺達。
何も変化が起きず、時間だけが過ぎていく。
気付けば、雲行きが完全に悪くなってきた。パラパラと雨が降り出し、木の葉を濡らしていた。
俺は木の下に移動をして、すぐそこにあった石に腰掛けている。
魅成と見空はすでに傘をさしており、俺もそろそろ傘を広げるべきであろう。
そこで、砂彩だけがいまだに祠の前で手を合わせていた。
砂彩の頭上には木の葉は広がっていない。
パラパラと振る雨を直接浴びる事になる位置で、砂彩は手を合わせ続けているのだ。
「しょうがないな……」
美色ちゃんから話を聞いていなければ、俺はそんな気持ちは起こさなかっただろう。砂彩の竜に会う事に対する悲願は、美色ちゃんの胸には強く伝わっている。
俺は、砂彩に傘をかけた。あいあい傘になる形だ。
ふと、俺に気付いた砂彩は俺の事を見上げた。
そんなに顔を近づけるなよ……恥ずかしくなってくるだろう……
思わず俺が顔をそらすと、砂彩はまたもお祈りに戻った。
雨は時間が経つほどに大粒になり、傘を雨が打つ音も、大きくなっていく。
「竜が出てきそう……」
ポツリと魅成が言う。
そう言われればそうかもしれない。雨はどんどんと土砂降りになっていき、雷が鳴り始めた。
空が雷で青白く光り、雷の音が大きく鳴る。
一昔前のアニメやマンガで、竜や怪物なんかの大物が出てくる時は、大体このような大荒れの天候になる。
少しだけ、砂彩が俺に向けて体を傾けてきた。フラついたのかと思って肩を支えた俺だが、砂彩の足はしっかりしたままだ。
「不安なのか……?」
砂彩は、言いしれない不安を感じているのだろう。それで、体を俺にあずけてきたのだ。
俺はせめて、砂彩の不安を取り払うために、肩をギュッ……とつかんでみせた。
そこで、池が光り始めた。
池の中にライトでもあるような感じで、空まで高く届くようなまばゆい光が、空に向けて放たれていたのだ。
なぜ光っているのか分からないが、薄汚れた池は、確かに光っていた。
膝をついた砂彩は、何かに操られるようにして池に向けて這っていった。
「やっと会える……」
そう言う砂彩は、昔にしたようにして、池の中に手を入れた。
すぐに底に手が付き、泥が水の中で舞い上がるだけ。本来はそのはずであったのだが、砂彩は何かに引っ張られるようにして池の中に引きずり込まれていった。




