美色ちゃん
美色ちゃんにはすぐに追いついた。逃げる美色ちゃんの手をつかんで止める。
「あれは違うんだ!」
美色ちゃんは、俺の事を潤んだ目をして見上げた。
「キスとは真逆の行為っていうか……砂彩とはたまたま一緒に帰っていただけっていうか……」
いかん……何と言えば誤解が解けるのだろう? 伝える言葉を考えていなかった。自分でもワケの分からない言葉ばかりが口から出てしまう。
「痛いです……逃げないから手を離してくれませんか?」
そう言われ、とりあえずは手を離す。
だが、どうしよう……? 『メンチ切り合っていました』なんて言って、信じてもらえるだろうか……?
「さっきは気が動転していて、すいませんでした。あれはキスじゃなかったですよね」
美色ちゃんはそう言う。とりあえずは、なんとか分かってくれたようだ。
「メンチを切り合っていただけ……って言えば信じてもらえるか?」
「メンチって何ですか?」
「いやいい……」
純真無垢の美色ちゃんに変な言葉を教えてはいけないだろう。
「しょうもない事をしていただけだって思ってくれ……」
この事は、適当に濁しておき、俺は回りを見回した。
砂彩はついてきていない。面倒は全て俺に押し付ける事にして一人で帰ってしまったようだ。
俺一人で、美色ちゃんの事を説得する事になりそうである。
「また、砂彩に先を越されちゃったんだ……って思いました」
「先にどっちがキスをするか? っていう競争でもしてたのか?」
「そんな事していません!」
慌てて否定をする美色ちゃん。俺は頭を押さえて反省をする。
そうだよな……この子はそんな事をするような子じゃない。同好会の奴らと付き合っているような気分で話をしてはいけないな。
「砂彩ちゃんは、私にとって憧れだったんです。いつも元気で、みんなから何を言われても自分の事を曲げないし」
美色ちゃんからは、砂彩の事はそう見えるのか。だが、あの曲げなさ加減は絶対に見習ってほしくないところである。
「何事も、加減が問題だぞ」
「いきなり何をいいだすんですか?」
同好会の奴らであればこれで通じるのだが、美色ちゃんにはこれだけでは通じないようだ。
またも、俺は頭を手で押さえて反省をする。
「とにかく、美色ちゃんは、そのままが一番いいって事だ」
「何かを隠されている感じがします」
「隠しているわけではないんだが……」
最近、同好会の奴らとの付き合いが多く、普通の子と話すと、ちぐはぐな会話になってしまうようになった。
これはいけない……
「砂彩ちゃんは、今でも竜を信じているんですか?」
「おや? 美色ちゃんはその話を知っているのか?」
「ええと……慶次さんがそう言うって事は、やっぱり慶次さんも聞いているんですか?」
「今日だって、竜を見るために池に行った帰りなんだ」
俺は今日あった事を美色ちゃんに説明を始める。よろず同好会の面々が全員で竜の池に行き、祠の前で手を合わせた。
当然竜なんかに会えるわけもなく、成果なしで帰ってきたのだ。
「みんな、竜に会えるなんて、本当に思っているんですか?」
痛いところを突いてくる美色ちゃん……この子は結構ズバズバ言ってくるな。
「その辺は、よろず同好会の特殊なところでな……」
UFOを探している見空。心霊を追い求める魅成が集まっている、よろず同好会。
『そんなものは存在しない』なんて事を言い出したら、自分に跳ね返ってくる。自分自身の存在そのものの否定になりかねない。
だから全員、『見つかるわけがない』と心の底では思いつつも、表向きには協力をしなければならないという感じの、変なルールが出来上がっているのだ。
「砂彩自身だって、『竜に会う事なんてできない』って思っているかもしれないくらいだ」
「『暗黙の了解』ってものですね。なんかカッコイイです」
そうとも取れるかな……自分達からしたら、カッコイイなんてカケラも思わないんだが……。
「砂彩は、竜に会えるといいですね」
それから美空ちゃんが話し出す




