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当然龍など出てこなかった

 当然、竜なんかに会えるわけもなく、何事もなく日が沈んだため、全員は解散する事になった。

 俺は砂彩と帰る方向が同じのため、並んで帰る事になる。

 今は、人の通りが少ない住宅街の道を歩いているところだ。右と左に垣根があり、車が一台通れるかどうか? というくらいの広さの道を二人で歩いている。

「よくあんなのに付き合うわね。気がしれないわ」

 砂彩が身も蓋もない事を言い出した。

「それを言い出したら、よろず同好会の存在そのものの否定になりかねないぞ」

 俺が言うと、砂彩はそっぽを向く。

 心霊写真の激写に手を貸してもらった魅成。

 これから、UFOの捜索に手を貸してもらうことになる見空。

 二人が聞いたら、苦い顔をしそうな言葉だ。

「諦めないでいこうぜ。魅成だって、結局お兄さんに会えたんだし」

「お兄さん?」

 砂彩は不審な感じで聞いてくる。

 ああ……そうか。あそこが魅成のお兄さんの死んだ場所だっていうのは、俺と魅成だけが知っている事だったな。

「待って。あんたの心を読むから……」

 そう言い、俺の肩を持って俺の顔をじっ……と見つめ出す砂彩。

 心を読む……普通ならばできるわけがないと考えるところだが、俺達ならばできるかもしれない

「ふむふむ……どうやら、あんたが撮った心霊写真に関係ありそうね……」

 いきなり近いところにきた。これは、何も言わないでも話が通じるかも……。

「あそこであんたが撮った、心霊写真は、魅成のお兄さんだったのよ」

 おお……。まさにそのとおり、まあ、確証があるわけじゃないが、その可能性がとてつもなく高い。

「そのお兄さんっていうのは、昔から続くあの地方の風習で、人柱になって死んだのね」

「いや……聞いてなかったのか? あそこで事故で死んだ人間がいるって話。それが魅成のお兄さんだって考えに、思い至らないのか?」

 話がどんどんずれていく。

「お兄ちゃんは人柱になって死んだというのに、慶次はまったくそんなつもりは無いの。魅成は慶次の事を『意気地なし』って思ってるわ」

「この場に魅成はいないだろう! どうやって魅成の心を読むんだよ! 半分はお前の願望だろうが!」

「慶次は今こう思っている。『ここで体を張らなきゃ男じゃない! 左手の薬指くらい、いくらでも持って行け!』って」

「カケラも思ってねぇよ! 相変わらず、俺は左手の薬指を切り落とさないといかんのか!」

「見空も思ってるわ。『左手の薬指を切り落とすなんて素敵。そんな事をして見せてくれたらすぐに結婚しちゃう!』って」

「本人がいないからって、勝手な事を言い過ぎだぞ! それに、結婚に必要なのが左手の薬指だろうが! 俺の左手の薬指を、どんだけ切り落としたいんだよ! どんだけ怨みがあるんだよ! もうツッコミがおいつかねぇよ!」

 こいつ、どう考えてもフザけているだろう……

 俺は砂彩とにらみ合った。俺がいくら睨もうが、砂彩は顔を逸らしたりしない。

 こういうのは、先に顔をそらしたほうが負けだ。お互いに目をそらさず、ずっと時間が経っていく。

「きゃぁ!」

 どれだけ時間が過ぎたかわからなくなっていた頃、後ろから声が聞こえた。

 振り返ってみると、生徒会庶務の、出雲美色ちゃんがそこにいたのだ。

「き……キスをしてたんですか……?」

 ヤバい……ヒドい事になってきそうだ。

「これはキスなんかじゃ……」

 どう言い訳をしようか考えていたところ、美色ちゃんは声を震わせながら言う。

「誰にも言いませんから!」

 そう言って、バツが悪そうにしてその場から逃げていってしまった。

「まったぁぁぁぁぁああ!」

 俺はそう叫びながら、逃げていく美色ちゃんを追っていった。

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