第3話 「君たちって、ホムンクルスで合ってます?」
ステータスの仕様について理解はしたが、低レベルの内はまだ修正が可能なので気にせずピブを倒しながら移動を続け、村を発見。
簡素過ぎる柵に囲まれた小さな村で、名前は『ハジメ村』。周りは麦畑と幾つかの野菜の畑が広がっていて、風車が幾つも建ち並び、水車小屋のある綺麗な川が傍を通っている。
ただ、村の中にプレイヤーが沢山いるせいで、雰囲気なんてあったものじゃない。
村民は同じ顔、同じ無表情をした、金髪碧眼色白肌の美少女だ。そのうちの一人に接近すれば『NPC:ホムンクルス』と名前が表示された。
ふむ?
気になって他のNPCに近づいて名前を確認してみれば、全員同じ名前だった。
なるほど。
これはつまり……深淵というダンジョン内の施設の利用やイベントは、このホムンクルスたちが用意しているってことか。
……個体ごとに性格や能力に違いがあるのかな?
ちょっと聞いてみるか。
「すいません、ちょっといいですか?」
「はい、なんでしょう?」
「君たちって、ホムンクルスで合ってます?」
「はい。私たちは神によって造られたホムンクルスです。この深淵に挑む者――プレイヤーたちをサポートせよ、と命令を受けております。また、我々ではどうしようもない問題が発生した場合などは、プレイヤーにお願いすることがあると思います」
俺の考えは合ってたか。
「君たちホムンクルスって個体ごとに違いってあったりする?」
「ありますよ。私たちは感情が顔に出にくいので分かりにくいでしょうけど」
違いがある。なら……
「……特殊な個体とかいる?」
「いますが、そういう者はもっと下の階層です」
「ありがと。これお礼」
メニューを開いて、インベントリからアカマルの実を一つ実体化させて差し出す。
「ありがとうございます」
彼女は受け取ってくれたので、俺はその場を離れた。
さて、この村に目ぼしい物とか大したイベントとか無さそうだし、次に行こう。
村を出て、まだ続ている土の道に沿って進むと、ピブとは違う魔物が数匹単位の群れでいた。牛だ。どう見ても牛な魔物だ。
攻撃にギリ使えそうな小さな二本の角を生やしていて、体表は牛乳みたいに白い。気性も穏やかなのかプレイヤーたちが近づいても気にせず、なんなら下腹部にある複数の乳房から直接ミルクを絞って飲んでいる奴さえいる。
これ多分、瓶で採集したら牛乳が手に入るんだろうな。
そんなことを思いつつ誰も相手にしていない三匹の牛に近づいて名前を確認。『ミルシ』というらしい。
とりあえず剣で斬ってみる。普通に斬れてダメージが入った。
その瞬間――ブモー! と攻撃されたミルシが叫び、共鳴するように残りの二匹もブモー! と叫んだ。
あっ、これヤバいかも。
三匹がこちらに向くと、ゆっくりだが着実にドスドスと接近してくる。剣で頭を斬れば、傷こそできたものの骨が分厚く頑丈なせいかダメージが僅かしか入らない。正面からやるなら打撃武器が欲しい。だが今は無い。
ので――
「よし逃げよう」
俺は剣を鞘に仕舞って逃げた。正面が硬い相手と無理してやり合うなんて不毛だ。そんなことなら一旦離れて仕切り直して、弱点を奇襲して一撃で倒した方が楽だ。卑怯とは誰も言うまい。俺は武士でも騎士でもないのだから。
ある程度離れると、ミルシは諦めたのか追って来なくなった。
「よし、それじゃあ仕切り直しで……」
あいつの側面、やってみるか!
次の標的を定め、剣を抜いてダッシュ!
横から接近し、弱点と思しき首に向けて突きを入れる。勢いを乗せた突きはミルシの首を貫き大ダメージ。トドメにグリッと剣を捻じって引き抜きつつ残心で数歩下がれば、ちょっと残っていたHPが減って無くなり、ミルシは光の粒子となって消滅した。
「はい撤退」
残りのミルシが攻撃に反応してブモー! と叫んでこっちに向かって来たので、さっさと退散。やっぱり、ある程度離れると追って来なくなった。
お尻をこっちに向けて元の場所に戻ろうとし始めたので、こっそり近づいてケツの穴をブスリ! ミルシは凄い悲鳴を上げて消滅した。
ミルシの肉を三つ手に入れた。
「これなら一人で狩れるな」
というわけで、ミルシを狩りながら土の道に沿って進む。次に到着したのは石でできた巨大な門。門を中心に円形に石畳が敷かれていて、明らかに何か仕掛けがありそうな設置物だ。
他のプレイヤーたちは興味津々に近づき、納得したような顔ですぐに離れて行く。俺も近づいてみると、石畳に足を踏み入れた段階で視界の隅に『転移門』と表示された。
ああ……これが転移門か。
PVで次の階層への移動方法として、字面だけで紹介されていた。確か誰かが階層ボスを倒すことで起動し、誰でも次の階層と行き来することができるようになるのだとか。
今は起動していないようなので、まだ誰も階層ボスとやらを倒せていないっぽい。
ここに居続ける意味は無いので、俺は早々に移動を再開した。
ミルシを倒しながら進むことでレベルが2から3になった。
土の道も終点となり、階層ボスが潜んでいるとされるダンジョンエリアに到着。入り口から見る限り、迷路みたいに明確に道と壁がはっきりしている森だ。名前は『コボルドの森』。
他プレイヤーたちが次々と中へ入っていくので、俺も足を踏み入れる。
さぁ、このゲームのコボルドはどんな奴かな?




