第35話 「よし、それならギルドメンバーに召集を掛けよう。全員で情報共有を行い、装備やアイテムを整え、いよいよ第五階層ボスの攻略と行こう」
服屋を出て次に向かうは防具店。
メインストリートから外れた人気が無い場所にある店だからか、或いは昼時だからか、店内には店主のホムンクルス以外に誰もいない。
「フィーア、ここで何買うの~?」
見た感じ、序盤で手に入るありきたりな防具しか置いてないっぽいけど。
「これですわ」
そう言ってフィーアが立ち止まったのは、ファンタジーどころか歴史上でも超有名な防具の一つ『チェインメイル』だった。
「これか~」
「これ、セーターっぽい編み方してますけど、なんて言う防具なんですか?」
「フィーア~」
「コホン、これは『チェインメイル』ですわ。日本語では鎖帷子とも言います。古代から存在する防具の一つで、主にヨーロッパで使われていましたわ。鎧の下に着込むことである程度の斬撃を防げますが、見て分かる通り刺突と打撃には弱いですわ」
「へーそうなんですね。でもなんでこれを?」
「いい質問ですわ。この防具、かなり薄いのでコスチュームの内側に装備することが可能ですの。つまりコスチュームを着たまま最低限の防御力を確保できるのですわ」
「おぉーそれはいいですね!」
「でしょう?」
なるほど。でも露出の多いコスチュームだと無理っぽいな。
二人が早速着込んで次の店へ。
近くにあった装飾品店に入り、二人が購入したのはシンプルなシルバーの指輪。『アイアンリング』という名前で、防御力が僅かに上昇する効果があるんだと。
買い物も終わり、アネモネが気にしていたデカ盛りパフェが食べられる喫茶店に入る。ウェイトレスのホムンクルスに案内され、窓側のボックス席に座ってアネモネがメニュー表を開いた。
「デカ盛りパフェは確定として、あとは何にしようかなー」
「何も選ばない方がよろしいですわよ」
「? なんでです?」
「ここ、リアルの某珈琲喫茶をモチーフにしていますので、逆見た目詐欺になっていますわ」
あぁ、そりゃ多いわ。デカ盛りパフェはマジでデカ盛りなんだろうな。
「……分かりました。まずはそれだけ注文しておきます」
メニュー表がフィーアに手渡され、品が決まったので注文。
暫くしてウェイトレスが注文の品を持ってきた。
「おまたせしました。こちらデカ盛りパフェとカツサンドです」
「でっっっっ!?」
ほんとでかいな……。
あまりの大きさにアネモネが硬直した。テーブルに置かれたパフェはそれはもうでかい! どデカイ! ビールのメガジョッキ並みに大きなグラスの中にアイスやフルーツやクリームが盛りに盛られて座高以上になっている。
フィーアが頼んだカツサンドも、分厚い食パンに二倍分厚いステーキを丸ごと揚げたカツが挟み込まれている。厚さにして私と同じくらい――つまり十五センチほどある。
「因みにこれ、普通サイズですわよ」
「えっっっっ!?」
マジかよ。さらに上があるのか……。
驚きはしたが「いただきます」をして口にする。私は口がカツの気分だったのでフィーアから少し分けてもらい――ぱくり。
……うん、普通に美味い。普通止まりだけど。
アネモネは起立して無我夢中でパフェを上から食べているから、美味しいのだろう。
対するフィーアはテーブルの上に置いてあったフォークとナイフを使い、小さく切って上品に食べている。
お嬢様してるな~――ん?
「あっ」
来店してウェイトレスに案内されたプレイヤーと目が合った。鎧を着込み肩にメイド服を着た妖精を乗せるイケメン……デュークだった。
「こんなところで会うとはな」
声を掛けられたので挨拶しておく。
「ども~」
「あら、久しぶりですわね」
「ひはひふひー」
「なんて?」
「久しぶり、と言っていますわ」
「あーそう。隣いいか?」
「ん」
アネモネがパフェと一緒に奥へ動き、デュークが座るとニケが飛んで私の前に着地した。
「こうして会うのは久しぶりだな。元気してた?」
「してたよ~。そっちは?」
「元気だ。中々忙しい日々を送ってる。この前なんてトレジャーエネミーを倒してレアな武器を手に入れたんだ。デュークが」
そのデュークが自慢げにサムズアップして見せた。カッコイイ。
「……どんな武器なの?」
「フフ、それはボス戦でのお楽しみだ」
お楽しみ、ねぇ。
「仲間なのに情報の出し惜しみをして大丈夫~?」
「君たちがいるんだ、大丈夫だろう」
「……」
信用し過ぎだよ。
それに、死んだら終わりだということを忘れてないか? 油断や慢心は命取りだぞ?
「ところで、二人はどうしてこのお店に~?」
「私は別にどこでもいいんだけど、彼がね、大の甘党でここのデカ盛りパフェを気に入ってるんだ」
「へぇ~意外だね~」
「……男がパフェ食っちゃ悪いか?」
「いや全然~」
いいと思うよ。
アネモネもシンパシーを感じてサムズアップしてるし。
デュークがデカ盛りパフェを注文し、品物が届いてニケと分けて食べ合ってるところを眺めてしばらく…………満腹になったニケが真剣な表情で言った。
「フィーア、ギルド長として聞きたいことがあるけど、いいかい?」
「えぇどうぞ」
「レベル、どれくらい上がった?」
「わたくしたち三人、30前後にはなっていますわ」
「装備の更新は?」
「最低限はさっき済ませましたわ」
「……それコスチュームだよね?」
「えぇ、中にチェインメイルを着込んでいますわ」
「なるほど。重ね着システムがあるなんて、よく分かったね」
「ヘルプを熟読しましたので」
「スキルの方は?」
「攻撃に使えるものをわたくしとアハトが幾つか。アネモネは範囲回復魔法が使えるようになりましたわ」
「いいね。これなら……デューク、どう思う?」
「ん、いけると思う」
あっ、口の端にクリーム付いてる……可愛いな。
「よし、それならギルドメンバーに召集を掛けよう。全員で情報共有を行い、装備やアイテムを整え、いよいよ第五階層ボスの攻略と行こう」
いよいよか……フィーア、いつヤる?




