第34話 「あのさフィーア、入る店間違えてない?」
プレイヤーがアイテム化する……自分がそうならない為にも、強くならないと。
「フィーア、レベル上げを本格化する為にちょっとお願いしたいんだけど、いいかな~?」
「よくありませんわ。あまり短時間でレベルを上げすぎると怪しまれますわよ?」
「……そういえばそうだ」
「焦る必要はありませんわ。わたくしが付いているのですし、あなたは神の力を持っているのですから」
「……うん」
だとしても、もしもを考えると不安だ。
レベル上げとスキル習得を再開し、瞑想しながらやってくるツリーマンをひたすら倒し続ける。心なしかツリーマンの出現頻度と数が少し増えた気がする。多分、フィーアが気を利かせてくれたんだろう。ありがとう。
――――数日が経過した。
レベルは32まで上がり、瞑想でパッシブスキル【瞑想】を習得した。
瞑想を一定時間すると暫くの間、MP回復速度が上昇してMPを使う攻撃の威力が上昇する。勿論これは【錬気】にも適用されているので、オーラを纏った拳の威力がますます上がった。
フィーアの方もいつの間にか斬撃を飛ばしたり盾からバリアを発生したり出来るようになっていた。相変わらずスキルは秘密とのこと。ケチめ。
アネモネも同じく【瞑想】を習得し、さらに森の神の新たなスキル、範囲回復魔法【ヒールガーデン】を習得した。
術者は中心で動けなくなるという欠点があるけど、その欠点が気にならなくなるくらいの広範囲で、休憩所全体が花畑になった。
……そろそろ動くか。
昼食の最中、聞いてみる。
「フィーア、今レベルいくつ~?」
「32ですわ」
「アネモネは~?」
「ひふーはちへふ」
「なんて?」
食事語は分からん。
「28、らしいですわ」
分かるのかフィーア……流石天才。
「なら、そろそろここから離れて装備の調達とかしてもいいんじゃないかな~?」
「そうですわね。レベルは充分ですし動きましょうか」
「んっ! それならまずは新しい服を買いませんか? 折角の美少女なんですしお洒落しないと損ですよ!」
ふむ、アネモネの意見も尤もだ。私も女になったからにはお洒落したい。
「……では、まずはお洒落をしましょうか」
「やった!」
ということで私たちは休憩所を離れ、【ガイド】で案内して迷うこともなく街へ帰還。
門の傍にある公衆トイレで用を足し、街の奥へ。
……なんか、ちょっとプレイヤーの数が少ない?
数日ダンジョンに引きこもっていただけなのに、目に見えてプレイヤーの数が減っている。それでもかなりの多さだが……恐らく、足止めを食らっている第五階層の街へ移動したのだろう。
それと、腹具合からしておやつ時の為か、喫茶店や軽食を提供する店に多くのプレイヤーが立ち寄っているのが見えた。
こんな状況を目の当たりにして、反応する身内が一人。
「ちょっとあそこの店に寄っていきませんか? クッキー食べたいので。あっ、やっぱりあっちのパン屋さんのパンを……いえ、あっち店のデカ盛りパフェを食べましょう!」
食い意地張ってるなぁアネモネ……気持ちは分かるけど。
「フィーア、どうする~?」
「後ですわ。今は人が多いですし、お洒落と装備の準備を終えてから食べた方がきっと美味しいですわよ」
「っ……なるほど」
それで納得したらしい。
黙って歩き、女性用の服屋の一つに入店。
中は木造りの棚やマネキンが設置されていて、明らかに普段では着ないコスプレ衣装が展示されている。妖精用のコーナーもある。
プレイヤーも何人かいて、奥のカウンターでは何故かバニーガールの格好をしたホムンクルスが会計をしていた。
「あのさフィーア、入る店間違えてない?」
「いいえ、間違えていませんわ」
「二人とも、こっち来てください」
勝手に動いたアネモネに呼ばれて移動してみれば、ライトノベルや漫画の中の魔法使いという印象そのまんまの服がマネキンに展示されていた。
具体的に言うと、トンガリ帽子、膝丈のマント、ノースリーブのシャツにショートスカート、あとは編み上げの可愛いブーツだ。
まるで魔法使い用の防具だな。
「どうですかこれ! 如何にも美少女魔法使い用って感じのデザインじゃないですか?」
「えぇ、よろしいかと」
「ですよねですよね! アハトはどう思います?」
「いいんじゃないの~。でも疑問が一つ。フィーア、装備とコスチュームを見分けるコツってある~?」
コスチュームに偽装した装備とかで不意打ちかまされたら嫌だからな。
「触って分類を確かめる以外にありませんわ」
「う~んそっか~」
それはちと怖いな。触って確認した瞬間にやられそうだし……人間不信になりそう。
アネモネはこのコスチュームが気に入ったようで、他の服を見ることなく購入した。因みに値段は安かった。階層が低いからだろう。
早速、店内のフィッティングルームに入って数十秒……閉じられていたカーテンがシャッと開いた。
「どうですかッ!」
「おぉ~」
「お似合いですわ」
如何にも魔法使いの美少女だ。カッコつけた中二病のポーズも様になっている。
「次はフィーアの番です!」
「くひひ、よろしくてよ」
テンションの高いアネモネに指名され、フィーアは店内を見て回った。一周し、あるマネキンの前で立ち止まる。
「これにしましょうか」
購入してフィッティングルームに入って数十秒、カーテンがシャッと開いた。
「どうかしら?」
「おぉ~」
「お人形さんみたいで可愛いです!」
フィーアが選んだのは黒いゴスロリ衣装。黒髪赤目の美少女だから本当に人形みたいだ。
ただ、“くひひ”と笑うからちょっと不気味に感じる。
「最後はアハトですわ」
「……ん」
今更ながら女としてお洒落するのが恥ずかしくなってきたな。露出高いのは恥ずかしいし……動きやすさ重視で当たり障りのない服に――
「これ、アハトに似合いませんか?」
「いいですわね。こちらはどうでしょう?」
「あっいいですね」
……ええー……なんで二人は私の服を選んでるの?
声が聞こえて振り向いたら、二人がまるで人形の服選びをするかのように妖精用の服を手に取っていた。しかも無駄に露出が多かったり、本当の意味でのコスプレ衣装ばかり。
「あの~自分で選びたいんだけど……」
「ダメですよ。私たちの中で一番美人なんですから、これくらいやらせてください」
「そうですわ。あなただけ無難な格好は許されませんわ」
「……」
なんか言ってること滅茶苦茶じゃない!?
論理性に欠けるというか、押し付けているような――ハッ、もしかして二人とも、今更になって自分の格好が恥ずかしくなったのか!?
よく見ればちょっと耳が赤いな。……仕方ない。
「……分かった。好きにしていいよ~」
私は二人の着せ替え人形となった。
――で、コスチュームが決まって会計を済ませたところで聞いてみた。
「なんでメイド服?」
しかもスカート丈が短くてフリフリしている、いわゆるフレンチメイド服だ。ストッキングを留めるガーターベルトがセクシー。
「露出少な目で動きやすさを考慮したらそうなりましたわ」
「嫌ならさっき試着した踊り子衣装にしましょう」
「いやアレは着ないから!」
アネモネお前、自分で着てみろよ。完全に痴女だし性欲を持て余すぞ。
「とにかく新しい装いになったし、次行こう次っ!」
「えぇ」
「はーい」




