↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒幕と歩むデスゲーム  作者: 覇気草
三章 チュートリアル終了

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/40

第33話 「うわーそれは嫌ですね。奴隷を作れるってことじゃないですか」



 パッシブスキル【錬気】に慣れることを兼ねて研究を重ねた結果、三つのことが分かった。


 一つ目、オーラは変幻自在に形を変えらえる。

 手を猛獣の前のようなオーラで覆ったり、細く伸ばして鎌のようにしたり、さらに伸ばしてしなやかさを取り入れて鞭のようにしたり……。

 ただ、形状が複雑なほど維持が難しく、少しでも意識を逸らすと忽《たちま》ちに消えてしまう。実用性を考えるなら細部にこだわるのは無駄だ。


 二つ目、オーラは念じることで性質が変化する。

 癒すことを考えながらオーラを使えば、さっきのフィーアみたいにHP回復効果を付与できる。逆に敵を倒すという意識で使えば威力が上がった。熱い思いなら炎属性が付与され、冷たい氷を思い浮かべれば氷属性が付与された。

 ただし、この性質の変化はMPの消耗が激しい。


 三つ目、オーラは素手専用スキルと同時使用可能だ。ツリーマンでその威力を試してみたけど、元からオーバーキル気味だったせいかどれだけ強力になったかは分からなかった。


 四つ目、呼吸の仕方によってオーラが活性化することが分かった。どういう原理と理屈なのかは全く分からないが、深く長くゆっくり吸って吐いたりするだけで活性化し、暫く持続する。頭が冴えて感覚も鋭くなるのでやり得だ。“オーラの呼吸”と名付けた。


 今はオーラの操作をより速く精密にする為、オーラの呼吸を続けながらアネモネの隣で瞑想中だ。まぁアネモネはよだれ垂らして幸せそうな顔でずっと寝ているが……


 ――むっ、誰か来たな。


 感覚が鋭くなったせいか見えていないのに気配が感じられた。

 少し待てば通路の方から五人組のプレイヤーがやってきた。全員人間の男で、山賊みたいな毛皮付きの防具を身に着け、ラウンドシールドと取り回しのいい手斧を持っている。


 なんだろうこいつら……みんな笑ってる。怪しいというか、ケダモノ?


 フィーアが剣を構え警戒しながら男たちの前に立つと、男たちは名前が表示されない距離を保って足を止め、二メートルはあろうかという巨漢が一歩前に出て言った。


「こんにちは、麗しい美少女よ。こんな所で休憩中かな? それとも……ダンジョンから出られず立ち往生しているのかな?」

「前者ですわ。それと心配ご無用でしてよ。わたくしたち、強いので」

「ほぅ、強いのか。それはそうと、俺たちのギルド『スマイル商会』に入らないか? 見ての通りむさ苦しい男ばかりで組んじまって、華が欲しいと思っていたんだ。勿論、道案内役の妖精も一緒にどうだ? こう見えて俺たち、絶賛迷子中でな。ハハハ……」

「嬉しいお誘いですけどお断りしますわ。わたくしたち、既に別のギルドに加入してますので」

「……そうか。そいつは残念だ」


 控えていた四人がおもむろに動き出した。散開してフィーアを囲むような位置で止まり、武器を構えた。


「……なんの真似ですの?」

「今すぐに俺たちに従うなら仲間として扱ってやる。だがそうでないなら、痛めつけて拘束し奴隷として扱う。こんな風にな!」


 巨漢が盾の内側を見せた。小さなランタンのような籠が吊り下げられていて、その中には妖精が一人、揺れに耐えるように柵にしがみついていた。痛めつけられたのか表情が暗い。


 うわっ、マジかこいつら!

 こんな序盤でそんなあくどいことをするなんて……なんてバカなんだ。慈悲も同情も無く気楽にヤれる!

 ああくそっ、今からフィーアの隣に移動して一緒に戦おうとするのは雰囲気を壊すし、ダメだな。


「……くひひひひ。もしやと思ったら、とんだ悪人集団ですのね」

「っ、何がおかしい!?」


 笑うフィーアに男たちが“えっ、こいつヤバくね?”みたいな感じに互いの顔を見て動揺を始めた。


「これが笑わずにいられませんわ。あなたたちは仕掛ける相手を間違えましたの。ここは袋小路、そして近くに他のプレイヤーはいない。助けなんて来ません。ここでわたくしに殺されて、冒険は終わりですわ」

「それはこっちのセリフだっ! やれ!」


 男たちが動き出し手斧が次々に振り上げられたが、フィーアは一切動じない。まるで後ろにも目が付いているかのように背後の男――最初に攻撃が来る奴をノールックで喉を一突き。そこから手首をスナップさせて素早く持ち上げ、頭部を切断してあっさり殺した。

 続いて左右から同時に仕掛けた二人の手斧を盾と剣でパリィし、まるで加速したかのような動きで素早く二人の首を斬って殺した。

 四人目の振り下ろし攻撃は最小限の動きで回避。流れるように盾で顔を殴って怯ませ、隙だらけになったところで皮鎧を貫いて腹に剣を深く突き刺し、まるで紙でも切るかのようにスーッと上へ引き上げて大量のダメージエフェクトを散らしながら殺した。


 ヤバいなアシスト……私でも無策じゃ勝てないかも。


「くひひ、残りはあなただけですわよ」

「くっ、なんなんだお前は……化け物め!」


 あ逃げた。


 男は立ち向かうどころか背を見せて全力で走り出した。が、通路に入ろうとしたところで見えない壁に激突して倒れた。


「……あら?」


 あらら……気絶したか。


 フィーアはゆっくりと近づき、剣でツンツンして起きないことを確認すると、そのまま頭に足を置いて一息に踏み潰した。

 ぐしゃっと赤いダメージエフェクトが飛び散り、頭を失くした男の体は粒子となって消えた。

 残されたのは籠に囚われたままの妖精一人。わたしたちを警戒しているのか、助けられたのにお礼の一つも言わない。

 籠を拾ったフィーアは私たちの所まで来て、アネモネの肩を揺すった。


「起きなさいアネモネ」

「――ハッ、寝てませんよ!?」


 いや寝てただろ。


 起こしたフィーアは気にせず、妖精が入った籠を私たちの目の前に置き、対面に座り込んだ。


「さて、アハト、アネモネ、二人にこのゲームの仕様を一つお知らせいたしますわ」

「仕様? この憐れで可哀想な可愛い妖精さんが関わることですか?」


 寝起きにしては酷い言い草だな。


「えぇ、関わりますわ。実は全てのプレイヤーはこうして囚われて脱出不可能とシステムが判定すると、アイテム化してしまうのでしてよ」


 アイテム化だと!? ……そういえば、この妖精の名前がこの距離なのに表示されていない。

 

「……つまり?」

「つまり、所持者となったプレイヤーの命令に絶対服従するようになりますの。まぁ感情や心までは操れませんけど」

「うわーそれは嫌ですね。奴隷を作れるってことじゃないですか」

「その通りでしてよ。この妖精はおおかた、“求められた時以外は口答えするな”、“檻の中で余計な動きをするな”とでも命令されているのでしょう」


 だろうな。目と表情は動いてるのにずっと黙っているし、ほぼ動かないし。


「それともう一つ、アイテム化した妖精に限りますけど、インベントリに仕舞うことが可能ですわ」


 うわ、人として凄い尊厳破壊だな。

 でもちょっと気になる。


 ので、手を上げる。


「フィーアしつも~ん」

「はいどうぞ」

「インベントリに仕舞われたら、肉体や意識はどうなるの~?」

「試したことはないですけど、肉体は粒子データ化され、意識がプツッと途切れて無くなると思いますわ。ただ、アイテムの詳細を開けば意識だけ一時的に戻すことができるかと」

「もし所持者が死んだらどうなるの~?」

「インベントリから吐き出されますわ。誰かに拾われなかったらそのままですわね」


 そのまま……?


「それ餓死しない?」

「しませんわ。アイテム化したプレイヤーは一時的に空腹によって死亡はしません。まぁ飢餓《きが》感はそのままなので、死ぬほどきついでしょうけど」


 さらっと空腹で死ぬと言ったな。


「そういうわけですので、くれぐれも他のプレイヤーに囚われないよう注意してくださいまし。特にアネモネは」

「アッハイ」


 フィーアが籠に触れ、中の妖精ごとインベントリに仕舞った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。