第32話 「ああ~効きますわ~」
「さ、レベル上げとスキル習得を続けますわよ」
食事が終わって活動再開。丁度ツリーマンがやって来たので食後の運動の為に倒すことにする。
攻撃を回避しながら接近して、気持ちの籠った正拳突き。胴体の幹がバコッと割れて消滅した。
ピコン!
「おっ! なんか習得できた」
パッシブスキル【錬気】
鍛え抜かれた肉体または正しい武術を修めた者が習得する技術。“気”という生命エネルギーを使えるようになる。
その代わり、MPがMPに変化し、マジックスキルが習得不可、使用不可となる。
「なんだこりゃあ!?」
叫ばずにはいられない。こんな馬鹿げたスキルがあるなんて意味が分からない。特にマジックスキルの部分!
私はすぐに盾の素振りをしているフィーアのところまで飛んだ。
「おいフィーア、黒幕! なんか頭のおかしいスキルを習得したんだが!?」
「落ち着きなさい。ほら深呼吸」
「スゥー……ハァー……」
ちょっと落ち着いた。あと勝手に気が練られたのか、ちょっと体がポカポカした。
「それで、頭のおかしいスキルの名称は?」
「パッシブスキル【錬気】」
「あぁ……まさかそれを習得してしまうなんて……くひひ」
笑うほどかよ。殴るぞ?
拳を作って見せると、フィーアはすぐに喉を鳴らして笑うのを止めた。
「……結論から申し上げますと、そのスキルは衣服を除いて一切の装備をせず、魔法も全く使わず、ノーダメージを維持したまま素手で戦う頭のおかしいプレイヤーへのご褒美ですわ」
ご褒美……。
「気はオーラ。拳に纏えば威力は格段に上がり、体全体を覆えば隙間の無い鎧になりますわ。それに、気の使い方を模索して修練すれば、気の塊を飛ばして遠距離攻撃だって出来ますわよ」
「おぉ……!」
それってつまり、あの超有名な七つのボールを集める漫画の主人公みたいな、気合でエネルギー弾とかビームが出せるってことか!
或いは、オーラを駆使した能力バトル漫画みたいなことが出来る?
どっちでもいい! 研究しなければ!
「そういうことなら色々試してみるよ~」
「それがいいですわ」
話が終わったのでフィーアから離れる。
さて、気……か。
マジックスキルが使えなくなるクソスキルかと思ったけど、いいスキルじゃないか。もしこれがリアルの要素も兼ね備えているなら……。
右手を前に出して観察すれば、薄っすらとだが、膜のようなものが体から数ミリ浮き出ている。オーラだ。
「……見えた。これをこうして…………ほっ!」
両手をくっつけないように気を付けつつ、除細動器のようにスリスリしてオーラをコネコネと練る。
すると、触れていないのに触れている感覚が皮膚に伝わり始める。
ほんのり温かくて、ピリピリする。
それは段々と強くなってオーラの感触がはっきりとしてきた。後はちょっとだけ意識を集中してオーラを集めるようにすれば……はっきりと分かるくらいにオーラが集まった。
「うん……出来た。というかちょっと光ってるな」
弱い太陽光みたいだ。ポカポカと温かい。
ただし、MPがゆっくりとだが徐々に減り始めている。もって一分くらいだ。
「自慢しよ。フィーア~~!」
一旦光のオーラを消し、声を掛けて近づく。
「フィーア、ほら見て。癒しの光~」
「……マジですの?」
目の前でやったら開いた口が塞がらないようで、フィーアは私とオーラを何度か交互に見た。
「リアルでちょっとだけ気を扱えるから、意外と簡単だったよ。それとこれ、HP回復効果があったりする?」
「え、えぇ……ありますわ。HP回復効果」
「フフ、そっか」
思い出すなぁ、気の練習台代わりに両親の肩こり首凝りをよく解消したものだ。
……ふむ。
視線がフィーアの胸に集中する。初期装備である皮の鎧で隠されているが、私は裸を見たので知っている。フィーアは着痩せするタイプで胸はそこそこ大きい。
「ねぇフィーア、肩……こらない?」
「そう言われれば、少しこっている気がしますわね。お願いしますわ。試してみたいのでしょう?」
「ありゃ、バレてたか」
「そのスキルを作ったのはわたくしですもの」
そりゃそうか。
「じゃあやるね~」
背後に回って肩に向かって手の平をかざす。
さぁ、溢れろ癒しパゥワァー!
体の内側から放出するイメージで癒しを念じると、出た。オーラが優しい光を発しながら放出されてフィーアの肩へと浸透していく。
「ああ~効きますわ~」
「そんなに?」
「えぇ、そこだけ温かいタオルを置かれたような……血流が広がってほぐれていくのを実感しますわ」
なにそれずるい! 私も味わいたい!
けど、自分には出来ねぇっ!!
「……はい終わり」
「あら、もうですの?」
「効果があることが分かったからね~。後はてきとーに色々試すよ~」
「分かりましたわ。ありがとう」
「どーいたしまして~」
フィーアからまた離れたところで考える。
……次は何を試そうか?
気、オーラと言えば……やっぱり手からビームかな?
でも消費激しそうだし、加減がちょっと難しそう。
となると、まずは気弾から作って力のコントロールを覚えつつ発展させていく方がいいか……。
「よし、その方向で行くか」
利き手の右手を前に出し、手のひらを上に向ける。
オーラを集め、丸め、圧縮……そして、分離して浮かせる!
するとMPが一割ほど減って、オーラで形成された丸くて光る玉が手の平の中で浮いた。
「っ! でき――」
たと思ったら、その光玉は煙のように霧散して消えた。
「…………これは…………形を留めるイメージをしていなかったせいだな。多分」
予測は出来たのでリトライ。
同じように光玉を出してみたら、今度は霧散しなかった。
「……よし、成功だ。それでこれを……丁度来たか」
都合よくツリーマンがやって来ていた。フィーアがこちらを見ているので、空いている左手を上げてヤルという意思表示をしておく。
「さて、威力の程は? ……ありゃ」
その場から投擲してみたが、どうやら射程が足りなかったらしい。光玉は途中で消えた。
射程が足りないなら圧縮度を上げて強固にし、ついでに到達する時間を短くする為に速度を上げればいい。
となると……
右手を拳銃に形にしてツリーマンに向ける。
人差し指と中指の先に、溜めて圧縮した小さな光玉――いや光弾を形成。
「バン」
なんとなく発砲音を口にして撃ち出せば、銃弾と比べると遥かに遅いが、それでも人間が躱すには到底無理な速度で光弾が飛んでいき、ツリーマンの胴体に当たると弾けて抉り取った。
ツリーマンはそのまま消滅した。
「思ったより強いな。もしかして、オーラによる攻撃って格闘に分類されてる?」
だとしたら、オーラを纏った攻撃は地母神のスキルによる補正が二重に掛かるのかもしれない。必殺技の創作のし甲斐があるな……!




