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黒幕と歩むデスゲーム  作者: 覇気草
三章 チュートリアル終了

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第31話 「移動が面倒ですし、目標レベルになるか呼び出しがあるまでここで過ごしますわよ」


 ドワーフ二人が休憩中に魔物が何体か引き寄せられたが、それはフィーアが全て対処した。不用意に私たちの強さを見せたくないのだろう。


「では、そろそろ失礼する。縁があればまた会おう」


 結局二人とは全く話さず、三十分ほどでダンジョン探索に戻って行った。

 二人が見えなくなるまで見送り、私は口を開く。


「フィーア、他のプレイヤーが来た時は、できるだけ魔物の対処は君に任せるってことでいい~?」

「えぇ、どうせすぐに神の力のことは知れ渡るでしょうけど、見せないに越したことはありませんもの」

「オーケー。それともう一つ、この休憩所でどこまで過ごすつもり~?」

「移動が面倒ですし、目標レベルになるか呼び出しがあるまでここで過ごしますわよ」


 まぁ、無闇に移動しながら魔物を倒すのは効率が悪いし妥当な判断か。スキルの習得には色々なことを試行錯誤しないといけないし。

 それに、階層が進むごとにダンジョンは苛酷になるはず。それを考えるとこれは予行演習くらいにはなるだろう。


「はい質問」


 アネモネが真剣な眼差しで手を上げた。


「何かしら?」

「食料、足りますか?」


 確かにその確認は必要だな。


「足りますわよ。冷蔵庫の中の食料は一定時間で復活しますので」

「やった! 沢山食べれるんですね!」

「えぇ」


 良かったなアネモネ。


「さて、それじゃあ~……スキル習得の為に適当になんかやっておくね~」

「えぇ、わたくしはアネモネにスキル習得のやり方をレクチャーしておきますわ」


 飛んで二人から少し離れた場所に私は移動し、考える。


 ……どういうスキル習得しよう?

 基礎ステータスが上がるパッシブスキルを習得する為に走り込みとか筋トレとかするのもありだし、瞑想もなんかありそうな気がする。

 或いは武術か?

 武術なら文字通りの“技”が習得できるはず。素手専用アクティブスキルがどれほど充実しているかは分からないが、黒幕のことだ、無駄に豊富だろう。それにAIワフ、あいつが私たちを監視している以上、絶対に余計なスキルを生やすはず。

 ……と、考えが逸れたな。筋トレとかはぶっちゃけいつでもできるし、ここは魔物ですぐに試せるアクティブスキルの習得が望ましいか。

 なら、一撃が強力なスキルがほしいな。いくら神の力によってサイズ差補正があるとはいえ、相手が防御特化の場合は通じない可能性がある。

 一撃となると……目一杯に力を込めた右ストレートか、速度と体重と筋力を乗算した蹴り……ライダーキックか?

 ライダーキックか……なんだろう、すっごいありそうな気がしてきた。黒幕って中身男だし、ロマンを理解してそうだし。


「…………とりあえずやってみるか」


 期限は一週間くらいで。


 そうして私たちはスキル習得の為に色々とやりつつ、引き寄せられてきた魔物を定期的に倒して効率よくレベル上げを行い始めた。

 私はひたすらライダーキックの素振りをし、ライダーキックだけで魔物を倒し続けた。

 夜になってダンジョンが暗くなり、交代で見張り番をしながらも同じ行動を繰り返した――――




 ――――結果、アクティブスキル【ライダーキック】を三日目で習得した。レベルも上がって現在22。今は人気漫画のおじいさんキャラを真似して、ひたすら気持ちの籠った正拳突きをしている。

 アネモネは私たちが習得したパッシブスキル【ランナーズハイ】、【泳ぎ上手】を三日の間に習得。今はフィーアの勧めでずっと瞑想している……が、たまに涎を垂らしながら居眠りしている。夢の中でも何か食べているんだろう。

 フィーアはジョブスキル【料理好き】を習得した。ジョブスキルとは、第六階層の到達で解放される『職業』に関係しているらしい。詳しくはその時に説明してくれるとのこと。あと、幾つかアクティブスキルを習得したらしいが、秘密にされた。ケチめ。

 それと、時折プレイヤーが訪れてきたが、私たちがレベル上げとスキル習得に夢中だと分かるとさっさと離れてくれた。襲って来てくれたら正当防衛で返り討ちにしてやれたのに……残念だ。

 そうして過ごすある日の昼食時、フィーアにお知らせメッセージが表示された。メールだ。横から覗き込んで見れば、GMでギルド長で妖精のニケからだった。

 件名は『今どこでなにしてる?』だ。

 フィーアの指が動き、メールが開かれる。

 内容は無いようだ。


「フィーア、どう返事する~?」

「てきとうに、ダンジョンに籠っていることを伝えますわ。あとは……ボス戦に備えて、いい装備がどこで手に入るか聞いておきましょうか」


 プレイヤーだと思わせる為の嘘か。ギルドメンバーの装備の質の調査も兼ねてるな。


 返信をして食事に戻ると、一分ほどで返事がきた。

 内容はこうだ。



 凄いな君たち、そのやる気と根性には敬意を表する。神の力を抜きにしても、ギルドの幹部候補として期待しているよ。

 あと、いい装備の情報だが……残念ながらそのような情報はない。最序盤では装備にそこまでの差異は無いんだ。君たちのプレイスタイルによって、重装備にするか軽装備にするか、ぐらいの感覚で各々こしらえてほしい。

 ある程度の資金が貯まれば、ホムンクルスが経営している武器屋や防具屋で揃えるのが楽で堅実だ。

 メンバーにも聞かれたらそう答えてる。

 以上


 勝利の女神 ニケ より



 ははっ、なるほど。そういう意図のある名前だったか。


 ギリシャ神話に登場する女神ニケ、或いはニーケー。勝利を司る神。

 日本人はげんを担ぐのが好きだし、神様なら邪神以外はとりあえずありがたがる。例えそれが異教の神様だとしても。

 そんな勝利の女神が旗頭となって応援やサポートをしてくれる、という字面や言葉は言霊となり、なんとなく勝てそうという雰囲気に繋がって士気が高まる。なんならちょっと優越感が生まれる。

 長期的に見て、デスゲームを攻略するうえで精神的な支柱になるということだ。


 でもちょっと――


「ムカつきますわね。こいつ」

「だよね~」


 神の名前を付けるなんて大それている。GMという立場だからあながち間違ってはいないし、ギルドを盛り上げるやり方としては正しい。

 が、自分は特別なんだって意識させているようで気に入らない。黒幕側として、壊してやりたくなる。


「ヤりますか?」


 アネモネがわざわざ杖を出した。


 いや早いって!


「その時になったら指示しますわ」

「はーい」 


 フィーアに言われ、アネモネは杖を仕舞った。




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