第29話 「いいですね休憩所。休みましょう」
フィーアの肩に座り、三人で店を出る。
人目があるので言いたいことを我慢して沈黙を続け、街を出て森に入ったところで私は言った。
「上手く入り込めたね~」
「えぇ、これから楽しくなりそうですわ」
「そうですね。また歓迎会みたいなの開いてほしいですね」
アネモネ、お前は食い意地が張ってるだけだろ。
「……で、これからどうするの~?」
「言われた通りレベル上げですわ。AIのせいでわたくしの想定してる推奨レベルも当てになりませんし」
「ふーん、その推奨レベルは~?」
「20前後を想定していましたわ」
20……まぁ、高難易度ゲームと考えるとそれくらいか。
「では、ダンジョンでレベル上げを始めますわよ。アハト、案内」
「はいはーい。【ガイド】第三階層のダンジョン」
光の線で道を示し、飛んで道案内。
とは言っても、他のプレイヤーもダンジョンに向かっているのであんまり意味はない。多分、怪しまれない程度の仕事なのだろう。
そうして何事もなくダンジョンに到着。ダンジョン名は『お化けツリーの群生地』。階層内にあった他の木より小さい木が密集していて、天井は枝葉で覆われているが何故だか明るく、木が整然と並んで人が通れない壁となり、まるで作られたかのようにダンジョンらしい道を形成している。
妖精なら木の間を通って壁抜け出来そうだけど……止めておこう。黒幕であるフィーアのことだ、何かヤバいの仕掛けてそうだし。
好奇心はあるが自重し、斥候を兼ねて二人より前を飛ぶ。他のプレイヤーたちと違う道を進んでいると、少し先の曲がり角から魔物が姿を見せた。
二本の腕を持ち、二足歩行する細い人型の木だ。幹の部分にデフォルメされた恐い顔がある。
「フィーア、こいつは~?」
「『ツリーマン』ですわ。葉の色、生っている果実によって能力に差がありますわ。見ての通り火属性が弱点なのと、柔らかいので斬撃が有効ですわ」
ふむ……緑の葉に、アカマルの実が生っているな。弱いのかな?
まぁ、殴ってみればいいか。
「じゃあとりあえずやってみるね~」
「えぇ」
ゆっくり歩いて接近して来るツリーマンにこっちから近づく。相手の射程に入ったのか腕が振るわれた。速度はそこそこだが軌道は素直。回避すればもう片方の手が振るわれ、また回避すれば、もう片方の腕が振るわれる……絶え間ない連続攻撃だ。
ただまぁ、それだけだ。
ぶっちゃけ弱い。初心者の訓練には丁度いいけど、武道経験者からしたら欠伸が出てしまう。
時間を掛ける程でもないので内側に潜り込み、顔面にパンチ!
するとツリーマンはボッキリと折れてHPがゼロになって消滅した。
リザルトメッセージが出て『アカマルの実』が手に入ったが、重量過多でアネモネのインベントリに入った。
アネモネが早速実体化してシャリシャリ食べ始めた。
お前さっき食べたばっかりだよな?
まぁいいけど。
「次、アネモネ頑張ってね~」
「ふぁーい」
移動して次のツリーマンと遭遇。赤い葉っぱで赤くて丸くてトゲトゲした形の果実を付けている。
「【ツリーグロウ】」
出会ってすぐの魔法でツリーマンは地面から生えた木に締め付けられ、砕けて消えた。
……やっぱこの魔法ヤバイな。
「次、フィーアですね」
「えぇ、華麗に倒すところをお見せしてあげますわ」
ほう、華麗に……。
アネモネがトゲトゲの実を食べながら移動。その実は『アカトゲの実』というらしく、無花果っぽい味とのこと。ちょっと分けてもらったが、なかなかに美味しかった。
で、ツリーマンと遭遇。黒い葉っぱにブルーベリーっぽい果実を付けている。
フィーアは今まで鞘に入れっぱなしだった剣を抜き、ラウンドシールドを構えた。
「では、行きますわよ」
余裕を持った足取りでツリーマンに近づき、射程に入って振るわれた腕を盾でパリィ。もう一振りは回避しつつ剣を振るって切り落とし、魅せるようにくるっと回りながら片腕の攻撃を回避。踊るような足捌きで近づきながらパリィして内側に入り込み、スパスパスパッと素早い連撃で顔を切りつけてあっさりと倒した。
「おお~」
「凄いですねー」
アネモネと二人で感心しながら拍手する。それに対してフィーアは上品なお辞儀で応えた。
「さっきの動き、開発者だから行動パターンを読んでやったの~?」
「いいえ。雑魚エネミーの行動パターンまでいちいち覚えていられませんわ。ただちょっとチートを使って、わたくし自身の動きに合わせる形でオートアシストしてもらっているだけですわ」
「うわ~聞いて損した」
今のが本当の実力だったら称賛に値したのに。
がっかりしていると、アネモネが手を上げた。
「あの、オートアシストってそんなに駄目なものなんですか?」
「フィーア」
「コホン。オートアシストが何故駄目なのか、ですけど……アクションゲームや格闘ゲーム、シューティングゲーム等はプレイヤーの技能に大きく依存したゲーム性をしていますの。それ故にタイムアタックや“Eスポーツ"というゲーム大会が世界中で行われていて、クリアタイムや対戦でどちらが上かを競っていますの。だから、わたくしのようにこっそりとアシスト機能を付加する行為は、スポーツマンシップに反するとしてゲーマーからは忌み嫌われていますのよ」
「なるほどー。でも、ゲームが下手な人には欲しい機能ですね」
「……あなた、本当にゲームを知らないのね。アクションゲームの場合、そういう人の為に難易度が低いとアシスト機能が備わっている場合が多いですわ」
「そうなんですか。じゃあ初心者の私にもそのアシストください」
「あげませんし、神の力で充分でしょう」
「ええー」
「はいはい、行きますわよ」
移動を再開。順番にツリーマンを倒しながら気の向くままに進んでいると、変わった場所に到着した。
ちょっと広い空間の奥に木の小屋があって、一人が泳げる程度の小川が流れ、色彩豊かな花畑が広がっている。
なにここ?
休憩所?
それとも罠か?
「フィーア、ここはどういう場所~?」
「ダンジョン内にたまに生成される休憩所ですわ。プレイヤーがいる間は存在し続けますが、離れると消えますわよ」
「いいですね休憩所。休みましょう」
「アネモネはそう言ってるけど、どうする~?」
「休憩でいいかと。無闇に歩き回るよりここでエネミーが来るのを待った方が楽ですわ」
「なるほど。じゃあ休憩で~」




