第28話 「礼を言われるほどではありませんわ。わたくしたちにとっても、仲間は多いに越したことはありませんもの」
演説が終わり、ギルドの加入手続きの為に近くの飯屋に入った。攻略前線のメンバーが先に貸切にしていたようで、中には十数人のプレイヤーと新たに加入するプレイヤー十数人で埋まっていた。
滞りなく加入手続きが終了し、視界の左上にある名前やHP・MPバーの上に、所属ギルドの字が追加された。
ホムンクルスの店員によって、各テーブルに料理が配膳され、アカマルの実のジュースが一人一人に配られる。妖精の私にも。デュークがジュースを持ったまま、全員に聞こえるように声を張り上げた。
「それでは、新たな仲間と、今日も生きられたことを祝して――乾杯!」
グラスが掲げられ、みんなで「乾杯!」と言ってぐびっと飲む。
……酒が飲みたい。
デスゲームは精神的に過酷だからストレス解消手段としてありそうな気はするしフィーアに聞いてみたいが、人の目と耳が多過ぎて今は無理だ。仕方ないのでにわかに騒がしくなり始めた中で黙々と出された料理を食べる。
――と、少ししてGMであり妖精のニケがすぐ傍に着地した。手にはジュースがある。
「どう? 親睦を深める目的で歓迎会をやってみたけど、楽しんでる?」
「……いえ。私、人が多いのと騒がしいのは苦手なので~」
「ありゃ、それはごめん。でもギルドから抜けないでほしいかな。妖精ということは、君はかなりの実力者である証明なのだから。出来れば実力不足のプレイヤーたちの指導とサポートをお願いしたい。あぁ勿論、ギルドのやり方に慣れてからでいいから」
めんどくさ。
「ん~、私たちのリーダーはフィーアだから、そういうことは彼女を通してね~」
「彼女が?」
ニケの目つきが鋭くなって、何故かさらに距離を縮めて小声で言った。
「悪く言うようで申し訳ないけど、彼女、あからさまなロールプレイで怪しいんだよね。君、何か知ってる?」
流石GM、警戒心が強いな。
でも残念、私らの方が一枚上手だ。
「フィーアはこう言ってたよ~。“どうせゲームの中で生活するのなら、ロールプレイでもして楽しんだ方がいいですわ!”って」
「なるほど。一理あるね」
「因みに私もロールプレイしてるよ~」
「あぁうん。それはなんとなく分かる」
「……」
もしかして私のロールプレイ、下手?
でも今更変えるのもアレだし、続けてたらいつか様になるだろ。多分、きっと。
「なんかごめん。とりあえず、無理せず楽しんでね」
気を遣ってニケが離れてくれた。
……酒が飲みたい。
ともかく、料理を食べ終えた私はフィーアの傍に行って寝たフリで過ごした。
宴もたけなわ、歓迎会が終わりを迎えて他の新規メンバーたちは既存メンバーに連れられて部屋を出て行った。残されたのは私たち三人とニケとデューク。
デュークが私たちのテーブルの対面に座り、肩に乗っていたニケがテーブルの上に降り立つと言った。
「さて、ようやく落ち着いて話せるね。君たちが大々的にギルドへの加入をしてくれたお陰で、想定よりも多くの仲間を募ることができた。ありがとう」
「礼を言われるほどではありませんわ。わたくしたちにとっても、仲間は多いに越したことはありませんもの」
よく言うよフィーア。私たちが怪しまれずにこっそり犠牲者を出すには、多い方が都合がいいんだろう?
「それでもだよ。っと、本題に入ろう。他のメンバーと別れて君たちだけ残ってもらったのは、単純に贔屓だよ」
「贔屓?」
「呼び掛けに一番初めに応えてくれた報酬として、ギルド長である私と副長のデュークで直接見定めようって決めてたんだ。実力が伴わない場合はレベル上げも兼ねて特訓に強制参加の予定」
「その必要はありませんわ。わたくしたち、今の段階でなら間違いなく世界最強に近いので」
二人の目が大きく見開かれた。デュークはすぐ平静を装ったが、ニケは笑みを浮かべた。
「……言うね。対した自信だ。それとも根拠があるのかな?」
「勿論ありますわ。GMのあなたなら知っているのではなくて? “神の欠片”というユニークアイテムを」
「っ! まさか手に入れたの!? バカな社長が独断で導入したアレを!」
フフ、バカって言われてやんの。
「……会社の事情は分かりかねますが、えぇ、手に入れて使いましたわ。地母神の欠片はアハトが、森神の欠片はアネモネが」
「二つもっ!? ありえない……けど、事実として手に入れたんだよね?」
「えぇ、それほど珍しいものですの?」
おぉ、すっげぇすっとぼけてる。
「珍しいで済ませていい代物じゃない。入手難易度は天文学的確率――運に尽きる。けど、それに見合った力が手に入る。まさしく公式チートだよ」
「試したからそれは実感していますわ」
「……君たちが僕たちのギルドに自主的に入ってくれて本当に良かった。特に、悪い人の手に神の力が渡らなかったのは幸いだ」
そっか……悪人にヤバい力があったら、エロ同人みたいな展開とか、大量虐殺とかやり始めてもおかしくないか。
そうなった時、追い詰めて始末したら気持ちいいだろうな~。
「それで? これからわたくしたちは何をすればよろしいですの?」
「あぁそうだね。既に僕たちのギルドを含め、ゲーム攻略に意欲的なプレイヤーや妖精にならなかった実力あるプレイヤーは第五階層の強力な階層ボスを倒す為に準備を始めている。誰かがボスを倒してくれればそれはそれでいいんだけど、期待はしていない。当面はレベル上げとスキル習得、装備の調達に専念してほしい。ギルドとして準備が整ったら、ギルド用のメールで知らせる」
「分かりましたわ。因みにレベルはどれほど上げればよろしいですの?」
「んー……本来の想定レベルは第五階層で10前後あればいいんだけど……念には念を入れて、30前後は欲しいかな」
「30前後……時間が掛かりそうですわね」
「神の力があるのならすぐだと思うな。それじゃあよろしく」
ニケが飛んでデュークの肩に座ると、デュークは立ち上がってカッコつけたジェスチャーと爽やかな笑顔で別れの挨拶をし、出て行った。




