第26話 「ねぇ二人とも~、もしかしてだけど……臭う?」
おっ、レベルが上がってスキルも習得できた。
祝福のSEと一緒にピコン、と音が聞こえてメッセージが表示された。
『レベルが15から18に上がりました』
『パッシブスキル【ジャイアントキリング】を習得しました』
『アクティブスキル【スーパーラッシュ】を習得しました』
『重量過多の為、以下のアイテムはパーティーメンバーへ転送されました』
・フォレストドラゴンの肉×10
ピンポンパンポーン♪
「ん?」
ゲームに似合わない音が世界に響いた直後、新たなメッセージが現れた。
『仕様変更のお知らせ』
『以下の通りに仕様を変更いたします』
・予想以上にプレイヤーのゲーム攻略速度が早い為、難易度を上昇させます。
・プレイヤーのレベルは今後、特殊なアイテムによる閲覧以外では見られなくなります。
・スキルはウィンドウでの閲覧を廃止し、脳内に直接情報が展開されるようになります。
『これからも引き続きゲームをお楽しみください』
『フィクサーより』
フィーア……なわけない。なにやってんだワフ。
おっ、早速頭の中にスキルの情報が入ってきたな。
パッシブスキル【ジャイアントキリング】
・サイズ差による攻撃力上昇
相手が大きい程、効果が大きい
他スキルのサイズ差補正がある場合、効果は重複する
アクティブスキル【スーパーラッシュ】
素手専用スキル
両拳による連続攻撃を行う
連続攻撃はスタミナが続く限り持続できる
スキル攻撃中、スタミナ消費量が減少
ほう、頭の中に情報が展開されるとこんな感じなんだ。
それにいいスキルだ。ますます強くなるな。
新たなスキルの確認が終わった頃になって、困惑した様子のフィーアとアネモネが戻って来たので聞いてみる。
「フィーア、これってあなたの仕業~?」
「違いますわ。全く、わたくしを騙ってやってくれますわねあのAI」
「どうする? しばく?」
「……いえ、放置で構いませんわ。フィクサーが動いていれば、わたくしが黒幕だとバレにくいでしょうし」
「それもそっか~」
「あの、ちょっといいですか?」
アネモネが控えめに手を上げた。
「フォレストドラゴンの肉がインベントリに入りきらずに落ちてるので、手に持って行きませんか? 勿体ないですし」
「いや汚いよそれ~」
「ゲームの中だからお腹を壊すことはないですけど、精神衛生的にオススメはしませんわ。それに、地面に落ちた食材は早く腐って消失するよう設定されていますの。街までもつとは思えませんわ」
「じゃあせめて食べていきましょうよ」
そんなに食べたいのか、ドラゴンの肉を。
でも食べれないよ。だって――
「火はどうするの~?」
「あっ」
「フフ」
気付いてなかったんかい。
フィーアもお嬢様っぽく笑ってるし。
「ほら行くよ~」
移動再開。飛んで道案内するが、さっきよりも二人との距離が開いている気がする。
…………もしかして。
「ねぇ二人とも~、もしかしてだけど……臭う?」
「えぇ、臭いわ」
「臭いですね。胃酸の酸っぱ苦い香りがここまで漂ってます。だから近づかないでください」
「そっかぁ」
これは体と服を洗わないと、肩に座らせてくれないな。
っと、聞きたいことを思い出した。
「それはそれとして、フィーア、一つ質問いい~?」
「えぇ、どうぞ」
「フォレストドラゴンって、どれくらいヤバイの~?」
「あっ、それ私も聞きたかった」
「隠すほどのものでもありませんし、お教えしますわ。フォレストドラゴンは本来、第二十五階層以降の森に低確率で出現する強力なエネミーですわ。好戦的で走光性――光に引き寄せられる性質を持ち
、外皮は非常に硬く、魔法に強い耐性があって、本来なら高レベルのプレイヤーがパーティーを組んで万全の状態で挑むものですわ」
なるほど、そりゃ知ってるお前なら即逃げるわな。
でもさぁ……
「フィーア、黒幕、おかしくね?」
「言わなくても分かってますわ。こんな序盤の階層に出現するのは本来あり得ない。恐らく、難易度上昇の一環で強力なエネミーを配置したのでしょう。出会ったのは……偶然だと思いたいですわね」
ほんとだよ。
これで意図的に遭遇させましたって言われたら、クソゲー認定したうえでぶん殴ってやるところだ。
その後はフォレストドラゴンみたいな強力な魔物と遭遇することなく、普通の魔物を何度か蹴散らして目的地の街に到着した。
街の名前は『ウッドウォール』。名前の通り十数メートルある木の壁に囲まれていて、その手前に深い堀がある。橋が掛かっている門の前ではホムンクルスたちが木の槍や弓矢を持って篝火の傍で見張っていて、橋を通過する時に堀の中を覗いてみれば木の棘が底に敷き詰められていた。プレイヤーが落ちたら、相当頑丈な奴かHPの高い奴じゃないと命はないだろう。
街の中に入れば二階建ての木造住宅が並んでいる。道幅も広くて整然としていて住み心地は良さそう。
ただ、真夜中だからか人通りは殆どなく、とても静かで、明かりは私の翅の光と家の中の光、あとは街中に等間隔で設置された篝火だけだ。
あぁ、街に着いた安心感で眠気が……。
「フィーア、ひとまず宿屋で寝る~?」
「えぇ、流石にこの時間まで起きているのは、仕事で慣れていても辛いですわ。歳ですわね」
「分かる~。私ももう眠くてきついよ」
「……あの、お二人って歳幾つなんですか?」
「……」
「……」
それをゲームの中で聞くかぁ。中身男だから聞かれても別にいいんだけど、今は女だからちょっと複雑な気分。
まぁ、答えてやるか。
「三十代、とだけ言っておく~」
「わたくしも、三十代とだけ言っておきますわ」
「わぁ、大人のお姉さんですね。因みに私は十六歳です」
「……」
「……」
アネモネ、私らが中身男で良かったな。正真正銘の女だったらその発言は嫌味にしか聞こえんぞ。
……いかん、ちょっとムカついてる自分がいる。この話はやめよう。
「じゃあ宿屋に案内するね~。ガイド【隠れ家亭】」
とりあえずで一度止まったことのある宿を指定してみたら、あるらしい。スキルが発動して光りの糸が伸びて道を示してくれた。
「こっちだよ~」
道案内した宿屋は、またしても入り組んだ路地裏の中にあった。それはともかく、眠いから衣服を洗濯しつつ風呂入って歯を磨いてさっさと寝た。




