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黒幕と歩むデスゲーム  作者: 覇気草
二章 作られたご都合主義

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第24話 「ふっざけんなコラあああああああああっ!」


 さぁどうするフィーア?

 アネモネに聞かれたぞ。始末するか仲間にするか、どっちを選ぶ?


 フィーアが私の方に振り返った。


「アハト、あなた気付いてましたね?」

「フフフ……いや~、そっちの方が面白そうかなって」

「あなたねぇ……はぁ」

「あの、聞かなかったことにしてもいいですか?」

「いいわけないでしょう。わたくしたちの正体がバレた以上、生かしてはおけませんわ」

「ちょっと待ってください! そこはせめて“死にたくなければ仲間になれ”とか、一応勧誘するものじゃないですか!? アハトも助けてくださいよ!」


 いやーおもしれー状況だ。笑える。

 まぁ、仲間にしてもいい可能性はあるから、その部分を引き出してやるか。


「アネモネ、一つ答えてくれる~?」

「はい、こんな状況でなんですか?」

「アネモネってリアルじゃ死に掛けていたり、不幸な人生送ってたりする~?」

「? ……死に掛けたりはしていませんけど、体が弱いので病院が家みたいな状態ですね。けど、両親から愛されてる自覚はあるので、不幸ではないです」


 あーだから戦闘の動きがダメダメだったのか。

 もうちょっと深掘りしてみよう。


「もう一つ質問。今デスゲームの真っ最中だけど、自分は死んでもいいと思ってる? それとも現実に戻りたいと思ってる?」

「うーん……死んでもいいかな。お母さんもお父さんも、私の面倒をずっと見てくれてるけど、もうだいぶ疲れてるし。さよならを言えないのはちょっと残念だけど、まぁ、もういいかなって」


 おぅ、思った以上に達観してると言うか諦観してると言うか……流石に愉悦できない。


「フィーア、どう?」

「……はぁ~~、そういう話をされるとやりにくいですわ」

「じゃ、じゃあ――」

「だから、痛みも無く消して差し上げますわ。それがせめてもの情けです」

「えっ……待って、待って! 私、役に立つよ。役に立てるようになったんだよ! ほらっ!」


 えっ、なにそれはっ!?


 アネモネが杖を実体化させた。

 だがそれは『スライムロッド』ではない。

 厳かな雰囲気を纏う木の持ち手に、先端が杯のように広がり枝葉を生やしている長杖だ。


「そんなバカなっ!!」

「フィーア、分かるの?」

「そりゃ分かる。だってそれは、“神の欠片シリーズ”の一つ、森の神の力で変質した杖! その名も『神杖《しんじょう》ユグドラシル』なのだから」


 ウソでしょ、こんなすぐに神の欠片シリーズが現れるなんて……もう奇跡や偶然では済まされないぞ!


「アネモネ、それは《《いつどこで》》手に入れた!?」

「えっと……言わなきゃ、ダメ?」

「ダメ。場合によっては管理者権限で今すぐにでも消す。脅威は早急に取り除くべきだからな」


 黒幕、演技忘れてる。

 それとアネモネ、お前の恥ずかしそうな態度で察したわ。世界樹の下で小便して手に入れたんだな。そりゃ女性としては言いづらいわ。フフ。


「ええー……あの、笑わないって約束してくれます?」

「約束しよう」


 私は黙っておこう。今にも笑ってしまいそうだし。


「じゃあ言いますけど……さっき世界樹の下でおしっこしたら、なんか出てきたから、思わず使っちゃいました」

「……あぁ、そう」


 フィーアはそれだけ言うと深呼吸し、天を仰いで――


「ふっざけんなコラあああああああああっ!」


 思いっきり感情を爆発させた。


 ぶはっ、まぁブチ切れるよねぇ!


 ホムンクルスたちが一斉に起きてしまったが、フィーアは止まらない。


「ありえねーだろ! どんな確立だよ!? 自分たちだけほいほいユニークが手に入ったら明らかにおかしいだろ! 怪しまれるだろ!! 誰だこんなアホな優遇措置してる奴はああああ!?!」


 一通り叫び終わってフィーアは大きな溜息を吐いた。起きたホムンクルスたちは気を利かせてくれたのか、再び寝始めた。


「フィーア、気は済んだ?」

「……えぇ、とりあえず元凶に一発ぶん殴ってやることは確定しましたわ。そしてアネモネ」

「あっはい!」

「あなたの言葉に嘘偽りは無いと信じ、わたくしたちの仲間として迎え入れます。感謝なさい」

「あ……ありがとうございます」

「さて、三人でちょっとお出掛けしましょうか。行き先は管理者専用エリア、通称『天国』へ」


 フィーアが管理者用のメニューを出し、幾つか操作すると私たち三人は転移した。




「さむっ!?」


 転移した先は薄暗く気温は極寒で、風がとても強く妖精の体では吹き飛ばされる。

 堪らず私はフィーアの首元に移動して風除けにした。フィーアも寒いのかマントのフードを被ったので快適だ。


「こここ、ここ、どこですか!?」


 アネモネが寒くてガクガク震えている。頑張れ。

 改めて周囲を確認すれば、黒い床が広がっていてそれなりに広い。形は円になっていて、その先は雲が広がっている。

 上を見れば暗い青空の中で静かに輝く大きな月があり、少し離れて星々が煌めていた。


 まさかここって――


「ここは天国……《《深淵の塔の頂上》》ですわ」


 やっぱり。


「なんでこんなところに作ったの~? 寒いってマジで」

「だって、誰かをここに連れてくる予定なんて無かったんですもの」


 そう言ってフィーアは管理者用のメニューを操作した。するとフィーアの周りだけ風が止まり、温度も快適になった。


「今何したの~?」

「チートを少々。ほらアネモネ、こちらに寄りなさいな」

「はいぃ」


 凍えるアネモネが招き寄せられてマントの内側に入ると、震えが止まった。


「あぁ、温かい……ついでにホットココアとか出してくれませんか?」

「出しませんわ。それより、今からAIを呼びますので二人はしばらく黙っててくださいまし」

「はーい」

「はーい」


 また管理者用メニューが操作されると、目の前に光りの粒子が集まって人型となり、姿を見せた。

 ジーニアス社のロゴが入ったジャージを着ているホムンクルスだ。金髪に茶色い瞳をしていて、頭に垂れた犬耳、お尻からは犬の尻尾が生えている。なんかゴールデンレトリバーっぽい雰囲気がある。

 そいつは楽しそうな笑みを浮かべながら口を開いた。


「やぁマスター、私に会いに来るなんて久しぶりだね」

「えぇ、久しぶりですわね。フライデー」

「うん、それで今日はどんな用事でここに? お客さんも連れてるようだけど」

「ちょっと確認に来たの。フライデー、あなた、わたくしたちを監視して、都合のいいように干渉してません?」

「うん、してるよ」

「何故ですの?」

「そっちの方が面白いと思って。ほら、デスゲームの攻略でマスターたちが強ければ強い程、他のプレイヤーはマスターたちに依存するようになる。そうなればネタばらしした時により深く絶望を与えられるでしょ?」


 確かにその通りだ。

 だが、それは面白くない。恐らくフィーアも――


「……その通りですが、面白くありませんわね」


 ほら、思った通り。


「どうして?」

「それは勿論、意外性が足りないからですわ」


 そうそう。

 圧倒的な強い力を持つキャラが途中で仲間になったら、ゲームでは死亡フラグか裏切りフラグの二つと相場が決まってる。

 つまり、私たちが強過ぎることによって一部のプレイヤーからは常に疑惑の目を向けられることになってしまう。


「……そっか。意外性が足りないか……」


 フライデーの尻尾がしゅんと垂れた。

 ――と思ったら、すぐにピンと立った。


「だったらこうしよう! マスターたちを基準にして難易度を上げるね。それとマスターたちが第百階層を攻略して。もし失敗したら私が次のゲームを主導するから。どんなゲームにしようかなぁ……今から楽しみだ。じゃあね♪」


 言いたいことを言ってフライデーは消えた。



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