第21話 「……恐らくですが、誰も発見していない街なのではないかと思いますわ。隠れ里的な」
ボスを倒してシステムに祝われ、大量の経験値が入ったのかレベルが一気に15まで上がり、リザルトが表示された。
『以下のアイテムを手に入れました』
・スライムドリンク×1
『重量過多の為、以下のアイテムはパーティーメンバーへ転送されました』
・スライムの粘液×100
……それだけ? ちょっと調べてみるか。
手に入れた物の詳細を表示。
アイテム『スライムドリンク』
・飲んで使用する。
・使用するとHP、STが上昇する。
・効果は永続的だが、一度きり。
へぇ、ステータス上昇アイテムか。これは……レアなのか?
まぁいいや。二人がどんなものを手に入れたか気になるし、聞いてみよう。
「ねぇ二人とも~、どんなの手に入った~?」
声を掛ければ、二人が私のところに移動してきた。
「わたくしは“ラストアタックボーナス”というものによって、いい盾を貰いましたわ」
フィーアが左腕に装備している盾をデータ化し、新しい盾を装備した。
丸くて小さいラウンドシールドだが、表面に薄くスライムが貼り付いている。
「これは『スライムシールド』ですわ。敵の攻撃で発生する衝撃をある程度吸収してくれる効果がありますの」
「おぉ~いいね~」
「私は『スライムリング』っていうのを手に入れました。一日一回、MPポーションと同等のMP回復が出来るみたいです」
「おぉ~魔法使いにピッタリだね~」
いやピッタリすぎるだろ!
「はい」
「……そう、ですわね」
おいフィーア、なんでお前はそこで微妙な反応をする!?
……まさか、ボスを倒した報酬があまりにも出来過ぎているとか考えているんじゃないだろうな?
私も思ってるから、演技して演技!
「因みに私は~、こんなの手に入れました~」
スライムドリンクを実体化。小さなアンプルみたいなものに入った青色のとろっとした液体だ。
「これを飲むと、HPとスタミナが上昇するんだって~」
「いわゆるステータス上昇アイテムですわね」
「そんなのあるんですね。たくさん集めて使えば、最強になれませんか?」
「そう美味い話は無いよ~。効果は一度きりだってさ~」
「そうですか」
「よし。みんなの手に入った物の確認は済んだし~……アレ、調べよっか~」
指さした先、いつの間にか光る魔法陣が門の前に出現していた。
近づいてみると『転送陣』と表示され、上に乗ってみるとウィンドウが表示された。
どちらに移動しますか?
ボス部屋の前へ
次の階層の転移門へ
「フィーア、どうする~?」
「次の階層でいいですわ。レベルもそれなりに上がりましたし」
「……あの、もうちょっとこの階層でレベル上げしませんか? あっそうだ! ボスを倒した記念にお祝いしましょう! ね?」
見え透いた時間稼ぎだな。往生際が悪い。
「はい飛ぶよ~」
「あああああ待ってくだ――」
無慈悲にポチッと押したら、すぐに私たちは次の階層へと転移した。
『第三階層:幸せ森』
転移してすぐ、視界の隅に階層の名前が表示された。
すぐ傍にある転移門にはプレイヤーたちが出入りしていて、周囲は木、木、木……全幅十数メートルの大木で埋め尽くされていて、空は大木から広がる枝葉によって遮られている。ただ、隙間からは強い光が差し込んでいて、日中と変わらない明るさだ。
「……いい場所だね~」
「序盤の拠点にするには良さそうな場所ですわね」
「あの、そんなことより私を捨てないでほしいんですけど……」
言い方ぁ……それじゃあ私たちが悪いみたいじゃん。
そういうことを言うなら――
「もうここで別れて良くないかな~?」
「えっ」
「……それもいいですわね」
「待って待って待って! ここで別れたら道に迷いそうだから止めてください! それに、魔物がどんな奴か分からない状態は危ないじゃないですか!」
アネモネがフィーアに抱き着いた。今にも泣きそうな顔が嗜虐心をくすぐってちょっと愉悦。
「ダイジョブダイジョブ。アネモネには魔法があるし、一人で街まで辿り着けるって~」
「今、MP切れてるんですけど!?」
「スライムリングを使えば回復出来ますわよ」
「回復しても数回でガス欠になります! それに街までどれくらいの距離か分からないのは不安です!」
……他のプレイヤーの視線が集まってきたな。いじるのはこれくらいにしよう。
「しょうがないな~、とりあえず街まで行こっか~。【ガイド】、この階層の街」
妖精専用スキルを発動すれば、森の中に細い光の導が現れた。その方向は多くのプレイヤーが行き交っている。どうやら先行したプレイヤーたちが街へ続く道を開拓した後っぽい。
「こっちだよ~」
飛んで二人を先導する。
他のプレイヤーたちが進む方向は最初こそ同じだったが、歩くにつれて徐々にバラバラになり、いつしか私たち以外にプレイヤーが見えなくなった。
アネモネは不安になったのか、杖を両手で握りしめながら私の横にきた。
「あのー……いつになったら街に着くんですか?」
「さあ~?」
私が聞きたいよ。
後ろで一人になったフィーアが小走りで追いつき、隣に並んだ。
「今になって気付いたのですけど、アハト、ガイドの時になんて言いました?」
「え? この階層の街」
「あぁ、やっぱり」
「あっ、そういうことですか」
「? 何がいけないの~?」
私だけ気付かないとは、ちょっと悔しいな。
「アハト、あなたのガイドの目的地選択ですけど……範囲が広すぎますわ」
範囲が広い……?
「……あぁ~そっか~!」
分かったわ。“この階層の街”だと、検索範囲として階層全体にある街のどれかになってしまうんだ。
あの時に選択すべき言葉は、“最寄りの街”だった。
まぁ、今更か。
それよりも、これはフィーアに聞かなければ。
「それよりフィーア、他のプレイヤーがだーれも通っていないのはどういうこと~?」
「……恐らくですが、誰も発見していない街なのではないかと思いますわ。隠れ里的な」
隠れ里……ねぇ。
そう言う割には納得してないって顔だな。もしかして、またしても想定外か?
あと今気付いたが、隠しエリアとか妖精の【ガイド】で出ないはず。
……なんか、黒幕ですら与り知らぬところで何か起きてるのかもな。
――っと、着いたか。
森の中の開けた場所に出て、光の線が消えた。
そこは周囲の木より二回り以上もでかい木――いや大樹が、一本そびえ立っている。大樹には幹に木製の足場や窓やドアが取り付けられている。
周辺の木にはツリーハウスが建設されていて、漫画やアニメのエルフの里っぽい雰囲気がある。
そして、大樹や周囲で、村娘風の服を着た緑髪のホムンクルスたちが生活していた。




