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黒幕と歩むデスゲーム  作者: 覇気草
プロローグ デスゲーム前

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第1話 『ようこそアビスダンジョン・オンラインへ』



 ――目が覚めれば、もう見慣れてしまった病院の天井がある。


 ……ああ、くそっ。どうして俺の体はこんなに脆いんだ?


 俺は人並みに体力と筋力がある。

 だが、業績の悪化を理由に十年働いた会社からリストラされ、まだ若いからと安易に肉体労働がメインの仕事を再就職先に選んだのがダメだった。

 働き始めて一ヶ月で腕や脚の関節を痛めた。病院で診てもらった結果、もともと痛めやすい体質らしく、肉体労働は全く向いてないから辞めた方がいいと言われた。

 それでも経歴に傷が付くのを恐れた俺は仕事を続ける決断をし、痛み止めを処方してもらった。が、飲んだら仕事中に心臓がおかしくなって倒れて入院。

 検査の結果、稀に起こる重篤な副作用らしく、心不全だそうだ。

 確かに最近、息切れがしやすかったりはしたけど……三十代という働き盛りなのにまともに働けなくなるとは、情けないし悔しい。余命も五年ほどだそうだ。


 ……まぁ、いいか。

 ここまでダメだと逆に諦めもつくというもの。

 暇だな……。


 動きたいが、まだ入院の必要があるらしく出歩けない。それに急な入院だったから手元にはスマホしかない。

 適当にネットサーフィンをして時間を潰す。


 おっ、これは……。


 スマホに映るのは世界初のフルダイブ型VRMMORPG『アビスダンジョン・オンライン』のサービス開始が数カ月後に決まったニュースだ。ジーニアス社というゲーム会社が作った物らしく、公式サイトで専用VR機器の予約販売が開始されている。

 その『アビスダンジョン・オンライン』は王道のファンタジー世界で、多種族の人類が大規模な戦争をした結果、眠っていた巨大な魔物たちが一斉に怒り狂って暴れ回り、全てを破壊して何もかも無くなってしまった世界。

 神々は人類の自業自得な結果に呆れつつも、助けとして資源が無限に手に入る地下百層の深淵を作った。百層を突破した時、願いが叶う聖杯を授けるとも。

 ただし、その深淵は凶暴な魔物が巣くっており、一筋縄ではいかない。人類は最後の拠り所として集まり、挑戦者が今日も深淵を目指して進む……――という設定らしい。


「……買うか。どうせ暇だし」


 俺は早速、VR機器の予約購入をした。




 ――退院して無職の生活に戻り、数カ月が経った。

 今日は『アビスダンジョン・オンライン』のサービス開始日だ。

 スマホで時間を確認すれば午後九時前。あと数分で始まる。


 掃除と洗濯は日中に終わらせた。

 戸締まりは少し前に確認した。

 歯磨きとトイレはさっき済ませた。


「よし」


 寝室に移動してベッドに横になり、傍に置いてある専用VR機器を手に取る。

 このVR機器、数日前にようやく届いて急いで設定をしたものだ。ヘッドセットタイプで従来の物と比較すると凄く軽くて薄い。

 装着して電源を入れてゲームを起動すれば、サービス開始までのカウントダウンが目を覆うバイザーに表示された。

 そのまま待機しているとカウントダウンが小さくなって端に移動し、暇を持て余したユーザーの為にPVが流れ始めた。もう何度も観た。

 でも、これからその世界に入って体験できると思うと……めちゃくちゃ楽しみな気分になる。

 PVが終わったところで、丁度サービス開始時間になった。


 さぁ、ゲームスタート!!


 浮遊感の後に吸い込まれるような感覚があって、サイバーチックなトンネルの中を通過する。

 トンネルを抜け、体が勝手に動いてふわりと着地。


「どこだここ?」


 どこまで行っても白一色な、なにもない空間。

 事前情報なんてPVとゲーム内でのメニューの出し方と基本的な操作方法以外に無いので、ここがどこだか全く分からない。


「で、服が変わってるし」

 

 ジーニアス社のロゴが入った黒いジャージだ。自分の顔は見えないが、手はリアルの手と同じ……いや、若干だが美化されている。

 

「まぁ、こんなもんか」


 ゲームの中だから多少の美化は必要だろう。


「それで、ここは恐らく――あっ、出た」


 推測しようとしたところで、目の前に大きめのウィンドウが現れた。背面が透けていて薄っぺらい、ゲームらしいウィンドウだ。

 それにはこう表示された。


『ようこそアビスダンジョン・オンラインへ』

『プレイヤー名:ハブサン』

『本名:羽生幸人はにゅうゆきと 様』

『ここはいわゆる、ゲームのスタート画面です』

『アバターの設定、データの編集、オプション設定が行えます』

『どうぞ、このウィンドウに触れてください』


 指示された通りに触れてみれば、ウィンドウが切り替わって各種設定ボタンが表示された。

 他の設定を弄る気はないので、一番上に表示されている『ゲームスタート』のボタンを押す。


『アバターを確認しています…………』

『アバターの確認が完了しました』

『事前にアバター編集を終えられているので、この場でのアバター編集はスキップが可能ですが、どうしますか?』

『スキップする』『アバター編集に入る』


「スキップで」


 アバターなら公式サイトで提供されたアバター編集アプリで作成済みだ。退院してすぐ自宅で作った。なんせ時間だけは有り余っていたからな。


『アバター編集をスキップします』

『最終確認』

『こちらのアバターで問題ありませんか?』


 横で、ゲームらしい光の粒子が形を作り、鏡が現れた。その鏡には俺のアバターが映っている。

 種族は沢山あるが、オーソドックスな人間。

 俺に少し似た顔の、真面目そうな青髪青目の青年だ。

 コスチュームは初期服の『冒険者の服』で、ブーツを履き、長袖長ズボンの上から初期防具『レザーアーマー』を着込んでいる。

 左腰には初期武器として『ショートソード』が鞘に入った状態でぶら下がっている。

 アバターに向かって手を振ってみると、その通りに動いた。


「……問題は無さそうだな。よし」


 ボタンを押して次に進める。


『最終確認終了』

『お疲れさまでした』

『これにて初期設定は完了となります』

『それではゲームをお楽しみください』


 ウィンドウと鏡が消え、最後に俺の体が光の粒子になって視界が真っ白になると、引っ張られるような感覚でどっかに飛ばされた。




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