第4.5話 「私のやるべきことはこれで終わりだ。さらばだプレイヤー諸君、良きゲームライフを!!」
※カクヨムからの転載です。 覇気草より
あと、この第4.5話の配置は間違ってません。
意図的なものですのであしからず。
「大広間にいるおよそ一万人のプレイヤーと、収まりきらずに別空間で待機してもらっている残り九万人のプレイヤー諸君……こうして話すのは最初で最後になりそうだが、一応名乗っておこう」
ゲーム内最初の街、『ホープタウン』にある大広間。万を超えるプレイヤーが集められたその頭上に、ホログラムらしく半透明な巨人が立っている。
ローブで体を覆い、フードを被っている。特殊な処理をしているからかフードの中は真っ黒になっていて顔は見えない。
そんな巨人は一拍置いて、両手を広げた。
「……私はフィクサー、今回の騒動を引き起こした元凶だ。君たちの時間を使うのは惜しいから手短に話そう。まず、この時を以てここに宣言する。私フィクサーは、プレイヤー諸君の生命を掛けて協力型のデスゲームを開催する!」
誰もが驚くが、ざわめきは起きない。
それが分かっているかのように、フィクサーは淡々と続ける。
「もう気付いている者もいるかもしれないが、ログアウトボタンは私の手によって削除した。これから行われるのはゲームであってゲームではない。HPが無くなって死ねば、君たちは電脳世界に意識を移した状態でVR機器の接続を切られ、現実の体とおさらばし、意識は電子の海の中へ消えることになる。細かい説明はいらないだろう。単にこの世界での死が現実の死に直結している、とだけ覚えておいてくれ」
フィクサーの右手が動き、メニューが開かれてウィンドウが一つ表示され、回転してプレイヤーたちに向けられる。
「勿論、これはゲームだからクリア条件がある。深淵の第百階層を、誰でもいいから一人でも攻略することだ。そうすれば私は君たちの健闘を讃え、敗北を認め、プレイヤーのログアウトボタンを復活させることを約束しよう」
ウィンドウに書かれているのはクリア条件だ。
条件はただ一つ。
『深淵の第百階層を、誰でもいいから一人でも攻略すること』
「それと、現実の体の方は安心してくれて構わない。既にゲーム内の時間は可能な限り加速し、ここの一日は現実では一秒にも満たないようになっている。数百年の猶予はある計算だ。だが、あまりダラダラと攻略されても面白くない。だから強制終了までの期限を決める」
フィクサーは右手を前に出し、小指と薬指を折り曲げた。
「三年だ。今日からゲーム内時間の三年でデスゲームを強制終了し、全員死んでもらう。せいぜい頑張ることだ。フッフッフッフッフ……」
笑い終わったフィクサーを一息。
「……デスゲームの話は以上だ。これよりシステム変更を行う。死んだらそれっきりだというのを前提に、よりリアルに寄せる。激しく動けば息が上がって汗を流し、喉の渇きを感じるようになり、下着が脱げて……流石に排便はオミットしているが、尿意を感じ、定期的な排尿が必要になった。勿論、下着が脱げるということは男女での性行為も可能だ。また、痛覚の感度を良くした。一定値以上の痛みは出ないが、上限はかなり高めに設定しているから、大ダメージとなる攻撃をまともに受けないことをオススメする」
フィクサーはメニューを開き、そこからさらに管理者用のデバックらしきものを開いて色々と操作した。隠蔽処理されている為に、プレイヤーたちからは霞が掛かっているように見えて、何をやっているかは分からない。
「――これで良し。それと、別空間に待機しているプレイヤーたちはこの大広間に空きができ次第、転送されるようになっている。多少行動に遅れを生じさせてしまうのは申し訳ない。お詫びに、序盤で手に入る装備をランダムで配布しよう。待機時間の長さに応じて配布する装備は増やしておく。最後に、デスゲームが始まるまでの間をチュートリアルとし、全プレイヤーのステータスをリセットする。さらにアバターを十代から三十代までの年齢で固定し、それ以外を完全なランダムとして再編集する。名前については一度文字化けさせ、ネーム変更チケットを一枚配布とする」
フィクサーは、なお、と続けた。
「ゲームを簡単にクリアされたら悔しいので、私は実力のあるプレイヤーをまともに戦わせるつもりはない。こちらの用意したAIの判定で強者認定された者は、強制的に種族を本来無かった“妖精”に固定とする。……では、始めよう!」
新しく出たウィンドウがポチッと押されるとプレイヤーたちが一斉に光り始め、アバターが再編集された。
その最中、フィクサーは徐々に消えながら高らかに言った。
「私のやるべきことはこれで終わりだ。さらばだプレイヤー諸君、良きゲームライフを!!」




