第14話 「オラァッ!」
「それでフィーア、『地母神の欠片』は私に使わせてくれるの~?」
「わたくしが使ってもメリットは多くありませんし、むしろお願いしたいくらいですわ」
メニューを開いてインベントリから『地母神の欠片』を実体化し、親指サイズの小さな光の破片を私に差し出してくれる。
「使いなさい。当初の想定と違って早くに目立ってしまいますが……まぁ、黒幕が目立つ行動を取るとは誰も思わないでしょうし、これはこれで悪くありませんわ」
「じゃあ遠慮なく~」
抱えるように受け取ると、視界の中に確認メッセージが出た。
ユニークアイテム『地母神の欠片』を使用しますか?
はい
いいえ
はい、で!
心の中で答えるとちゃんと入力され、欠片が光の粒子になると私の体に吸収された。
ピコン! と脳内で音が響いてメッセージが表示された。
『おめでとうございます』
『ユニークスキル【地母神の祝福】を習得しました』
「ん、習得出来たよ~」
「くひひ、スキルの詳細を確認しているといいですわ。驚きますわよ」
ほう、そこまで凄いのか。
期待を胸にメニューからスキルの詳細を開く。
ユニークスキル【地母神の祝福】
分類:パッシブスキル
・サイズ差補正無視
・全状態異常無効
・部位欠損耐性(完全)
・反動軽減(完全)
・復活(一日1回)
・神秘バリア付与(大)
・ダメージ軽減(大)
・HP自動回復(中)
・MP自動回復(中)
・HP強化(大)
・MP強化(大)
・防御力強化(大)
・打撃攻撃強化(絶大)
・斬撃攻撃弱化(絶大)
・刺突攻撃弱化(絶大)
・土属性魔法強化(絶大)
「なんじゃこりゃあっ!?」
「くひひひひ、凄いでしょう! まさに神の祝福に相応しい効果ですわ!!」
「確かに凄いけど、これ若干呪いも含まれてない!?」
「あぁ、斬撃と刺突が使い物にならなくなりますわね。まぁいいじゃありませんの。殴れば」
「そうだけどさぁ……なんかMPとか魔法とかあるんだけど?」
いつのまにかHPとSTバーの下に、新しくMPバーが追加されてるし。
「それは第三階層の街で情報が解禁され、誰もが手に入れられるものですわ。ヘルプのステータスに関する項目にも“魔力”が追加されていますわよ」
魔力……うわっ、ほんとに追加されてる!
調べてみたら本当に項目が一つ増えていた。
どうやらこの魔力、魔法を行使した時の効果量に関係するらしい。
魔法のやり方は両手を組んで祈るポーズを取り、発動時にスキル名を声に出すだけ。魔法用の杖などは別個にポーズが存在する。
魔法発動までは消費するMPに応じてチャージが必要であり、ちょっとでも姿勢を崩すとやり直しとなる。しかもチャージ中は体が光ってとても目立つようになるんだとか。
MPはST同様に自然回復するみたいだが、どうやらかなり遅いらしい。スキル無しだと一時間で一割程度の回復量となっている。
黒幕を信じるんじゃなかった。もう少しのらりくらりとやってれば魔法使いとして楽できたのに。
……まぁ、過ぎたものは仕方ない。
折角ユニークスキルを貰ったのだから、どうせなら極めてやろう。
「フィーア、どれだけやれるか確かめてもいい~?」
「構いませんわよ。鉱石も予定の数は採れていますし、レベル上げを兼ねて戦いながら帰りましょう」
というわけで採掘場所から離れ、泥沼の中を移動。フィーアは足を取られて移動に苦労しているが、私は肩に座っているだけでいいので楽ちんだ。
おっ、魔物発見!
泥沼の中をピョンピョン跳ねるのは、泥を弾く粘液を纏った黒いカエル。大きさはバスケットボールぐらいだが、妖精になっている今の私からすれば、それでも怪物並みの大きさだ。
飛んで近づけば名前が表示された。『ドッカエル』というらしい。
動きが止まり、横長の瞳孔の目と私の目が合った。
――あっ、これ襲ってくるな。
私を羽虫と認識でもしたのだろう、ジッと見つめて動かない。警戒しつつドッカエルの周りを飛んでみれば、もそもそとその場で方向を少し変えて正面に捉え続けてくる。
フィーアの方を見れば、笑顔で手を振ってくれた。笑顔で振り返しておく。
……さて、ゆっくり近づいてみるか。
少しずつ距離を近づけて攻撃を誘ってみる。
まだ……まだ……――いまっ!
ドッカエルの口が開いて舌が伸びてきた。かなりの速さだが完璧なタイミングで回避成功。一気に近づき、もう一度伸びてきた舌を回避しつつ拳を構える。
「オラァッ!」
気合を入れた声と一緒に、ドッカエルをぶん殴る。
瞬間、ドッカエルがサッカーボールのように吹っ飛んで泥の上を何度も跳ね、岩に激突して動かなくなった。そのままHPがゼロになって消滅した。
レベルが上がって5になった。
リザルトで肉が手に入った。が、重量過多でパーティーメンバーであるフィーアに自動転送された。
拍手が聞こえる。
粘液まみれの手を服で拭きつつ振り向けばフィーアが拍手していた。
「素晴らしいですわね。流石は強者認定で妖精になったプレイヤーですわ」
「これくらい普通でしょ~。それより、このユニークスキル強力すぎない?」
「ユニークスキルですので。これなら問題無く戦えますわね」
「そうだね~」
移動を再開。道中に出てきたドッカエルを殴って倒して行く。飛んでフィーアより先にいると、大人しいと思っていたマナズも襲い掛かってきたので殴って倒す。
「あのさフィーア、ちょっとしつも~ん」
「はいなんでしょう?」
「小型の魔物に襲われるのはなんで~?」
「あっ、そういえば言っていませんでしたわね。小型の魔物にとって普通のプレイヤーは大きすぎるので獲物と認識しませんが、妖精プレイヤーは小さいので獲物と認識されますの」
「へぇ~」
つまり、行きで襲われなかったのはフィーアにくっついていたからか。
「あと、小型の魔物は倒しても経験値が少ないのですが、妖精プレイヤーに限り経験値は多めに貰えますわ」
「一種の救済措置ってやつかな~?」
「ですわ。妖精が最初から普通の魔物を倒すなんて、まず無理ですもの」
だろうね。
妖精プレイヤーが魔法を使えるようになっても、魔法だけで魔物を倒せるかと言えば……多分、無理だろうな。
序盤はそもそも魔法の威力が小さいし、MP回復アイテムなんてジャブジャブ使えない。
せいぜいパーティーを組んで一発攻撃を入れて、経験値の分配を貰うくらいだろう。
その後、私たちは魔物を倒しながら帰還した。
レベルが上がって6になった。
道中で何人かのプレイヤーが私の戦いを見ていたが、みんな驚愕するかドン引きしていた。




