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黒幕と歩むデスゲーム  作者: 覇気草
一章 デスゲーム初日

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第9話 「でも、いい隠し要素でしょう?」


 ……これあと、どれくらい飛べばいいんだ?


 私はかれこれ三十分くらい、ずっと飛んでは休憩して飛んでは休憩してを繰り返している。

 レベルは上がって現在4。

 濡れた衣服は乾いたが、また汗でベトベトだ。

 少し離れた場所ではフィーアが走っているが、集中力が途切れたのかフラフラしている。

 数えるのを止めた何度目かの着地――ピコン! という音が脳内で響いて小さなメッセージが表示された。


『パッシブスキル【ランナーズハイ】を習得しました』


「はぁ……やっとかぁ……」


 疲れているが、この苦行から解放された嬉しさに両手を上げてガッツポーズ!

 STが回復したので悠々と飛んで移動し、川で水分補給。適度な大きさの石に座って休憩しつつ、メニューを開いて早速スキルを確認。


 パッシブスキル【ランナーズハイ】

・ST消費速度軽減(小)

・ST回復速度上昇(小)


「……走るだけで取れるスキルなら、こんなもんか」


 メニューを閉じ、汗でベタベタして不快なので川に入って水浴びをする。そうしているとフィーアが戻って来て、倒れるように川に顔をつけ、すぐに顔を上げた。


「ふぅ……スキル、習得出来ましたわっ!」

「おつかれ~」

「えぇお疲れ様! 誰ですかこんな苦行レベルの習得難易度にしたのは!? ……わたくしですわ!」


 自分でボケツッコミをしたフィーアは、ばしゃんっ、と水面を叩いた。


 おーおー、相当参ってるね~。


「今からでも管理者権限とやらで、チートでも使う?」

「この程度のことで使いませんわ。それより小腹が空いてきましたし、何か食べましょう」

「それならアカマルの実を幾つか採取してあるよ~」

「……それって、デスゲームが始まる前ですわよね?」

「そうだよ~」

「なら、消えてますわ、そのアカマルの実」

「えっ……あっ、ほんとだ」


 メニューを開いてインベントリを確認したが、中は空っぽだった。


「じゃあ採りに行ってくるね~」

「お待ちなさい」


 飛んで行こうとしたら呼び止められ、空中で急停止。


「仕込んでいた隠し要素を紹介出来ますので、一緒に向かいましょう」

「あいよ~」

「でもその前に、水浴びさせてくださいまし」


 フィーアも汗が不快だったらしい。防具とマント、ブーツをデータ化してインベントリに仕舞い、衣服ごと川に入った。

 ……数分後。


「お待たせいたしました」

「休憩出来たからいいよ~」


 数分して川から上がった彼女はそのままの状態で移動を始めたので、私は傍を飛んで付いて行った。

 近くのアカマルの実が生る木に到着。


「で、隠し要素って何~?」

「くひひ、それは……これですわ」


 フィーアが木の幹に開いている小さな穴を指さした。


「……この穴が、隠し要素?」

「えぇ、妖精だけが採取可能なアイテムが……だいたい10%の確率で取れますわ」


 まだ第一階層なのに確率低いな。

 けど、穴をよく見ると……妖精なら中に入り込めそうな大きさだ。


「んーまぁ、行ってきまーす」

「くひひ、行ってらっしゃい」


 笑ってるし、なーんか嫌な予感がするな。


 不安を胸に穴の中へ入る。穴の中は当然真っ暗だが、妖精の羽は飛行状態だと青白く光るので照明代わりになる。

四つん這いの状態でテクテク進めば、穴は直角に上向きに伸びていた。


 ん?

 なんか……いる?


 飛行を利用しつつ慎重に登って行けば、薄っすらとだが何かの姿が見えた。さらに近づいて光が届く範囲に入れて、初めて正体が分かった。


 うわ芋虫! でっっっか!

 やっべ気付かれた!?

 ちょっ、く、来るなあああああああああああ!!


 丸々と太った飴色の芋虫『メープルワーム』が、頭をこっちに向けてもぞもぞもと近づいて来た。丸々と太っていて通路にみっちりだ。

 私は虫が嫌いだし、キモいし、大嫌いだ。近づきたくもない。でも、この狭い中で素早くバックで逃げられないのは分かっている。食われる。恐い。

 だから――


「うらあッ!」


 叫んで気合を入れて嫌悪感と恐怖を誤魔化し、こっちから近づいて全力で殴った。

 芋虫は強力な顎で噛みつこうとしてくるが、口は小さく、連続で殴ることで寄せ付けない。

 殴り続けているとHPがゼロになって消滅した。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……恐いわコンチクショウ!」


 マジで危なかった。丁度STが切れた。あと少しで食われていた。

 フィーアの奴、こうなることが分かってて何の情報も出さずに行かせやがったな! クソが。


「後で一発殴ってやる。……で、何が手に入った?」


 さっきから表示されているメッセージを確認。


『以下のアイテムを手に入れました』

・メイプルワームの体液×1


「いらねぇ。奥には何が……?」


 ある程度落ち着いたので慎重に進めば、メイプルワームがいた場所はちょっと広い空洞になっていた。

 そして、そこには蜂蜜っぽい丸い飴のようなものが一つ転がっていた。


「これが10%のアイテム……か?」


 タッチしてメッセージを開いて名前を確認。『メイプルワームキャンディ』というらしい。詳細を確認。


 メイプルワームキャンディ

 食べると空腹度を回復する。

 パッシブスキル【成長期】を習得する。


「成長期……経験値効率が良くなったりするのかな? とりあえずインベントリに――仕舞えない!?」


 触ってデータ化しようとしたが、視界に『重量過多』と表示されてインベントリに仕舞えない。何度やっても同じ。


「運ぶしかないか」


 仕方ないのでゴロゴロ転がして運ぶ。入ってきた穴に落とせば、丁度すっぽり入って勝手に転がって出た。遅れて私も穴から出れば、フィーアがキャンディを受け止めた両手をそのままにして待っていてくれていた。

 ので、そこに着地。


「お疲れさまですわ」

「酷い目に遭った」

「でも、いい隠し要素でしょう?」

「……まぁ、ドッキリとしてはいいと思う」


 さて、演技を再開して……フィーア、覚悟!


「それはそれとして~……一発殴るね」

「えっ」


 ぽかんとする彼女の顔まで飛んで、左目に向けて右ストレートをぶちかます!


「目がああああああああああああ!」

「これに懲りたら、どういうことが起こるのか、最低限は教えてね~」


 視界の左上の端に表示されているフィーアのHPが、ちょこっと減った。




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