13 私の幼なじみ
第二章 始まります☺️
『ねぇ、そろそろパーティーに顔を出さない?』
ベッドに寝転んだセティアが何度目かの誘い文句を口にした。
『だから行かないって言ってるでしょう?』
『まさか、そのロアスって人のことを待つつもり?』
『べ、別にそういうわけじゃ・・・』
『男は彼だけじゃないんだから、戻って来るかもわからない人を待つより新しい出会いを求めたらどう?あなたが18歳でラビナスに行っちゃって、どれだけの男が膝から崩れ落ちたと思ってるのよ』
『ふふっ・・・大袈裟ね』
『本当よ?私の弟なんて一週間もベッドから出て来なかったんだから』
セティアは私の幼なじみで、物心のついた頃から彼女と彼女の2歳年下の弟とはずっと一緒に育ってきた。
『ライオネルは元気?』
『えぇ。今はお父様から果樹園を任されているわ』
『そう。立派になったのね』
『今度うちのディナーに招待するわ。両親も会いたがっているから』
『そうね・・・』
私もセティアのご両親には一度ご挨拶に行きたいと思っていたけど・・・。
『じゃあ日にちが決まったら連絡するわね』
『ちょ、ちょっと』
『私今からデートなのよ。じゃあね〜』
『もう!』
いつも自分の言いたいことだけ言って帰るんだから・・・。
でもたまには気分転換をするのもいいかもしれないわね。
家にいてもついロアス様のことを考えてしまうから・・・。
数日後ーーー
『まぁ!リナちゃんいらっしゃい!』
『よく来たね!ずいぶん久しぶりじゃないか』
セティアのお母様は相変わらずお綺麗ね。
お父様は少しふくよかになられたかしら?
『ご無沙汰しております。お元気でしたか?』
『えぇ。元気過ぎるくらいよ。さぁさぁ、寒かったでしょう?すぐに食事にしましょう』
『ありがとうございます』
広間に通されると、食卓には豪勢なお料理と素敵なキャンドルが並べられていた。
『今夜はお招き頂きありがとうございます。これは父から、心ばかりの品です』
『やだもう。そんな気を使わなくてもいいのに!お父様によろしく言っておいてね?』
『はい。またうちにもお越しください』
『ぜひ伺わせてもらうわ。さぁ、リナちゃんはここに座ってちょうだい』
『はい』
着席すると、廊下をバタバタと走る音が聞こえてきた。
『リナさん!』
『ライオネル?』
『お久しぶりです!』
広間に入ってきた男性は私の記憶にあるライオネルとはだいぶ違っていた。
彼はご両親とセティアと同じ綺麗なブロンドをしていて、中性的で整った顔立ちをしているのだけれど、久しぶりに見る彼は体を鍛えているのかずいぶん男らしくなっていた。
背丈は私よりも頭ひとつ分ほど高くて、ロアス様と変わらないように見えた。
『見違えたわね。紳士らしくなってびっくりしたわ』
『そうですか??リナさんは相変わらずお綺麗ですね』
『ふふっ。ありがとう』
『ライオネルも早く座りなさい』
『はい』
ライオネルが私の隣の席に座ると、正面に座るセティアがなぜかニヤつきだした。
『リナ、ちょっと聞いてよ!ライオネルったらこの日のためにスーツを新調したのよ?』
『ちょ、姉さんっ!わざわざリナさんに言うことじゃないでしょう!』
『ちょっとセティア!無粋なことを言うのはよしなさいよ!』
『ゴ、ゴホン・・・まぁまずは食事にしようじゃないか』
『そ、そうしましょう。リナさん、今のは聞き流してくださいね。ははは』
『ふふっ』
セティアのご家族はいつも騒がしくて楽しいわね。
それからセティアのお父様が作った葡萄酒で乾杯をして、美味しいお料理をたくさんいただいた。
ディナーも終盤に差し掛かると、みんな酔いが回ったのか顔が紅潮して声も大きくなっていた。
『ほんと、リナと離縁するなんて何様のつもりなのよ!そいつ連れて来なさいよ!ボッコボコにしてやるから!』
『ほんとよ!馬車にくくりつけて引きずり回さなきゃ気が済まないわよ!ねぇ、あなた!』
『そうだな!葡萄酒の樽に入れて熟成させてやるからそいつを連れて来なさい!』
セティアもおば様もおじ様もすごい剣幕で怒っていた。
すると、それを呆れた様子で見ていたライオネルが私の肩に触れた。
『リナさん、葡萄酒が切れたので一緒に取りに行きませんか?リナさんが選んでください』
『え?私が選んでもいいの?』
『もちろん。お客様ですから』
『じゃあ・・・行きましょうか』
キッチンの奥にある扉を開けると、石造りの階段が地下へと続いていた。
『暗いので足元に気を付けてください』
『えぇ。ここを降りるのは初めてだわ。きゃあっ』
『大丈夫ですか??』
階段を踏み外しそうになったところをライオネルが抱き止めてくれた。
『ご、ごめんなさい』
慌てて体を離そうとすると、ライオネルがグッと私を抱き寄せた。
『ライオネル?』
『みんなは離縁されたことに怒ってましたけど・・・僕はリナさんがモンテタールに帰って来てくれて嬉しいです。もう会えないかと思ってましたから・・・』
『あ、ありがとう。私もまたあなたに会えて嬉しいわ』
『えっと、そういう意味じゃなくて』
『え?』
『いえ、なんでもないです』
地下の両側の壁には数百本のボトルが保管されていた。
ライオネルはおすすめのボトルを数本開けると、グラスに注いでテイスティングをさせてくれた。
『これが一番美味しいわ』
『じゃあそれにしましょう。帰りに一本お土産として持って帰ってください』
『いいの?』
『もちろん。これを飲む時は僕のことを思い出してくださいね?』
『ふふっ。わかったわ』
ライオネルは相変わらず可愛いわね。
それから広間に戻って飲み直すと、あっという間に深夜になってしまった。
『リナ、今日は泊まっていくわよね?』
『え?でもレイモンドさんが応接室で待ってくれているから・・・』
『あぁ、それならだいぶ前に帰ってもらったわ』
『ぇえ!?』
『あなたたちが地下に行ってる間にね。ご両親にも伝えておいてって言ったから大丈夫よ』
『そ、そんな勝手なこと・・・』
『たまにはいいじゃない。明日の朝ライオネルに送らせるから。ね?いいでしょ?』
いいでしょって、もうそうするしかないじゃないの・・・。
こうして私はセティアの屋敷に泊まることになったのだった。




