お兄様大好き
今日はあの迷惑をかけてしまった日以来の訪問だ。お兄様にはあらかじめ連絡を取っていて、お昼を一緒に食べながら話をしようと言う事になっていた。しかし、
(魔王城のご飯って…………あの生焼けコゲコゲ肉とかなんじゃぁ……美味しく食べるフリできるか不安になってきたよぉ……)
そうなのだ、あの初潜入の日に食べたなんとも言い難いクソまずい料理を思い出したのだ。だけども、お兄様と食事をする事自体が久しぶりなので気づかないフリをしていたが、直前で少し怖気付いてしまった。
(ううん、ダメダメ、マイナス思考は良くない、、それにお兄様に喜んでもらう為にスペシャルな物を持ってきたんだから!!それで口直しすれば良いもんね)
そう、私はお兄様の為に、お兄様の大好きな苺のショートケーキのいちごマシマシスペシャルデラックスケーキを特注で作ってもらっていた。お兄様の喜ぶ顔が目に浮かぶ。天使さえ嫉妬するあの微笑みで私の頭を撫でてくれて……そして次に抱っこしてくれて…………さらに、、、
そこからどんどん妄想が捗ってしまい、終始デレデレな顔で朝食を食べていると、お母様から「その顔も可愛いけれど、人前ではやめた方が良いかもしれないわね?」とやんわり注意された。お母様でなければ相当ドン引かれていた事だろう…………もう少し貴族らしく表情筋を鍛えた方が良いかもしれない。
そしていよいよお兄様の待つ魔王城へ向かう。
「お兄様、お久しぶりです。今日はたくさんお話ししましょう!!」
元気よくレオナルドに抱きついた。魔王がそれを見て「なっ!近いぞ!近すぎるぞ」と何故か赤い顔をしていたが、兄妹水入らずの邪魔はしないでほしい。
「アデルよく来てくれたね、今日は少しだけ進化した魔王城のご飯を食べてみてほしくて、アデルを昼食に呼んだんだよ。楽しみにしててね」
お兄様が天使の微笑みで語りかける。(うぅ……鼻血が出そう……眩しすぎるよぉ、、)そんな事を思って居ると、すぐ近くに居た魔王も何でか真っ赤になり鼻を抑えている。
(??? もしや、、お兄様の魅力にやっと気づいたのでは??遅すぎやしないか?ってか、お兄様とずっと居られる魔王羨ましいーー!許すまじ!もう!今日はとことんお兄様に甘えてやる!!)
魔王に謎の対抗心を燃やしたアデレイドはレオナルドに頭をグリグリと押し付け、その後上目遣いで「お兄様大好き」とはにかんで言った。レオナルドはその言葉と仕草に笑みを深めキラキラのエフェクトが見えるのではないかと言うくらいに全身から愛おしいという眼差しの微笑みを浮かべる。アデレイドはその微笑みに一瞬気絶しかけた。
(て、て、天使、、いや、、もう神!!GOD!奇跡!………お兄様最高、、、)
「はぁ、僕の可愛い妹とずっと一緒に居たいなぁ…………なんでここに居なくちゃいけないんだ、、はぁ、、しょうがないか……まだ統率できてないもんね。アデル、アデルが足りないから僕にもう少し充電させてくれる?」
コテンッと小首を傾げて拗ねた様な顔で「お願い」とアデレイドを見つめる。美男子の拗ねた顔はもちろんご褒美でしかない。アデレイドはさっきよりももっと強くぎゅうっと抱きつき、お兄様の大好きポイントを永遠と話すのであった。
そんなイチャイチャを見て魔王はモヤモヤだけが募っていった。しかし、どうする事も出来ずにしばらく眺めていたが、30分近く続いたのでとうとう我慢できなくなり二人を強制的に引き剥がしたのであった。
「お前達なんなのじゃ!!!近いし!あの甘々な雰囲気!おかしいのじゃ!!そして長いのじゃ!!妾も居るのに!妾も居るのにぃぃ!!それに、大魔王様は妾にそんな事してくれた事ないじゃろ!!今後は妾にもギュッとする事を望むのじゃ!!」
苦情と共に、魔王は、よほどレオナルドにハグされたかったのか、自分の要望もさらっと入れているのであった。しかし、ハグはダメとアデレイドに冷めた目で冷静に却下され、落ち込むのだった。
そしていよいよ昼食を食べる事になったのだが、
アデレイドはとても驚いた。前回の生焼けコゲコゲ肉ではなく、キチンと美味しそうなサラダからでてきて、メインディッシュもミディアムレアな綺麗なお肉が出てきたのだ。デザートは残念ながら出てこなかったが、前回が前回なだけにすごい進化の仕方にビックリしてお兄様の顔を何度も見返してしまった。その度にお兄様は「もうちょっとで完璧になるんだけど、これも美味しいでしょ?」と可愛く聞いてくる。そんな事を言われたらうんうんうんうんと何度も頷いてしまう。お兄様最高!一択なのである。
「お兄様、実はお土産を持ってきたんです。じゃじゃーん、スペシャルデラックスショートケーキです!!後でゆっくり食べてくださいね」
特注のショートケーキをお兄様の前に出す。お兄様は口を手で押さえて「信じられない、、いちごもいっぱい……」と目をキラキラさせている。よく見ると物理的にも涙目になっている様だ。半泣きのお兄様の顔も最&高!!グッとくるね!!そして、例によって、こっそりと写真を撮った事は内緒である。
「所で、話があるんだよね?もしかしてまた国王に無理難題を押し付けられたのかい?もしそうなら、そんな国なら滅んだほうが良いのかも……?だよね…………」
お兄様が悪い顔をしている。私は慌てて今までの経緯を説明した。全ての話を終えた後、お兄様はおいでと膝の上にアデレイドを乗せて頭を撫で始めた。私は嬉しくてお兄様にもたれ掛かりながら存分にお兄様成分を補充する事にした。
「アデルは可愛いから新しい学校でまた目立っちゃうと思うから気をつけてね?今度は知らない国に縛られてしまわない様にしないとね。
それと、学校が楽しすぎて僕の事なんか忘れちゃうんじゃ…………って心配なんだ。もちろんアデルが楽しい事をするのは大賛成だけど、僕から離れていってしまうのは少し寂しいな……なんてね、僕の我儘だね」
頭を撫でながら泣きそうな顔で話すレオナルド。胸がギュッと締め付けられる。お兄様の事を忘れる訳など無いのにお兄様を不安にさせてしまう自分がどうしようもなくダメに思えてくる。何か良い方法は無いかと考えた。そして、思いついた。お兄様に毎月絶対に会いにくるというのはどうだろうか。自分も嬉しいし、お兄様の憂いも晴れるのでは?提案してみると、みるみるお兄様の顔が緩まり「嬉しい」といって頭や顔にキスの雨を降らせた。私は茹蛸で倒れる寸前なくらい熱が上がる。
「し、刺激が強い…………」
アデレイドは白目を剥きかけた。
「グッ……ずるいのじゃ、羨ましいのじゃ……だけど見てるこっちが照れてしまう、勘弁してほしいのじゃ」
魔王は両手で目を隠してはいるが、指の隙間からバッチリとレオナルドがアデレイドを甘やかしている?姿をみていた。
「真っ赤なアデルも可愛いね。僕だけの妹、大好きだよ一生一緒だからね」
目の奥が怪しくギラリと揺らめいた様な気がした。が、すぐにいつものレオナルドの優しい眼差しに戻る。
(はぁ、ヤンデレ気味なお兄様も素敵だな、私もお兄様がお兄様で良かった。だけど今日は一段とお兄様が刺激的すぎる……ずっとここに居たいけど、そろそろ帰らなきゃ……甘やかされすぎて帰りたくなくなってしまいそう、、)
そう思い、寂しがるお兄様との癒しの時間を切り上げて泣く泣く自宅へと戻る。
(はぁ、今日は沢山お兄様に甘えちゃったなぁ……それに、お兄様コレクションも沢山追加できたし、ムフフフ、、大漁大漁)
誰も部屋にいないのをいい事にだらしない顔でコレクションを一人眺めてニヤつくアデレイド。その後メイドのニーアが扉を叩くまで続いたのであった。
そして数日が過ぎ、いよいよアデレイドがドミノレイル王国へ旅立つ日がやってきた。朝からこの屋敷に携わる色んな人達からエールを送られる。何かしらぬいぐるみや小さな小物など、プレゼントなども沢山もらった。この世界に、この家に生まれてきて、自分は本当に幸せ者だと改めて思った。
お父様とお母様にも朝から沢山ハグやキスをもらう。二人とも少し涙ぐんでいるが、娘の成長をどこか楽しんでいる様にも見える。暫しの別れを惜しんでいると、執事がドアを叩いて慌てて入ってきた。
「お嬢さま、表の馬車にお嬢様のお友達がいらしています。3名の方は身元がハッキリしているのですが、、、もう1人の方の身元がハッキリしないので縛り上げたのですが、まさかとは思いますが万が一、本っっっ当にお知り合いでしたら困るので確認しに参りました。ジェイクと名乗る薄茶色の髪の毛で、タレ目の子供です。…………まさかとは思いますが、平民とはお知り合いでは無いですよね?」
澄ました顔で執事はアデレイドに言い放つ。
(…………縛り上げられてる!!??)
衝撃でアデレイドは固まった。それを見て執事は「やはり嘘だったか…………万死に値する」と物騒に誰にも聞こえない声で呟いていたのであった…………。




