選択肢は色々、挨拶も色々
「ふんふんふーん、ふーんふーふふーん」
アデレイドは鼻歌を歌いながら上機嫌に庭の花を見ながらお兄様コレクションを眺めていた。お兄様コレクションとは、アデレイドが集めた隠し撮りを含めたお兄様の写真集の事だ。
国王への報告と言う息の詰まる行事から解放され、晴れて自由の身になったアデレイド。ストレスが凄かったので、お兄様コレクションで癒しの時間を過ごしていたのだ。
(はぁ、先生とお父様達のおかげで国から囲われるのをなんとか回避できたみたい。これからは魔法の勉強は厳重に隠しながらしなくちゃね、、それと、色んな国にもたくさん行ったみたいなぁ〜、もしかしたら、日本に似た国の文化もどこかにあるかもしれないよね?探してみるのも有りかもしれない!!)
これからの未来を楽しく想像していると、お母様がゆっくりとこちらに歩いてくるのが見えた。アデレイドは椅子から立ち上がり、小走りでお母様の元まで走り身体に飛び込んだ。
「お母様お散歩ですか?私もご一緒して良いですか?」
ルーシーは微笑んで「一緒に行きましょう」とアデレイドと手を繋いだ。花の知識が豊富なお母様に花の特徴を教えてもらいながら庭を散策する。途中庭のガゼボで休憩する事になり、紅茶を飲みながらゆっくりしていると、心配そうな瞳を向けながらアデレイドの手を握り、お母様が話し始めた。
「アデル、今更だけれども学校の事本当に良かったの?その事がずっと気に掛かっていたの…………お友達も沢山いたでしょう?なのに冒険者をするかもなんて言ってお母様ビックリしたわよ?冒険者が悪いわけではないけれども、今しかできないのは学校に通う事なんじゃ無いかしら?」
真剣な眼差しで見つめられ、自分の心の中が見透かされているのでは無いかと思った。自分の選んだ道に後悔はしてなかったが、学校を好きで辞めた訳ではない。冒険者も楽しそうだが、確かに今しか学生生活を送る事が出来ない。しかし、もう決めたのだ。なので、お母様を心配させない為笑顔で応える。
「学校での友達との思い出は作れなくなったけど、学校以外でも遊ぶ事は出来ると思うので後悔はしてません。私の事気に掛けてくれてありがとうございます。その気持ちだけで私は幸せな気持ちになりました」
エヘヘと笑顔で言うが、お母様は悲しそうな顔をする。そして、急にお母様がアデレイドを抱きしめた。
「アデル!やっぱり貴方にはもっと今しかできない事をさせてあげたいわ!!学校に通えるってなったら通いたい?」
唐突にされた質問につい本音がポロリと出てしまう。
「通いたい、で、す」
ハッとして「あっ、いや、でも、あの〜」とすぐに言葉を誤魔化す。ただお母様は騙されてくれなかった。
「ふふっ私の娘は中々強情ね、でも、お母様に良い考えが一つあるの。答えを出すのはそれを聞いてからでも遅く無いんじゃないかしら?」
可愛くウィンクをしてアデレイドを誘惑する。二人の子供を産んだとは思えない程、お茶目で可愛いい。お父様がお母様に弱い理由が分かった気がした。しかし、お母様の良い考えとは何か検討もつかない。アデレイドは首を傾げてお母様を見つめた。
「他国の学校に通うのはどうかしら?調べてみたら魔力がない人でも勉学やマナー、生活に必要な知識を学ぶ学校もあるそうよ?魔力に関してはレイシス様も居るから問題ないし、他の事をお友達と楽しく学べるのは良いんじゃないかしら?ただ、他国だから寮での生活になってしまってお母様は寂しいけれど、アデルが行きたいと言うのなら応援するわよ?どうかしら?」
(ほぇ?学校に通えるかもしれないの?って、寮生活!!なにそれ、めっちゃ楽しそうーーー)
「おっ、お母様、そんな事良いんでしょうか?とっても素敵な提案で私夢みたいです!!」
興奮してお母様と抱き合っている手を強く握ってしまう。お母様は私の背中をポンポンとあやしながら「喜んでくれて嬉しいわ」と優しい声で語りかけてくれる。
お母様から渡された資料を眺めながら、どんな学科があるのか読み進める。
騎士科 冒険科 花嫁科 商業科 薬草科
調理科 普通科 グローバル科 歴史科
魔法科 …………etc.
(こんなに色々な学科に分かれてるなら注目されずに学べるかもしれない!!と言うか、冒険科??何を学ぶんだろ魔物討伐とかもあるのかな?やってみたいけど、流石に魔力がない設定で冒険者は難しいかな?それに冒険科は女子少なそう……せっかく新しい学校なら目立たず楽しい普通の学生を目指したいし………うーん)
学科は掛け持ちもありと書いてある。アデレイドは魔法科には通えないが、それ以外ならばどれでも授業を受けられる。自分の可能性を試したくて仕方ないが、それでは普通の令嬢ではなく目立ってしまうかもしれない…………。悩んだ、、しかし、授業の内容が気になりすぎて結局は魔法科以外の気になる科を全てを体験して、掛け持ちしてみる事にした。体験期間中に授業が合わなければ再度カリキュラムを組み直す事ができるらしい。なんと素晴らしい学校なのか!
その後、学校資料を読み漁り色々妄想に耽っていたアデレイドに学校の件でお父様と、お母様から呼び出され応接室で話をする事になった。
「アデル、新しい学校は色々な国の人達が集まるドミノレイル王国の学校の入学を進めているけれども、どうかな?寮に住む事になるから大変だとは思うけれど覚悟は決まったかな?」
応接室でお父様が心配そうに私に問いかける。お父様の隣で、お母様も私を見つめている。一人での寮暮らしは前世での一人暮らしで慣れているから大丈夫だとは思う。むしろワクワクの方が強くて、お父様とお母様に心配と手間をかけさせてしまった分、申し訳なく思ってしまう。
そして、アデレイドは自分が今後学科を体験しながら決める事や資料を読んで気になった事などを話した。入学の時期は制服や身の回りのものを揃えたり、移動の日数など含めて一か月はかかるとの事だった。その限られた時間の中で自分の身支度と、友達への連絡をする事にした。
まずはいつも通り連絡石でみんなに話しかけてみる。
「もしもーーし、アデルです。みんな聞こえる??」
つい、電話感覚でもしもしと話しかけてしまう。この世界ではもしもしは通じないのに…………それにいち早く答えたのがローズだった。
「もしもーし?ってどこの国の言葉なのかしら?…………それよりも!アデル、元気なの?あなた大変な事になってますわよね?ずっとあなたからの連絡を待ってましたのよ!!」
いつもの可愛いローズの声を聞いてアデレイドは嬉しさを爆発させる。
「ローーーーズ!!色々あったけど、元気だよ!!本当はみんなと会って話がしたかったんだけど、これからの準備が忙しくなるから手短に話すけど、落ち着いたらまた四人で集まりたいな!」
寂しさを隠しながらアデレイドが話すと、マークがすかさず話し始める。
「俺だってアデルに会いたい!アデルの笑顔を最近全然見てないから元気出ないぜ…………それに、準備ってなんの準備してるんだ?落ち着いたらまた会いたいって、、なんだかまだ学校に来れなそうって事なのか?俺達にもなんでも相談してくれよ!!」
マークが自分たちにも相談して欲しいと切実に叫ぶ。その言葉を聞いてアデレイドは気まずくなる。もう色々自分で決めた後だから相談をしようにも事後報告になってしまう。「えっと…………」と、話を濁していると今度はディランが優しく語りかける。
「アデル、大丈夫だよ?多分色々あってアデルの周りで色々決まったんだと思うけど、僕たちにも教えて?後、また四人で会うなら夏の長期休暇とかなら誰かの別荘とかに遊びに行けるかもね。そうなるといいなぁ、、だめかな?」
相変わらず優しくて気遣いのできるディランの言葉に涙が出そうになった。しかも最後のディランのダメかな?の声がとっっっても可愛い声だったのだ………………凄く頼りになる男の子の可愛い一面…………そんなのを聞いたら、もう鼻血どころか、顔のパーツというパーツが蕩けてしまう。みんなに今のアデルの顔を見られたら絶対にドン引きされる。今、声だけのやり取りで助かったアデレイドであった。
しかし、ディランの可愛さで悶えていた為、無言(悶え)を勘違いしたディランが「難しいかな?ごめんね」と寂しげな声を上げた。アデルはハッと我に帰った。可愛い男の子を悲しませてしまった!自分は馬鹿だ!!
「ディラン、ごめんね?ディランの言葉が嬉しくてみんなと遊ぶ事を色々想像してたら黙っちゃってた。夏の長期休暇は皆んなと海とか山とかショッピングも沢山したいなぁ〜……………で、本題なんだけど……………………
と、本題の先輩の領地で魔人を退治した時から今の現状までの経緯を話した。3人ともそれぞれ違う反応で、ローズは泣き出してしまった。マークは王様に対して怒りを露わにした。ディランは少し落ち込んでいる様子だった。
「ごめんね、色々状況が目まぐるしく変わって、学校は辞める事になっちゃったけど、いつまでも私たちは友達だよ!また四人で話そう、皆んな大好き!」
と、アデルが言った後に通信が途切れてしまった。この連絡石の弱点は短時間しか連絡ができない事だった。ローズが泣いていたからか、他の人が連絡石を使ってまた通信を再開する事はなかった。一人一人がアデレイドとのしばしの別れを飲み込む時間が必要だったのもある。一生会えなくなる訳じゃないのはわかっているが、友達と学校で会えないのは辛いのだ…………さらにマークにとってアデレイドは好きな人だ。……学校で会えると思って居たからとても辛い。それぞれの想いが落ち着くのはもう少し時間がかかるだろう。
翌日、アデルは冒険者ギルドに来ていた。運が良ければジェイクに会えるかもしれないと思ったからである。しかし、ジェイクには会えず今回も前回同様手紙を渡してもらう事になった。ジェイクは冒険者としての先輩だし、大事な友達だ。海にだって一緒に行ったし、これからもまた冒険者としても一緒に旅だってしたい。次、ジェイクに再開したらきっとジェイクは呆れながらもおかえりってあのはにかんだ可愛い笑顔で言ってくれるだろうな、と想像しながらギルドを後にした。
最後は先生に報告をしに行く。今研究室にいるから来ていいよとの事だったので、遠慮なく瞬間移動で向かった。先生は魔石を作っていた。
「先生、お邪魔します。何の魔石を作ってるんですか?」
集中してるみたいで返事は返ってこなかった。まだ時間に余裕があったので椅子に座って先生を眺める事にした。いつもはにやけている口元は閉じている。薄くて綺麗な口元に形の良い鼻、肌もとても綺麗だ。
(先生って何歳なんだろう?きっとまだ若いよね?それなのにこんなに色々な魔法を使えて、天才で、それなのにまだまだ上を目指してる。私も先生みたいに好きな事を見つけてそれをずっと続けて成長していける人になりたいなぁ…………)
先生を眺めながら色々考えているとドアを叩く音がした。レイシスはアデレイドが話しかけた時同様聞こえてない様だ。トーマスがドア越しに伺いをたてているが、それでもレイシスは聞こえてない…………というか無視している。
「はぁ、何回目だよ…………勝手に入るからなクソバカ研究者」
勝手に扉が開く。と、目つきの悪いトーマスとアデレイドはバッチリ目が合った。トーマスはすぐに姿勢を正し、何事も無かったかの様に柔和な笑顔を向ける。
「アデレイド様、いらしてたんですね。気づかず申し訳ございません。すぐお菓子を準備いたしますのでそのままお寛ぎください。そこのバ……レイシス様はお客様をほっといて何してるんでしょうか…………はぁ…………少々前を失礼しますね」
そう言うと、レイシスの前に行き。顔面をいきなり殴った。アデレイドは衝撃で目がまんまるになり言葉が出なかった。当然レイシスはバリアを張っており、殴ったトーマスの方が痛そうだった。しかしやっとレイシスが振り返りトーマスに愚痴を言い、トーマスはそれをあしらい何も無かったかの様に部屋を出て行った。
(えーーーートーマスさん……えぇぇえーーー、なんか冷静で大人な人のイメージだったけれどこんなヤンチャな………ビックリしたからかドキドキが止まらない)
ドキドキしながら先生を見ていると、やっとこっちに顔を向けるレイシス
「トーマス酷いよねぇ〜僕にだけあんな態度でさぁ、でも、外面がいいトーマスがアデレイド嬢が居たのにいつも通り僕にあの感じでくるのって珍しいんだよね。多分トーマスに好かれてるよアデレイド嬢。良かったね?」
ハハハとレイシスが笑いながら言ってきた。流石に顔面をいきなり殴るのは……だが、トーマスの意外な一面もレイシスにとっては日常だし、通常の事らしい、、ビックリはしたが、ならば何も言う事はないのでハハハと愛想笑いを返すアデレイドであった。
「所で、先生、今日来たのは、私が新しくドミノレイル王国の学校に通う事になったので伝えに来たんです。お母様達が提案してくれて、魔法以外の事も学んで学園生活を楽しんだらどうかって、、ただ、これからも魔法のことは先生にお願いしたいんです。先生も忙しいだろうし、週一では流石に学べなくなるかもしれないんですが、それでもまだ先生に教えてもらう事は出来ますか?」
心配でレイシスの顔を見上げる。レイシスは少し悩んでいる様だ。それを見てアデレイドは、もう弟子では居られないのかなぁ……と寂しい気持ちになって涙ぐんでしまう。そのままレイシスをじっと見つめる。その数秒後、
「じゃぁ、アデレイド嬢の長期休暇中に合宿みたいな事してみる?それか、休みの日で都合のいい日がお互いに時間が合えば魔法の訓練をしよう、まぁ、どっちも楽しそうだからアデレイド嬢の好きにしていいよ?週一じゃなくてもどうせ魔法の自主練は自分でやるんでしょ?」
ニッコリと微笑みながらお互いにとって、無理なくとっても自由な提案をしてくれるレイシス。アデレイドが懸念していた事など全くなかった。見捨てられると少しでも思った自分が恥ずかしい。
「はい!今までより、もっとちゃんと自主練もします!それに新しい魔法も色々と考えてみますね!先生大好きです!これからもずっと私の先生でいてくださいね!!」
先生に駆け寄り抱きついた。先生は優しく頭をポンポンとして「君はこんなに甘えん坊だったっけ?」と笑いながら茶化してくる。だが、仕方がない。先生に突き放されるかもしれないと勝手に思い込んだ後でやっぱり味方でいてくれる事の嬉しさゆえの行動なのだ。
しかしその後、抱きついていた所をトーマスに見られ、トーマスに「レディとしては近すぎです。離れた方が良いのでは?」と冷たく、いかにもドン引きな目で注意され、恥ずかしい思いをする事になったのであった。
その後、お茶をしてから自宅に戻ったアデレイドは、翌日の訪問の為に自分磨きをサシャ達に手伝ってもらっていた。
明日はお兄様に会いに行くのだ。
(お菓子をたくさん持って行こう!お兄様を蕩けさせるような最新のお菓子を届けましょう!!)
と、お兄様のとびきりの笑顔を思い浮かべながらニヤニヤとだらしない顔をしそうになるのをサシャ達の前でグッと抑えるアデレイドなのであった。




