王との対峙 2
私達は今王城に来ていた。私の魔力が枯渇して、もう魔法が使えないと国王に知らせる為だ。お父様と先生に挟まれ今、国王の前に顔を伏せ言葉を待っている。
「皆、楽にせよ」
国王のその一言で全員顔を上げる。かと言って、国王の顔をマジマジと見るわけにもいかないので、目線を少し下にずらしながら国王の言葉を待つ。そして、いつもの事ながらなぜか、アレクシス王子の姿もあった。
(なんで王子もいるの??私が魔力が枯渇したって聞いたら絶対にまた騒ぎ出す予感しかしないんだけど…………)
ジト目になりそうな気持ちを抑えて、真面目な顔を作る。
「レイシスよく戻った、アデレイド嬢もよく戻ってくれた。私の前から急に消えた件に関しては罰は与えないでおこう。私も急な頼みをしてしまって驚かせてしまったのだろうからな。ただ、戻ったと言う事は私の頼みを聞いてくれる気になったのかな?」
国王はレイシスが居るからなのか、どこか上機嫌だ。にこやかな顔で悪気もなく自分の思い通りに行くと確信している様な言い方をする。
ハァ??っと声に出しそうになってしまった。危ない危ない…………睨みつけたくなる気持ちを抑えて、弱々しい令嬢に見える様に目を伏せる。
「それについて国王陛下に伝えたい事があり、今日は参上致しました。詳しくはレイシス様からお話しして頂きます」
グレアムがそう告げるとレイシスが国王を見上げながら話し始める。
「国王陛下、僕が今日来たのはお願いを聞くためじゃないよ。実はアデレイド嬢に深刻な事態が起こったんだ。実はアデレイド嬢の防大な魔力が無くなってしまったんだよね……もともと光属性であそこまで使えたのが奇跡で、段々と光の魔力が弱くなっていって、遂に昨日魔力が枯渇したんだ。この意味分かる?勇者の再来とかそれ以前に魔力が無くなった。即ちもう戦うことすら出来ないってこと」
肩を竦めながら困ったよねと言う風に国王に話しかける。国王はレイシスに疑わしい目を向けている。だが、レイシスがもし嘘をついていても分からない。何故なら魔力枯渇を証明する術がないのだ。しかし、嘘じゃなかった場合、これ以上アデレイドを駒にしたら国王の評判は地の底に落ちる。魔力なしの貴族、しかもか弱い子供を戦場に送り出す事がどんな事なのか誰がどう考えても分かる。人として終わっている。というか、魔力があっても子供を戦場に、しかも団長にしようとした時点で終わっているが、、、
国王がレイシスの言葉にどう対応するか悩んでいる中、アレクシスは黙っていなかった。
「本当なのか!!?アデレイドに魔力が無くなってしまったなんて…………そんな、そんな事!!」
そう言い、アレクシスはアデレイドをジッと見つめる。アデレイドは王子の視線をひしひしと感じとるが、無視をする。
(絶対に目を合わせたらダメなやつだよね、なんでそんなに私に執着するの?勇者かもしれないと思った人間の魔力が無くなったなんて普通は興味無くなるでしょう……うぅ、早くこの時間が過ぎないかな?)
そんな風に目を伏せ、固まっているアデレイドをアレクシスはまたもや自分の都合の良い様に見つめていた。伏せた目は悲しみに帯びた顔に見え、アデレイドをより儚く見せていたのである。また、動かない体は、アレクシスには魔力を失い心細く怯えている様に写った。
(あぁ、アデレイド俺の愛しい人。そんな魔力が無くなるなんてどんなに恐ろしい事か……平民ですら小さな魔力を持っているのにそれすらも枯れてしまって、それを告げられるのはどんなに辛い事か……そうだ!そうか!アデレイドは俺に守って欲しいと言う事か!!レイシスもここで発言すると言う事は俺にアデレイドを託したいと言う事なのでは?粋な計らいじゃないか、そうか、そう言う事か、フフフ、、フッ、フハハハハハ)
アレクシスが王子スマイルを浮かべながら急に椅子から立ち上がり何故かアデレイドに近づいてくる。国王は「アレク?」と言うだけで何もしない。アデレイドの前に立ち、両手を広げ抱きつこうとした瞬間…………アレクシスはふら〜と体が傾き、その場で倒れた。
「あっ!アレクシス!!」
「きゃーーーアレク!??」
王と王妃が同時に叫ぶ。騎士達が王子に駆け寄り王子の容態を確認する。確認した所倒れた衝撃で頭にタンコブが出来ていたものの、寝ているだけの様だ。するとレイシスが、
「この国の王子は誰にでも抱きつこうとするの?アデレイド嬢はまだ子供だけど立派なレディだよ?身の危険が迫ってるのに誰も止めないのおかしいよね?王族がこんな恥ずかしい真似するなんて聞いた事ないけど?」
「なっ、、っ、レ、レイシス様の仕業ですの?レイシス様と言えど王族に手を出すなんて、貴方、自分の息子が、王子がこんな目にあったのに何の罰も与えないなどと言う事はありませんよね?いつもいつもレイシス様に甘いですけれど、今回ばかりは私、我慢なりませんわ!!」
急に倒れ込んだアレクシス。アレクシスが倒れた原因は誰が見ても急に話し出したレイシスに決まっている。レイシスは王妃が言う通り処罰されてもおかしくないが、そんな王妃の叫び声に対し王はゆったりと話し始めた。
「まぁまぁマーガレット、レイシスのせいと決まった訳じゃないだろ?例えレイシスのせいだとしても今のは王族としても、貴族としての振る舞いだとしても目に余る行いだったから止めてくれて良かったじゃないか。ハハハハハ」
王は豪快に笑った。王妃のマーガレットは笑顔を保ったまま青筋をたてた。今回だけでは無い、レイシスに対する王の対応は異常な程甘い。その事で何度揉めた事か……しかし、流石に自分の息子が乏されたとなったら何かしら罰を与えると思っていたが、期待は裏切られた。王の決定は覆らないし、王妃の意見だけでは覆せない。なので、不満をこの場で表すのは見苦しいのでこれ以上は意見できないし、顔にも出せない。とても腹立たしい……それに、あのレイシスの綺麗な顔も憎たらしい。誰もが見惚れる美貌をもって自分よりも王に愛されていると思い知らされている様だ…………。
「で、レイシス、君の言葉を本当に信じるならばアデレイド嬢は魔法が使えなくなったって事だけど、そんな人間がこれからどーなるか分かっているのかい?このままじゃアデレイド嬢の未来はお先真っ暗なんじゃないかな?学校はもう通わせられないよね?魔法を使えないんだから、それに、魔力ゼロなんて平民以下と思われても仕方ないんじゃないかい?そんなの平気なのかい?本当にその選択肢を選んで大丈夫?よく考えてみたのかな?」
意地悪い笑みを浮かべながら挑発してくる。だが、グレアムは清々しいほどににこやかな笑顔で王に言い放つ。
「それについてはご心配に及びません。私達家族がアデレイドを一生かけて幸せにいたしますので、ご心配頂かなくても結構ですよ、国王陛下。むしろ、これ以上アデレイドに戦いをさせなくて済むと思うと本当に良かったよ思っております」
戦争には2度と行かせるなとグレアムは王にやんわりと告げる。これでもうアデレイドを駒に使えなくなったと分かった王は自分の計画通り進まなかったことに対し面白くないと言わんばかりの顔をする。
「そうか、そうだな子供には戦場は似合わぬしな、はぁ……まぁ、ただ、残念だったな魔力ゼロは流石に………なぁ……だが、これからはゆっくり過ごすといい。その美貌があればもしかしたらどんな形であれ、結婚は出来るであろうからな」
と、冷めた声で言い放つ。急にここまで態度がガラリと変わるとは。しかも、その容姿を利用して結婚しかできないと言い放つ。とても腹立たしいが、この王から解放されるならこれくらいの侮辱は我慢しなければ、お父様も同じなのか涼しい顔をしている。しかしこの時グレアムの握られた拳は血管が浮き出るほど強く握られていた。
「あっ、そうだレイシス、久々に今晩はウチでご飯を食べて行かないか?美味しいワインがあるんだ。今後の話もしたいし、どんな事があったか詳しく聞かないとね、今日がダメなら別の日にするだけだから食事を断るのは諦めて」
王の提案に王妃はまた青筋を増やす。何故そんなに固執するのか………私達家族だけでは足りないのかと、そして、レイシスはため息をつき「じゃぁ今日でいいよ」と気のない返事をする。
(なんか、王様って先生に甘いって言うより、すごく先生の事好きすぎるんじゃ…………そんなに甥っ子って言うものは可愛いのかなぁ?前世でそう言うのに全然縁がなかったからいまいち分からないけど…………)
嫌そうな顔をしたレイシスの隣で、色々見当違いな事を考えるアデレイドであった。その後、アデレイド達は無事に家に帰され、レイシスだけが王城に残った。
その夜、レイシスを伴った晩餐にて、アレクシスはアデレイドとはもう学校で会えない事を知らされる。そして、案の定、いつもの様にアレクシスがアデレイドを娶りたいと言う話になるのだが、レイシスが王を上手く懐柔し、話を無かった事にする。
(はぁ、僕ってめちゃくちゃ良い師匠じゃない?伯父さんとのご飯はほんと時間の無駄だけど、アレクシスへの牽制もできたし、まぁいっか……早く光の魔法の研究したいなぁ…………まずは何から始めようかな……………………)
やっぱり最後には研究の事しか頭にないレイシス。それを見て、王は終始だらしない笑顔を向けている。王妃は苛立ちの微笑みでレイシスを睨みつけ、アレクシスはアデレイドの事で頭がいっぱいで惚けていた。そんなカオスの晩餐は夜遅くまで続いた。




