アデルをもっと知りたい!!いや、お兄様の話じゃなくて…………
アデレイドの手作り料理を食べた3人はビックリした。今まで食べた料理の中で1番だと感じた。それもこれも、アデレイドの料理が普通に美味しいというのもあるが、光魔法が働いている為だった。どうしても料理を作る時は無意識に美味しくなぁ〜れ!と魔法が自然とかかってしまうみたいだった。残念ながらお兄様には手料理を振る舞える日は2度と来ないようだ…………。
授業は半数が倒れたが、なんとか無事終わり、部屋に戻る為寮まで歩いていた。
「アデル今帰り??」
不意に声をかけられた。声の方に振り向くとダンが手を少し上げてフリフリしている。顔が少し赤くてかわいい
(わぁ〜ちょっと恥ずかしがって控えめに手をフリフリしてくれてるダンとってもかわいい〜!って、今日友達になったばっかりなのに呼び止めてくれるなんて…………ぐぅ!!なんかとっても仲良しみたい嬉しい、、)
「ダンーーーーーー!」
嬉しすぎて人通りのある廊下でダンにハグしてしまう。周りの生徒達は羨ましがるものや、手を両手で隠しながらチラチラ見るものそれぞれだった。
「あ、あ、え、あぁ、アデル!!やっやめて!!は、恥ずかしいよ!!ちょっとは、は、離れよう」
両手でやんわりアデレイドの両肩を押して距離を保った。少し不服そうな顔で口を尖らせて、上目遣いでダンの事を見る。凄まじく可愛いアデレイドにダンは激しく動揺したが、ゴブリンの顔を頭に思い浮かべて糸目を更に糸目にし、薄目でアデレイドを見るという独自の方法を生み出して難を逃れた。
「アデル、男性に無闇に抱きついたらダメだよ?アデルは立派なレディでしょ?それに、僕だから良かったけど、勘違いしちゃう人がいるから本っっっっっ当に本当に気をつけないといけないよ?」
アデレイドの事を心配して真剣な顔で伝える。が、アデレイドはニコニコした顔でわかったと答えた。友達が真剣に叱ってくれることに対してつい、嬉しくなってしまい、顔が緩みまくってしまったのだ。ダンは口をへの字にし、
「真剣に言ってるのに…………もういいよ、、」
と不貞腐れてしまった。『ごめんね叱ってくれた事が嬉しくてつい』とアデレイドが謝り、仲直りをした。2人は夕食の時間になるまでの間ガゼボで話をする事にした。
「アデルって地元はどこなの?貴族でここに通うって事は色々自由が効く爵位って思ってもいい?」
ダンは事前の情報収集ができなかった為ここぞとばかりに色々聞いてみようと思っていた。更にここからもっと仲良くなれればいいなという気持ちもあった。
「私はサンレモント王国から来たんだよ。ここまで来るのに遠くて大変だったなぁ………爵位は侯爵家だけど、お兄様が居るから私は自由にさせてもらってる部分は大きいかもしれないね。それと、とっても仲良し家族なんだよねぇ、えへへ〜。って、ダンの事も知りたい!!ダンのお家はどうなの?」
ダンは衝撃を受けた。自分のリサーチ不足で知らなかったとはいえ侯爵令嬢とこんな気安く喋っていたのだ。ハワードの事は事前に知っていたから最初は敬語混じりで話したりしていたが、アデレイドに関しては綺麗だが、この学校に通うと言う事は地元では馴染めなかったり、手に職をつけようとしていたり、色んな国の人物が集まる学校だから何かしらコネを作りに来ている自分と同じような人間だと思っていたのだ。それに話してみたらとっても気さくだったので、男爵か、良くて子爵令嬢だろうと腹を括っていたのだが、まさかの侯爵令嬢だとは………頭の整理が追いつかなかった。
しばらくの沈黙の後、整理のつかない頭でダンはとりあえず自分の無礼さを謝らないといけないと思った。
「テイラー様は侯爵令嬢だったんですね、、敬語で喋らないといけないですよね?ずっと無礼を働いてしまってもうしわ…………」
話の途中でダンの口をアデレイドが両手で塞ぐ。ビックリして目を見開き見つめると、アデレイドはほっぺをプクッとさせて怒っていた。やっぱり謝っても許されない事をしてしまったのだと思いダンは顔を青くさせた。が、アデレイドから出て来た言葉はダンが思っていなかった言葉だった。
「ダン!!私達友達になったのよね?そんな他人行儀に話さないで!!もし今度敬語使ったら絶交だからね!わかった?約束だよ?」
ニッコリと笑顔で、スッっと小指立ててダンの目の前に差し出した。ダンはこんな高位貴族は見た事がなかった。大抵は成金の貴族と下に見られ、見栄とプライドが高く、酷い時には何もしてなくても嫌がらせをされる事もあった。しかし、ハワードもそうだが、特にアデルはなんの垣根もなくこんなに親しみを持って接してくれている。ダンは不純な動機で近づいた自分が恥ずかしくなって泣きそうになり目に涙を溜めた。
「えっ?ダンどうしたの?私と友達やっぱり嫌になっちゃった?どうしよーーそんなぁ……」
腕でゴシゴシと涙を拭いアデレイドの小指に自分の小指を絡める。
「ごめん、僕悪いやつだなぁ…………アデルがこんな良い子で、、僕……アデルと友達になれて良かった。アデルみたいな子見た事ないよ…………本当……変わってる。あのハワードが心を開いたのもわかる気がする。ハハッ」
ダンは憑き物が落ちたように晴れやかに笑った。そのキラキラ眩しい笑顔を見たアデレイドはいつものように頭の中で感情を爆発させていた。
(グフッ……ヤバイ、糸目の尊い涙、笑顔絶対守りたい!!いや、守らせてください!!うぉぉぉお!!)
周りから見たら指切りをしてるただの微笑ましい光景なのだが、憑き物が落ちた浄化された笑顔と、不純だらけな笑顔が相まみえる瞬間だった。
「そういえば僕の家の話だったよね?僕の家は子爵家なんだ。でも商家からの成り上がりだから馬鹿にされるけどね。ハハハ、僕は父さんの跡を継ぐ為に頑張ってるんだけど、、緊張しいだし、勇気もなくてまだまだなんだ。でも、人と物を見る目はあると思うよ!!姉弟は歳の離れた姉がいるんだけど、もう嫁いで行ったから寂しいんだ…………」
「お姉さん居るの?寂しいって事は仲が良いお姉さんだったんだね。ウチのお兄様もとっても優しくてカッコよくて、かわいいお兄様なんだぁ、それとね……………………
そこから30分程アデレイドのお兄様大好き話が続いた。最初は微笑ましく聞いていたダンだが、あまりの兄大好きっぷりに異常な雰囲気を汲み取り、やんわりと話題を変える。
「あっ!アデルあそこに猫がいるよ!!」
たまたま猫がこちらを見ていたのでそこを指さして大袈裟に言ってみる。アデレイドはこの世界で初めて猫を見たので、テンションが上がってしまい猫の目の前にすぐ駆け寄った。
「かわいい〜、猫ちゃん触らせてくれるかなぁ?なでなでさせてね〜?」
「にゃぁ!!」
どうやら猫は機嫌が悪かったらしい。アデレイドの手をシャァと鋭い爪で引っ掻いた。手から一筋の血が流れたが、猫にちょっかいを出した自分が悪いので“エヘヘごめんね”と言って離れていく猫とバイバイしたのだった。でもできればもふりたかったのが本音で悲しい顔が漏れ出てしまう。するとダンがアデレイドの手を取り焦った顔で
「アデル大丈夫?うわぁ血が出てる。ごめんねぼくが猫が居るなんて行ったから…………保健室いこ?魔法で治してもいいけど、この傷だったら手当てした方がいいよ早く行こう」
(糸目の焦った困り顔良き…………)
アデレイドは悶えていた為、コクリと頷か事しかできなかった。そして、そのまま手を引かれながら保健室へ向かった。保健室までの道のりで沢山の人達が2人が手を繋いで歩いているのを見ていた。しかし、ダンは気にしている余裕が無かった。傷一つついた事が無さそうな小さく白いこの柔らかい手に傷をつけてしまった……その罪悪感が胸を締め付けていた。
そして、治療に向かった保健室で更なる事件が起きるとは誰も予想していなかった。




