目立たないのは難しい2人
午前中の騎士科の授業ではずっと素振りをする事になった。腕が上がらないくらいプルプルになり、精神的にも集中力が途切れて辛かった。
(うぅ…………手っ取り早く剣術が上手くなるのは難しそうだね…………でも、頑張らなきゃ……自分が生きやすくなる為に!!それに、剣術が上達したらお兄様に褒めてもらおう!!うぉぉ!頑張るぞぉ〜)
新たな決意をして気合を入れていると肩をポンッと叩かれた。振り返るとハワードが立っていた。
「アデル、お昼一緒に食べに行かない?また迷子になったら大変でしょ?」
(ぎゃぁーーハワードの顔まだ慣れないけど、かわいいねぇ〜綺麗だねぇ〜本当笑うと、みんなやられちゃうんじゃない?これ、、大丈夫かなぁ?私誰かに殺されたりしない?)
そんな失礼な事を考えながら「うん、一緒にいこーー」と元気に応えた。その時思い切り、えいえいおーという様に手を振り上げた手が後ろを通る人物に当たってしまった。「ごめんなさい」と言おうとした瞬間
チッ……これだから女は……
舌打ちプラス嫌味を言われた。謝罪と、何か言い返したかったが、その人物が歩く速度が速すぎて振り返った時には遥か遠くにいた。
「アデル手は大丈夫?アイツの事は気にしない方がいいよ、女の子全員にあんな感じみたいだから、他意はないとは思う……きっと」
ハワードがフォローしてくれる。モヤモヤした気持ちがスッキリと晴れていく。友達ってやっぱりいいねと改めて思った。気持ちも晴れて、一緒に食堂に入る。すると周囲がざわめきだした。
「えっ、王子が誰かを連れている……そんなぁ……」
「あの子誰?悔しいけど同じくらい綺麗すぎて目が離せない」
「王子のあの顔、、あんな顔見た事ないわ」
「か、かわいいー妖精みたいだ」
「絵画の様だ……これ無料で見てもいいのか?…」
「食堂に王子が来るなんて!?もっとちゃんとメイクしてくればよかった」
ざわめきの中、2人はトレイを持って列に並ぶ。何故か2人の前後は空間ができゆったりと進むことができた。
(なんだか、見られている様な?……まぁいっか。なんだかこの感じ入学式の時を思い出すなぁ〜懐かしい〜)
レオナルドと一緒に登校した時の事を思い出してついつい頬が緩んでしまう。アデレイドがその微笑みを漏らすと、周りのざわめきが一段階上がった。さらに、倒れる者も居た。そんな事は本人は知らずに歩みを進め、ハワードとご飯を食べる。
「ハワードは他には何の授業を取ってるの?」
「僕?僕は騎士科、魔法科、グローバル科かな。アデルは騎士科以外に何を受けるの?」
「私は魔法科以外全部受けてみようかと思ってて!もし、合わなそうな科があったら辞めてもいいしね。色々楽しもうかなって考えてるよ」
笑顔で応えると、ハワードは驚いた顔をしていた。魔法科はほぼ全ての人間が受ける授業だったからと言うのもあるが、それ以外全部受けると言う人も初めて見たからだ。自分でも多くの授業を取っているつもりだったが、アデレイドには負けている。単純にバイタリティが凄いなと感心してしまった。
「アデル、気を悪くしたら謝るんだけれど、魔法はなんで受けないの?女の子にとっては騎士科を受けるよりは楽しいし、強くなれると思うけど?魔法が苦手なの?」
疑問に思い、ハワードは直球で聞いてみる事にした。別に隠すつもりもなかったのでアデレイドは魔力がゼロと言う偽の事情を話した。するとハワードの顔は強張り白い顔は青白い顔になった。
「ご、こめん!!僕…………そんな事情とは知らず………アデルに辛い事言わせて…………本当にごめん!!許して欲しい!!……僕は友達失格だ…………」
(はぇ?魔力無しってそんなに酷い扱いなの!?前世ではみんな魔法なんて夢物語だったから魔力無しってそんなに深刻に捉えてなかったけど…………他の人にはあんまり言わない様にしようかな…………)
「私全然気にしてないよ?ただ、あんまりこの事言わない方が良いのかな?逆に気を使わせてごめんね……魔力無しでもこれからも友達で居てくれる?お願いハワード!!」
魔力無しで知らない人達にいじめられたり避けられるのは仕方ないが、友達を失うのは凄く辛い。しかもこの学校での友達第一号だったので、絶対に逃したくないのだ。涙目で必死にお願いするアデレイドを見て、ハワードは苦しい気持ちになった。自分は死ぬ筈だった運命を神の様な魔法使いに助けられたが、アデレイドはきっとこれから魔力を授かる事は死ぬまで無いのだ。もしかしたら途中、魔力が無いなら死んだ方がマシだと思う日が来るかもしれない。せっかく出来た友達なのにそんな事…………絶対に耐えられない!!僕が支えてあげないと!!と強く思った。
「当たり前じゃ無いか!!僕達友達でしょ?アデルに魔力が有ろうが、無かろうが、変わらないよ。大好きだよアデル!だからもし何か悩んだりしたら絶対に僕に相談してね?絶対だよ?」
心配そうに顔を覗き込まれる。綺麗な顔を近づけられてアデレイドは赤面してたじろいでしまう。口から「あばばばば」と訳の分からない言葉を発したが、ハワードは笑って「アデルは面白いね」と笑って周囲をまたざわつかせていた。
「僕は今日これからグローバル科に行くけど、アデルも一緒に行く?」
「うーん、そうしようかな?また迷子になりそうだしね。へへへ」
仲良く2人で笑いながら次の授業へと向かった。終始2人を遠巻きに全生徒が見ていたとは夢にも思わずに。




