第三話
——翌朝。
「ふわ〜···おはよー」
「おはよう美波ちゃん。」
「あ、マナちゃん。……早くない?」
「そうかな?いつも通りに起きたつもりだったんだけど。」
こちらをどこかジトッとした目で見てくる美波ちゃん。心配しなくても夜更かしはしてないよ。……ちょっと遅くまでは起きてたけど。
「おはよ〜···」
「お、おはよう。」
あ、レモラちゃんが珍しく起きてきた。今日は学校に行くのかな?
「美波。髪ぐらいちゃんと梳かしなさい?」
「え、そんなに寝癖ついてる?」
「あっちこっちハネてるよ、美波ちゃん。」
「うぇー!?嘘ウソ、今すぐ梳かしてくる!」
咲希ちゃんと尚美ちゃんに突っ込まれて、洗面所に走る美波ちゃん。このやり取り、何回も見たな〜···最近は減ってきたほうだけど。
「おーい、マナ〜?ぼーっとしてないで早く朝食食べろよ?」
「あ、ごめん蓮兄。」
後ろから蓮兄に軽く肩を叩かれて、ハッとする。……どうも寝不足らしい、さっきから頭の中がフワフワする。
「マナちゃん、大丈夫?」
「うん。なんか疲れてるみたい……。」
「無理しちゃダメよ。貴方、ただでさえ自分のこと後回しにするんだから。」
「うっ。肝に銘じます。」
「……で、でもマナちゃんもある程度体調管理はできてると思うよ?」
「うぅ、ありがとうレモラちゃん。」
レモラちゃんに擁護してもらってしまった。……あとで何か奢ろうかな、今後のことも考えて。
「……レモラを買収しようとしてないか?」
「そ、そんなことないよ?」
いつの間にか降りてきていたマナトにバレかけたから、全力で誤魔化しつつ、席につく。彼にバレると頭を叩かれかねない。
「いただきます。」
トーストに齧りつく。カリッという音とともにバターのいい匂いが鼻をくすぐる。なんてことのない素朴なものだけど、私からすればどんなに豪華な料理よりも美味しく感じる。
「なんか、マナちゃん疲れてる?」
「トースト齧った瞬間に、めっちゃ目元が緩んだもんね……」
「まぁ、学校だけじゃなくて政府の依頼とかも受けてるし、仕方ないところもあるわね。」
「だね〜……」
なんかみんながボソボソ喋ってるけど、特に気にせず食べ続ける。……確かに最近、私も依頼の量が増えてきて忙しかったけど、そんなに疲れてる感じはしない。少なくとも、学校でいきなり倒れたりはしないはず……多分。
——ブブッ。
色々と思案しているうち、突然バイブレーションの音が響いた。
「ん、誰からだ?」
「分からないけど、嫌な予感しかないね……」
こんなご時世に連絡をしてくるような人に心当たりはない。送信元は……。
「連邦政府……!」
『え!?』
「ちょ、ちょっと待って!?え、政府?なんで?」と美波ちゃんが目を白黒させる横で、
「マ、マナちゃん、政府の人と知り合いだったっけ?」と咲希ちゃんが首をかしげる。
すると尚美ちゃんが、「いや知り合いだったとしても、わざわざ政府の名で連絡はしてこないでしょう?」と眉をひそめながら答えた。
「じゃ、じゃあなんで……。」
咲希ちゃん達が動揺している様子を横目に、改めてメールの内容を見てみると。
『——緊急通達。現在”怪異”による事件が多発しており、政府の方で調査を進めております。しかし、調査に関わる人員を優先的に確保した結果、討伐を行う人員の不足が顕著となり始めております。よって、この度貴殿に討伐任務を依頼したく存じます。詳細に関しましては、添付の資料をご覧ください。』
なるほど、要するに蓮兄が普段請け負っている、少し荒っぽい任務の依頼らしい。……普段は屋内で完結することが多いのに。少し奇妙に思いながら、言われた通り添付の資料を開いてみると。
『——分類:討伐』
『内容:桐谷市内にて確認された怪異の追跡及び討伐』
『難易度:A(※推定)』
『——注意事項:情報不足により、当該個体の実力は不明』
その資料を見た瞬間、雷に打たれたかのような衝撃を覚えた。
——先日未明、桐谷市内の山中にて行方不明だった黒布氷歌さん(16)が遺体で発見されました。
——「この前の奴は、知能が高かったんだよ。」
昨晩のことが頭の中を駆け巡る。
桐谷市内にて発見された少女の遺体、蓮兄が出遭った高い知能を持った怪異。あの時は深刻にとらえていなかった。しかし、今やこの2つの出来事は……。
——密かに私の日常と繋がり始めたのだった。




