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師匠を殺された私は復讐のために魔法学園に潜入するも、なぜか復讐相手の令嬢を助けてしまう!?  作者: 赤城ハル


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第10話 応用魔法学

「で、この後は応用科目の見学会があるけど、どこに行く?」


 応用科目の見学会とは文字通り、一年生のために二年生の応用科目の授業を見学する機会である。


「……私は魔導学」


 セレンが目を逸らして言う。


「まだ根に持ってるのか?」

「違うわよ。興味があるからよ。アリスは?」

「私は特にないけど、あえて言うなら薬学と魔法学に興味がある」


 実は興味ではなく自身の得意分野であった。

 薬学と魔法は師匠である魔女リズベルトからとことん教わっている。


「私は総合教養だな」

「やめなさいよ。あれは社交界の勉強よ」

「でも気になるしさ」

「まず上品にならないといけないのよ」

「私が上品でないって言いたいのかよ」

「なら言葉遣いをお上品にしてはいかが?」


 セレンがお上品に挑発する。


「むっ!」

「まあまあ二人とも」


 アリスは間に入って喧嘩を仲裁する。


「それなら見学は各々自由で見てまわりましょう。その後で授業内容を報告しましょう」

「だな」


 セレンの提案にスーザンは頷く。


「あ、あの」

「どうしたアリス?」

「もし授業に二年生の男爵で金髪美女がいたら教えてください」

「ん? 何それ? 人探しか?」

「落とし物を拾って」

「名前は知らないのか?」

「うん」

「分かった。二年の男爵令嬢だな」


  ◯


「あれ? アリスだ!」


 応用魔法学のある屋外スタジアムに向かっていると廊下で可愛らしい少女に二人会った。

 エリセとマリアだった。

 エリセはアリスに向かって手を振る。マリアはやんわりとした顔にお上品に頭を下げる。


「もしかしてエリセ達も応用魔法学の見学?」


 進行方向からエリセ達も屋外スタジアムに向かうのだとアリスは察した。


「うん。そうだよ」


 人懐っこい顔でエリセは答える。


「エリセとマリアは同じクラスなの?」

「いいえ。別のクラスですわ。合同授業で知り合ったの。そちらは……アリスとエリセはお知り合いでしたの?」

「うん。同じ寮でね」

「いいですわね。私も皆さんと同じ寮が良かったです」

「ねえねえ、アリスも魔法に興味があるの?」


 エリセがアリスに問う。


「う〜ん? 興味というかちょっと得意だからさ」

「得意なんだ」

「アリスも得意でしょ?」

「えっ!? ……んんと、どうだろう?」

「マリアは?」

 エリセは次にマリアに問う。

「私は多少です」

 そう言ってマリアは肩を竦める。

 けれどアリスは知っている。マリアは精霊を使い魔にして学園に使用人として配置していることを。

 能力としてはかなり高いはず。

 そして三人は屋外スタジムへと辿り着いた。


  ◯


 応用魔法学はアリスが考えていたものとは程遠かった。


「勝負あり! 勝者、マクファーレン!」


 応用魔法学の教師トールマンが勝者の名を告げる。

 観客席から受講している二年生と見学の一年生が勝者に向けて拍手が送られる。

 応用魔法学は屋外スタジアムで行われ、一対一の魔法戦闘が執り行われていた。観戦者には魔法の流れ弾が当たらないようにとステージを包むようにドーム型の防御魔法が展開している。


(あわわわっ!)


 もちろんアリスも自己防衛のために攻撃魔法を習得してはいるが、アリスにとって魔法とはあくまで日常生活を便利にするためのものであったため、二年生が相手を傷つけるために攻撃魔法を全力で使用するのを見て、ある種の恐怖を感じた。


「すごいね。私も戦いたい!」


 エリセが興奮した声で言う。


「私はちょっと戦うのは……マリアは?」

「私も戦うのは嫌ですわね」

「ええっ!? なんで!? ドカーン、ダダーンでカッコいいじゃん」

「た、戦うんだよ?」

「戦いたい!」

「……痛いよ。それに強くないと……」

「なんで? アリスもマリアも強いでしょ?」

「つ、強くないよ」

「そうですよ」


 二人はやんわりと否定した。


 そして授業という名の試合が終わり、アリス達は屋外スタジアムから校舎に戻ろうとしていたその時、薬学を受講していた二年生と見学していた一年生が教室から出てくるのをアリスは外から見た。


(あの教室は薬学の……)


 生徒達はぞろぞろと歩く。

 そんな中で、二年生と一年生が談笑しながら歩いているのにアリスは気付いた。

 熱心が一年生が二年生に授業について聞いているのか。それとも社交界からの知り合いか。

 そんな中、廊下をまっすぐ進んでいる女生徒がいた。

 絹のような金の髪をたなびかせながら、背をまっすぐにして歩く姿は──。


(あっ! あの人だ!)


 その女生徒は男子生徒が声をかけてもすたすたと歩を緩めることなく、廊下を進んでいく。


「ごめん、二人とも、私はここで」

「ええ」、「じゃあねー」


 アリスは急いで校舎に入り、後を追う。廊下を走っていると、スキンヘッド教師に「廊下を走るな!」と叱られ、アリスは謝罪したのち、早歩きで廊下を進んで行く。


(どこだ? どこ? あっ! いた!)


 女生徒は廊下から外の校舎に出た。でも、その道は寮とは反対方向。


(どこに向かってるの?)


 アリスも急いでドアを開けて外に出る。

「うわっ!」


 つい声が漏れ出た。


 ドアを開けた向こうは庭園だった。

 アリスを隠すほどの高さがある生垣が迷路のように建ち並んでいる。


「この中に入ったのかな?」


 アリスが生垣の迷路に入ろうとした時、出ようとした人とぶつかり、アリスは尻餅をつき、相手は鞄を落としてしまった。

 その時に、ポロポロとクルミが地面に転がった。


「す、すみません」


 アリスはすぐにクルミを拾い集め、立ち上がると、もう一度謝りながら相手に頭を下げる。


「まったく……気をつけるように」


 頭を上げると相手は髪を後ろに撫で下ろした眼鏡をかけた男性教師だった。


「すみません」

「フンッ」


 教師は鼻を鳴らして、鞄をはたいた後、去っていく。

 その背が見えなくなったとあと、アリスは息を吐き、体の緊張を解いた。


(怖かった)


 あの教師の睨めるような目はアリスをすくませるものだった。


 一息ついたのち、アリスは生垣へと足を踏み入れた。

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