第5話 トラウマと初めて
「うん」僕は自分のベッドで眠っていた。(さっきのは一体何だったんだ。左腕)僕の左腕は何の跡もなく直っていた。(良かった、助かったんだな)ドサッ、(ドサ?)僕が物音のする方を見ると、「ヨ、ヨウロウ様」そこには、ドアを開けて入ってきたアネモネが立っていた。
「おはよう、アネモネ」「フェル、ヨウロウ様が」(なんだ、あのアネモネが焦ってる)ドタドタドタ、「ヨウ、大丈夫」母が走って僕に駆け寄ってきた。「大丈夫だよ、お母さん」母はほっとしたような表情で僕に説明し始めた。
僕は3ヶ月くらい寝たきりだったらしい。その割にはきれいだねと言うと、母が体を拭いていてくれていたらしい。(この世界では2歳とはいえ、元の世界では思春期真っ只中の高校生だぜ)そんなことを思っていた僕の目に写ったのは、申し訳なさそうな目のアネモネがいた。(そうか、母はアネモネを一番信頼していた、アネモネもそれに応えるように頑張っていた。そんなアネモネが母からの信頼よりも、僕の命を取ってくれた。ババアなんて思っててごめんな)すると、今度は父が飛び込んできた。「ヨウロウ、起きたのか」父も僕に駆け寄ってきた。「うん、ごめんなさい。心配をかけて」父は少しキョトンとした表情で「何を言うか。お前をワイバーンから守りきれなかったのは俺だ。お前は悪くない。傷の方は大丈夫か」「ワイ、バーン?」父はハッとしたような顔で、「あぁ、お前を襲った魔物のことだ」瞬間、僕の頭の中にあの時の記憶が蘇った。「うわぁぁ、来るな来るなぁ」俺は自分でも何をやって何を言ったのかわからなかった。ただ、我に返ったときには
あたりにものが散乱し、父と母そしてアネモネも部屋からいなくなっていた。「ハァハァ」
ガタン、「怖い怖い怖い」(また死ぬところだった。死ね前の苦しみをもう一度味わうなんて死んでもごめんだ)「痛い痛い痛い」(腕は直っているはずなのに、痛い)「何で、転生したのにこんな目に。どうすればいいんだ、何だ、何なんだ。僕は何も悪いことなんてしてないのに」(あんな痛み始めだ、なんであの時の僕は平気だったんだ。なんで忘れてたんだ、生まれ変わっても僕は僕だ。何も変わっちゃいない。『勇気を出した』だからなんだ。『精一杯やった』けど結局人に助けてもらって母さんからの信頼をアネモネは諦めてまで助けてくれた恩人なのに追い払って。グシャグシャグシャ、俺は結局なににもチャレンジせずに勝手にあきらめて絶望してたあのときと...
なにも)
「ヨウロウ、一度父さんたちと話し合わな」
「うるさい、向こうに行って」俺はフェルエッテと向かい合い、二人同時に頷いた。「ヨウ、ここに晩ご飯ご飯置いておくから」トントントン、階段を降りる音と同時に僕は眠りに落ちた。
そこから3日間は、地獄だった。ひたすらに絶望と半数を繰り返し、泣き、疲れ切って眠る。前世の死ね前よりもひどかったと思う。
ただ、3日も水だけだとさすがに腹が減ってくる。空腹を恐怖で押し殺していたが、3日も経てば最初のころよりましになっていた。
僕は夜、父と母が寝静まった後に、ドアを空けた。(ご飯なんて置いてないじゃないか)僕は少し落胆しながら部屋を出た。出る瞬間は少し怖かったが出られた、きっと長くいるほど出られなくなるんだろう。トントントン、僕は父と母が起きないようにゆっくりと階段を降りる。
「アッ」僕は階段の裏に隠れた。リビングにはアネモネが座ってゆっくりと本を読んでいた。僕は階段を登ろうと動いたところを、「ヨウロウ様、そこで何をしているのですか」「ア、アネモネ」(なんでだ。なんで逃げようとしてるんだ。前は話す機会すらなかった。けど今回は話せるじゃないか。もう逃げるな、逃げるなよ)僕がそんなふうに思い詰めて階段を登ろうとしたとき。
グゥゥゥ、僕のお腹がなった。すると「フフッ、転生者であってもも食欲は我慢できないんですね」(ぐぅ、恥ずい。ん、まて転生者?)
アネモネは僕に近づいてきた。(怒られる、それとも詰められる、怖い怖い怖)ポン、「今、何かお作りしますので」そう言うとアネモネは僕を抱っこして、自分が座っていた椅子に、僕を座らせた。「ここで座って待っていてください」(何も言わない、気にならないのかな。
そうか、どうでもいいんだな。あの程度の魔物ににも勝てずに、引きこもるような子供だなんて)
グゥゥゥ、また僕の腹の虫がなった。
「全く、おなかの方は元気ですね。食欲があってよかった」アネモネはそう言うとキッチンに向かっていった。僕はふと、アネモネがさっきまで読んでいた本が目に入った。
『勇者の幼少期』「勇者..の幼少期?」「私の家に伝わる本です」(勇者は知ってる。初代と2代目がいて初代は同じく初代元素王、ミゲルディア・シュノワルツ、ドワーフ、ヨシュール・ボレアス、エルフ、ヒュギイア・オーデン、そして人間2人と共に海王を倒した。2代目勇者は軍全体の底上げと組織の改革を行った。確かにどっちもすごい。けど、それの幼少期?)「勇者様は転生者と言われてるので何か助けになるかと」
「そうだ、何でアネモネは僕が転生者だって知ってるの?」僕がアネモネのほうを見ていると、アネモネが不思議そうな顔で「だって2歳で歩いて走って、ワイバーンに一撃入れて、あんなふうに思い詰めて感情を言葉にするだなんて転生者じゃなかったら何なんですか」ポクポクポク、「確かに!!」「し、静かに」フェルやヒルデガルドにはバレたくないんでしょ。「分かってたの」アネモネは頷いた。僕は少し身体が軽くなったような気がした。「これ、読んでもいい?」僕は本を手に取り言った。「えぇ、料理ができるまでは構いませんよ」アネモネは鍋に火をかけながらそう言った。パラリ、俺は耐えきれなかった。前世の俺はそこまで立派な人間じゃなかった。
けど、俺はこの世界に呼ばれて勝手に勇者とか言われて持ち上げられた。なんで、俺なんだ。もっと適任がいるだろうが。(僕と似てる
勇者でもこんな感じだったんだ)前世の俺は物語の主人公に憧れた。でも今はただ責任に潰されそうなだけだ。クソッ、あいつらは勇者の俺しか見てない。当たり前だ、前世の俺を知る人間なんて一人もいない。けど、オーデンだけは俺を見てくれていた。(僕にも、そういう人が見つかるかなぁ)
パラリ、青年期〜ラブラブ恋愛編〜
バタン、(本はそこで終わっていた。そういうことにしよう)「ヨウロウ様、スープができましたよ」アネモネは小さい机を持ってきて器を置いた。「はい、野菜具沢山スープですよ」僕はスプーンで一匙すくい口に運んだ。「おいしい」(優しい味だ。まるでつつみ込んでくれるような)アネモネはいつもご飯を食べているテーブルに座った。「転生者であるということは言わないほうがいいでしょう。元素王も勇者も転生者だったのでもし転生者だとわかれば何があるかわかりませんから」アネモネは落ち着いた雰囲気でそう言った。「怒ったり、詰めたりしないの?」僕がアネモネにそう聞くと、「それが意味のないことだと私は知っていますから」アネモネはどこか悲しそうな目でで、紅茶を一口啜った。(アネモネなら話しても大丈夫じゃないか。多分アネモネは子育ての経験がる。なら、話しても受け入れてくれるんじゃ、でも...もし、母さんや父さんに
話すように言われたら。ん、待てよ確かこの前)「私のだいじな花を氷魔法で氷漬けにさせしまったと、どうやって責任を取るつもりなの、フェル」「...ハッ、アネモネよ従者の分際で主人に逆らうとはなんと無礼な。解雇されても文句は言えんぞ」「はぁ、私の主人は確かにあなただけど、雇い主はあなたの父親であって貴方じゃないの。だから、貴方には解雇する権利も、私が従う義務もないの。御託はいいから精々報復されないように私の機嫌を取ることね」とか言ってたな。つまり、アネモネは自分の意志で母の従者をやっているだけで命令される筋合いはない。じゃあ別に
話してもアネモネなら黙っててくれるだろう。
まさか、俺がババアを頼るとは、これが年のこういうものか)僕は自分の気持ち、過去をすべて話した。アネモネは何も言わずに黙って僕の話を聞いていた。僕は時々、泣いたり言葉に詰まりながら話しきった。全てを聞いたアネモネは僕をもう一度抱っこして、頭に手を置いた「気持ちの整理がつくまではこんな風に夜にご飯を食べに来なさい。そして、何でもいいから私に話して、前世のあなたには
時間がなかった。けど、今は時間がある。だからゆっくりと直していけばいい」アネモネはそう言いながら、僕をベッドに寝かせた。
そこから3ヶ月は、アネモネが言っていたとおりになっていた。色々とこの世界について聞いたりしながら、前世の記憶を話した。
僕が日中にやることが無いといえば、貴族のしきたりや地理などのいろんなことが書かれた本を渡してきた。トイレ等で昼間に部屋の外に出たときも、僕が母や父に会わないようにアネモネがサポートしてくれた。僕が自分から言えるようになるまで、父と母が言わないように言ってくれた。お陰で、アネモネになら以前までと同じようにしゃべれるようになっていた。そんなある日、いつものようにトイレに行こうと、下に降りた。すると、
「いい加減にしろ、アネモネ」リビングから
父の声が聞こえてきた。そこには、父と母に詰められているアネモネがいた。「お願いよ、
アネモネ!!私達には分からないのよ、あんな風になったヨウロウをどう治すか」母がアネモネに懇願する。すると父も、「お前がヨウロウと夜に話しているのは知ってるんだ。頼む、ヨウロウを連れ出してくれ」(話すんじゃないか、時間はたった。アネモネが大丈夫だって思ったら)そんな事を考えていた僕の脳に声が入ってきた。「私は、ヨウロウ様がどんな状態かを知っていますある程度ですが、回復もしています。ですが、ヨウロウ様にとって、
2人は最も大事な人間なのです。もしその2人に拒絶されれば、いえ、たとえ拒絶されなくても自分がヨウロウ様が思っているのと違う答えが返ってくるだけでヨウロウ様のメンタルは崩壊してしまいます」その言葉に、父が激怒したのが見て取れた。すると、父は「お前はヨウロウが私やフェルエッテよりもお前を信頼しているというのかぁ!!」父が拳を振りかざす。次の瞬間、「おやめください、父上」僕は、父とアネモネの間に割って入っていた。(あれ、なんで俺こんなことしてんだ)
父はその場で崩れ落ちた。「ヨウ、話してくれ。頼む、何も言わない。ただ、話してくれ
グッ、ッお前が何を思っているのか」すると母も、「私たちの配慮が足りなかったのは許して、だからお母さんやお父さんに話して、お願い」そう言って、涙ながらに訴えてきた。
(こ、怖い。なんでだ、アネモネに話したときみたいに言えばいいだけだ。なのに何で)ドサッ「えっ」僕が振り向くとそこには、「アネモネ!!」そこにはアネモネが倒れていた。
アネモネは寝不足と疲労の蓄積で倒れたらしい。また部屋に籠もった僕に母が口頭で伝えに来た。元々老衰で、つらくなり始めていたらしい。その為明日、アネモネの娘と孫が新しくメイドとしてくるらしい。僕は逃げ籠もった後、また絶望に暮れた。
次の日、ドカラドカラ、ヒヒーン。僕はアネモネの娘と孫を出迎えていた。父と母とは和解していない。その為、横にいる2人は新しいメイドよりも僕が庭まで出てきたことに興味がいっていた。初めは迎えるつもりはなかった。あんな事をした後に、どんな顔で父と母に会えばいいか、でも元はといえば僕の責任もある。だから馬車が来る直前に来た。
(アネモネ以外と喋るの3カ月ぶりだし、同年代の子と話すなんて2年ぶりだぞ)ガラ、(来た)馬車のドアが開く。そこから、お姉さんと、かわいい幼女が出てきた。「はじめまして、私はアネモネの娘、アンチューサと言います。こちらは娘の」アンチューサさんが
隣に手をさすが、「あれ、ローズ」アンチューサさんがキョロキョロしていると、下に視線を感じた。「う、うわっ」幼女が僕のことをジーッと見ている。「あ、あのどうしたの」僕がそう言うと、幼女は「決めた」と大声で言うと。パンと手をたたき、「私この人のメイドになる」幼女は自信満々にそう言った。「え、え
えぇぇぇ」
こうして僕は、家庭問題山積みのままロリメイドを手に入れてしまったのであった。




