それでも夢の中ですごしたいもん
22日目、
ソラ「…。」
おはようございます。ソラです。今日で22日目。
ソラ「(昨日のおばあちゃん、言葉がキツくて聞くだけでもつらかった…。)」
ソラ「(どうしてあんなに冷たいの?こんなにキレイで、宝石みたいに輝いているのに…。)」
僕は少し落ち込んだ表情でベッドから起き上がり、昨日初めて会った時からとても冷たい言葉を次々と僕に言ってきたアマノおばあちゃんの一つ一つの言葉が何度も頭の中で繰り返すよう言ってくる。
ソラ「(僕はちゃんとキラキラに埋まるまで書かれていた通りの仕事をしてたんだよ?)」
ソラ「(約束をちゃんと守って、べっそう生活をしてきたのに。何でだろう?)」
ソラ「(できればあまり会いたくないなぁ。僕のこと嫌いなのかなぁ…。)」
僕はちょっと落ち込みながら一階へと降りて、天井と壁のあちこちに浮かぶ赤いキラキラと床の白いキラキラを見ながらごはんがあるテーブルの椅子へと座った。
ソラ「いただきます。」
ソラ「…。……。ふう。これもちょっと硬ー」
いつもの美味しい生ハムを食べて、ふっくらしているパンをかじってゆっくりともぐもぐする。
と、
ソラ「あ。」
ごはんをもぐもぐしている時に歯数本がまた抜けてしまって、僕はまた昨日と同じように歯が抜けた部分から血がぶくぶくとわき出る気持ち悪い感触に思わず、
ソラ「っぺ!…うー。もぉ。なんでだろう。」
ぶくぶくとたまる血と一緒に抜けてしまった歯を床へ吐き捨てて、床のたくさんある白いキラキラの近くにべちゃりと僕が吐いた血の液体と抜けた歯数本が転がった。
僕はお口直しにお父さん手作りの虹色のアメを一つ掴んで口へと投げ入れ、ぶくぶくと出る口の中の血がある程度止まるまで長めに舐めまわした。
後、
ソラ「薬…。」
ソラ「…。」
残り三つしか入っていない守りのお薬が入ったビンを見て、僕は昨日ムラクモおじさんに言われた事を思いだす。
ソラ「15歳みまんはふくよう禁止。僕7歳だから飲んじゃダメ。」
ソラ「でも…」
僕は自然に薬を瓶から出して、残り三つ分のお薬をじっと見た。
その瞬間、
ソラ「僕は飲まなきゃ。だって何も起こってないもん。」
ソラ「だからね大丈夫。僕なら、ヘーキ。」
ほんらいなら一つ半分にして飲もうとしたけど、今まで三つ分飲んでいたクセが自然に付いていたから、残り三つ分のお薬を全部飲んじゃった。
ソラ「あ。つい三つ飲んじゃった。…いいや。」
ソラ「なんとかなる。うん。なんとかなるよ。お父さんとお母さんに会うまで、絶対にここを守らなくちゃ。」
僕は約束をしっかり守る子だもん。
大丈夫。きっとなんとかなるよ。うん。
ーーーーーーー
べっそうの外へ出た僕は、
ニジ「え!?薬を全部飲んじゃった!?」
ソラ「うん。飲んじゃった。いつもごはん食べた後に三つ飲んでたから。」
リクト「マジかぁ…。」
カイド「…。」
アマノ「完全に●亡ルート確定兼バッドエンド不回避じゃないか。あーあ。だからあたしゃ言ったのに。」
アマノ「強引でいいから早く連れて来いって。もうこれだから野郎共は判断と行動一つ一つが悪いんだよ。っへ。」
ムラクモ「…。」
いつのまにべっそうの中庭に集まっていたニジおじさん達と会って、今日朝ごはんの時についいつものようにやった事を話した。
ああ。あの冷たいおばあちゃんが居る。嫌だなぁ。ずっと僕を嫌そうな顔で見てるし。
ため息も大きく聞こえるし…うーん。
と、
ムラクモ「ソラ君。ちょっとアッシと軽く診断しようか。」
ソラ「しんだん?」
ムラクモ「単純だ。はい。」
ソラ「?クレヨンと、画用紙?」
僕の間に入ったムラクモおじさんがしゃがみ込んで、僕へと一本の水色のクレヨンと簡単な字が書かれた画用紙を僕の足下に置いた。
ムラクモ「今置いたクレヨンを使って、隣の空白に同じ字を書いてみて。」
ソラ「?わかった。…。」
僕は言われるがままにクレヨンを持って、画用紙の隣の文字と同じように書く。
が、
ソラ「?(あれ?こんなにふるえていたっけ?)」
ソラ「(そういえば日記を書く時にこんなプルプルしてたような…。)」
ソラ「……。」
今まで普通に書いていたはずの手がカタカタとふるえていて、僕はとにかく書かれた字の通りに写した。
その次は、
ムラクモ「今アッシが持っているこれ。なーんだ?」
ムラクモおじさんの手に美味しそうなアメ玉を目にして、僕は見えるままの物を言う。
ソラ「?アメ玉だよ?」
と、言った僕へニジおじさん達の反応は
ニジ「…。」
リクト「ぁー。…。」
カイド「思った以上に、進行しとるのぉ。」
アマノ「はぁー。」
ソラ「?」
ニジおじさんは真剣にお顔を浮かべて、リクトお兄さんは気まずいようなお顔で、カイドおじいちゃんは頭を抱えて、アマノおばあちゃんはため息を吐いて…みんな困惑する顔をしていた。
ソラ「え?なんで?これ、美味しそうなアメ玉なんだけど?」
ニジ「ソラ。それはな…」
とニジおじさんが言いかけを遮ったムラクモおじさんの一言で、
ムラクモ「副作用によるステージ3だねぇ〜。こりゃ深刻だよぉ〜。」
ムラクモ「ちなみにこれ。ソラ君の目では美味しそうなアメ玉に見えたようだけど、本来は【そこら辺に転がってた肉食の一部の眼球】よ?」
ソラ「え…?」
ニジ「…。」
リクト「…。」
カイド「…。」
アマノ「…。」
僕は思わずピシッと身体も考える事も固まってしまった。
ムラクモおじさんは小さく息を吐いて、固まる僕へと分かりやすく説明してくれた。
ムラクモ「この日までソラ君が飲んでいた守りの薬。あれは上層の人間たちしか出廻らなかったものでねぇ〜。突如とこの世界に侵攻してきた【肉食種】から避けられ確実に逃れる事ができる奇跡の忌避薬。」
ムラクモ「名称は【クレール】。名付けられた通り飲んだ人間は透明みたいに奴らから100%避けられる意味よぉ〜。ただし激薬につき副作用は段階的に必ず現れる。」
ムラクモ「初期段階のステージ1は認識障害。これは見ている物が全く異なる事。その次が味覚障害。どれだけ不味い味でも美味しく食べられる事。その次が臭い匂いすら全く匂わなく感じる嗅覚障害が起こる。」
ムラクモ「んでステージ2に入ると幻覚、幻聴が現れ、ステージ3に突入すると服用する薬の定められた量以上に飲んだり、食べられない異物を平気で食べたり触ったり、まともに字が書けなかったり、認知症重度のおかしな行動を取り始める。」
そして固まる僕へムラクモおじさんがしゃがんで近づいて、そっと静かに僕の両方を両手で掴んだ。
とても真剣な表情と共に、
ムラクモ「そしてステージ4…。目や鼻、耳穴から血が吹き出し、口内の歯も全て抜け落ちた後、凄まじい自●衝動に駆り立てられながら大きな絶命と共に発狂●してしまうのよ…。」
ソラ「あ…。じゃ、じゃぁ僕……。僕は…。」
ムラクモおじさんはお医者さんとしてのとても重大な忠告をその目に映した。
ムラクモ「このままじゃ危ないねぇ〜。だから医者としてソラ君に進言するよォ〜。」
ムラクモ「直ぐに俺らが住むコミュニティに来い!直ぐにでも治療をしないとガチで●ぬよォ〜!?」
ソラ「…。」
僕はムラクモおじさんの素の必至に助けようとするお医者さんのお顔を目にした。
すると成り行きを見ていたニジおじさんとリクトお兄さんが近くまで歩み寄って、静かにしゃがみ込むよう僕へと話しかけてきた。
ニジ「ソラ。お父さんとお母さんに会いたいんだろ?」
ソラ「うん。会いたい。だから頑張って生きるの。」
ニジ「なら、一旦ここから離れてムラクモさんの治療をしっかり受けるんだ。」
ニジ「生きて会わなきゃ、この日までのソラの奮闘の意味が無くなってしまうぞ。」
ソラ「…。」
リクト「俺もニジの言う事に同意だ。忌避薬を全て飲み切ってしまった以上、もういつ何処かで襲われてもおかしくない。」
リクト「俺たちが住んでいる安全なコミュニティ内でしっかりと今の症状を治すんだ。まだ間に合う。」
カイド「しかしワシらは所詮外部の者じゃぁ。ここはソラ君の意思に委ねる。」
アマノ「ここがアンタの生●に関わる運命の分岐点と思いな。」
アマノ「あんた、ニジの友達なんだろ?だったらそこで待っているデッカい35歳のお友達を裏切る選択をするんじゃない。」
ムラクモ「決定権は君よぉ〜。さぁ、アッシらに教えてくれ。」
ムラクモ「このまま夢の中で眠るか、外へ出て必死に生きるか。…選びなさい。」
ソラ「…。」
僕は……
ーーーーーーー
ソラ「…。」
僕はべっそう内にいた。
常にキラキラに輝くこの世界こそ、
ソラ「ごめんなさい…。僕はやっぱり…。」
どんな事があってもこの目は特別。
僕は…
僕はこのまま…あと少しでもいいから…。
ソラ「夢のままでいいもん。夢の中でずっと眠る事ができるなら…。」
ソラ「…。」
僕はそのまま温かく感じるベッドの中へもぐった。
続く。
べっそうせいかつ22にちめ。
また歯が抜けた。お薬無くなっちゃった。
でもいいや。ここ温かいしキラキラしててキレイだしいいの。
ニジおじさん達を悲しませちゃった。本当にごめん、ね…。
僕、このまま夢の中でずっと過ごしていきたいもん…。




