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相変わらずな青臭さ

「人の住処に入り込むんじゃねえよ!!」


 怒りを銃弾に込めて頭を吹き飛ばす。

 そして、近付いてきていた別のゾンビの即座に胸元に横蹴りを決め、一気に突き放す。


「イタズラ出来ないようにしとかないとな!」


 俺へと伸ばしていた手をナイフで斬り落とし、続け様に側頭部へと切っ先を突き立てる。引き抜くと同時に崩れ落ちるゾンビには目もくれず、俺は倒れていた最後の一体に銃口を向けた。


『―――――――――ッ!!』


 頭を撃ち抜き、活動を停止させる。

 とりあえず片付いたことに安堵の溜め息を吐きながら、修一のほうへと視線を向けた。


「――寝てろ!」


 奥から現れた新手をヘッドショットで片付ける。それを見て、俺は からかうよう拍手してみせた。


「少しは出来るようになったじゃねえか?」

「バカにするな! もう、あの頃の俺じゃない!」


 俺の言葉に感情を爆発させる修一。

 多少の《煽り》に引っ掛かるところが青いということは、未だ気が付いていないらしい。


「だったら、しっかり付いてこいよ。ここに来て お前の面倒まで見なきゃならないなんてゴメンだからな」

「偉そうに……」


 修一の反論を銃声でかき消す。

 実際、こんな所で口論をしている場合ではないのだ。


「チッ……次から次へと!」

「ふう……ここまでの戦闘は久しぶりだな」


 そんなことを呟きながら、修一のほうを振り返る。


「あぁああぁぁッ……!!」


 撃ち漏らしたのか、一体のゾンビに迫られていた。それを見て、俺は溜め息を吐きながらも急いでマガジンを交換する。


「手出しは……するな!!」


 だが、そう言って俺の助力を振り払うと、修一は足を振り上げた。

 蹴りで体勢を崩してからのナイフの一撃。

 銃だけに頼らず、体術を駆使する戦い方も学んでいるらしい。


(だけど、まだまだ甘いな……)


 そう心の中で呟くと、俺はゾンビからナイフを抜き取っている修一の背後に回り込んだ。そして、危険性を排除するために安全装置を掛けながらも、銃口を彼の後頭部に突き付けた。


「そのままだ、動くなよ?」

「クッ……お前ッ……!」

「卑怯とか言うなよ? 今だけだって言ったのは お前なんだからな」


 揚げ足を取っただけ――しかし、事実でもある。恥じることは何もないので、俺は気になっていたことを聞いてみることにした。


「何が目的で此処に来た?」

「喋るつもりは無いって言ったはずだッ」

「悪いけど、お前の意思は関係ないんだよ」


 そう言うと、膝の裏側に蹴りを入れて跪かせる。そして、恫喝するように乱暴な手付きで銃口を押し付けた。


「言わないのなら、ここで死んでもらうだけだ」


 低く、ドスの利いた声で脅す。

 それを受けた瞬間、修一の背が僅かに震えた。


「や、やれるものならやってみろ! 俺は喋らない!」


 頑なに黙秘を貫こうとする修一。

 しかし、それが意固地になっているのと同じであることを俺は理解していた。


『ボス……ボス! 聞こえるか!?』


 その時、腰元の無線機からトニーの声が聞こえてきた。声の調子から察するに、能美と合流して俺が孤立していることを聞いたのだろう。


「ああ、聞こえるよ。こっちは大丈夫だ。そっちは どうだ?」

『ああ、こちらも問題ない。能美も合流できた』

「そうか……そいつは良かった」

『ところで、誰か不審者を見なかったか? 見慣れない奴が山を降りていったのを見たって千夏が言っているんでな』

「……………………ッ!!」


 再び、修一の背が踊る。

 その姿を見ながら、俺は無線機に対して口を開いた。


「……いや、こちらには誰もいなかったよ。もしかしたら、誰かが迷い込んだのかもな」


 修一の存在を隠匿する言葉に、彼から明らかな安堵の空気が伝わってくる。ああ言ってはいたものの、やはり本当に命を懸けるだけの覚悟は持ち合わせていなかったようだ。


『とりあえず、侵入したゾンビは片付けた。落ち着いたら学校に戻ってきてくれるか?』

「了解。すぐに戻るよ」


 そう言うと、俺は通信を切った。

 同時に、押し倒していた修一を自由にする。


「お前、どうして……?」

「ガキを相手に尋問する趣味はないだけさ」

「クッ……」


 情けない姿を見られたという事は理解しているのか、修一は特に反論することなく口を閉ざした。


「さて、そろそろ陽も暮れる。子供は早く帰るんだな」


 言いながら、俺は銃をホルスターに戻す。

 反撃するなら絶好のチャンスだが、さすがに そこまでの恥さらしな真似は出来ないのか、修一は大人しく数歩を後ずさった。


「これで貸しを作ったと思うなよ!!」

「この程度のことで貸しなんて言葉が出てくるほどケチじゃねえよ」


 そう言い放つと、俺は踵を返す。

 しばらくは俺の背中を睨み付けていた修一だったが、意味のないことだと悟ったのか、身を翻して走り去っていった。


「やっぱり、まだまだガキだな……」


 そんな事を呟くと、俺は学校に向けて歩き始めた――



 ―――*―――*―――*―――



 ~~~そして、夜になって~~~



「――と、言うわけです。申し訳ありませんでした」


 項垂れるように頭を下げる修一。

 しかし、そんな彼を前にしても井川が変わる事はなかった。


「ははは……それは面倒だったね。しかし、そんなに落ち込む必要はないよ」

「でも、俺は……」

「情報については問題ない。彼とトニーという兵隊がいたのなら、あの少女も居ると考えて間違いないからね」

「そう……ですか」

「うむ……それに、君が接触したことで我々が健在であると知らしめる結果にもなった。牽制の意味合いを考えると、これは前進でもある」


 次々と井川の口から出てくる肯定的な言葉。

 それが事実であると同時に、慰めなのではないかとも修一は思っていた。

 とは言え、それを問いただせる立場にも居ないため、大人しく口を閉ざしているしか出来なかった。


「とりあえず、今日は休みたまえ。色々とあって疲れただろうからね」

「……はい、分かりました」


 素直に頷くと、最後に一礼だけして修一は退室した。


「……………………」


 廊下に出た修一は、トボトボと重い足取りで歩く。

 その原因になっているのは、井川の期待に応えられなかった事もそうだが、何より彼に遊ばれたのが一番だった。


 情けない姿を見せた――自己判断が苦手な修一ですら理解できる醜態だった。それ故に、落ち込みも深いものがあった。


(クッ……弱気になって どうする!!)


 自分で自分を叱責する。

 それで活力を取り戻した修一は、無理矢理に背筋を伸ばした。


(次は、絶対に負けない……!!)


 そう心に決めると、修一は迷いなく前を向いて歩き出した――

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