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師弟再会

 ~~~その頃、別の場所では~~~



「あぁああぁぁ…………」

「えあぁあぁああ…………」


 爽やかな朝日とは対象的な呻き声。

 聞きたくもないが、自然と鼓膜を震わせてくる。


「う……ううん……」


 無理矢理に意識を覚醒させられ、俺は目を覚ました。最近では無くなっていた車中泊のためか、身体の節々が凝り固まっていた。


「はあ……モーニングコールを頼んだ覚えはねえぞ」


 言いながら身体を起こし、簡単に伸びをする。

 窓から外を覗けば、俺を食べようとしているゾンビ越しに透き通るような青空が広がっていた。


「それにしても、忙しないな……」


 背もたれに寄り掛かりながら、俺は今までのことを思い出していた。


 昨日は、かなり大変な一日になった。

 千葉に頼まれて新たな農場予定地の《掃除》を頼まれたのだが、それを終えて帰ってきてみれば将吾が行方不明だと聞かされたのだ。


 そこで、同じぐらいに戻ってきていた千葉たちを交えて話し合った結果、俺を含む少数で様子を見てくることになったのだ。

 将吾が自分の意思で旧校舎から消える可能性が低いため、何者かに連れ去られたか、考えたくはないが殺られたという結末しか思い浮かばなかった。そのため、大勢で向かって被害を拡大させるより、少数で様子を探った方が良いと判断したのだ。

 結果、向かった先の軍事施設を占拠していた何者かと激しい戦闘になった。武装と人数で勝てないと判断した俺は、自分を囮に他のメンバーを帰還させるという選択肢を選んだのである。


「そして、ここは……どこなんだ?」


 仲間を逃がすために敵の注意を引いたはいいが、結果として長い間 カーチェイスする羽目になり、気が付けば知らぬ場所まで来てしまっていた。


「とりあえず、どこかの家で地図でも借りるか……と、その前にコイツを どうにかしねえとな」


 未だにバンバンとドアを叩いているゾンビを見ながら、俺は一つだけ溜め息を吐いた。朝からの意味がない労働は、一日の活力さえ奪い去るようである。


「……せえ~のッ!!」


 勢い良くドアを開けて、張り付いていたゾンビを吹き飛ばす。同時に急いで外へと出て、倒れているゾンビの胸元を膝で押さえ付けた。


『……………………ッ!!』


 腰から引き抜いたナイフを突き刺す。

 それで大人しくなったことを確認すると、俺はナイフの血糊を拭いながら立ち上がった。


 だが、その瞬間――


「動くな!!」


 いきなり背中から銃を突き付けられた。

 何気なさを装って車のサイドミラーで確認すれば、そこには軍服に身を包んだ男が立っていた。


(身なりの割には素人だな……)


 そう心の中で呟くと同時に、俺は意表を突くため即座に動いた。時計回りに反転しながら、僅かに横へと移動する。

 それで銃口を背中から外すと同時に、右の前腕で銃身を弾いて撃たれる危険性を更に低くする。


「クッ、貴様……!!」


 再び、銃口を突き付けようとする男。

 しかし、それを許すほど俺も甘くはない。


「させねえよッ!」


 間合いが近くて拳は無理だったため、肘を顎に叩き込む。それで脳が揺れたのか、男がガクリと膝を落とした。


「ゆっくり寝てな……」


 言いながら、今度は下からアッパーで顎を突き上げてやる。

 それで完全に意識を失ったのか、男は後ろ向きに倒れたまま動かなくなった。


「ふう……やっぱりボクシングって使えるな」


 心の中で将吾に感謝しつつ、俺は男から小銃と弾倉を奪い取った。


「動くな……」


 しかし、その直後、またも背中から銃を突き付けられた。だが、今度は一定の距離を取っている。これでは、先程の作戦は使えない。距離を置いて全体像を見られている現状では、あんなことをしようものなら、振り向こうとする動きを察知され即座に撃たれるからだ。


(コイツは甘くないみたいだな……)


 そう判断しながらも、俺は どうするかを考えていた。

 いきなり撃ってくるような連中ではないようだが、それでも言いなりになるのは嫌だからだ。


「そのまま、ゆっくりと振り返ってくれ」


 しかし、そんな俺の気持ちとは対照的に、相手は何やら震えるような声で指示してきた。その声色に疑問を抱きながらも逆らえる立場にないので、俺は相手を刺激しないように少しの時間を掛けて振り返った。


 すると、そこにはーー


「えっ……?」


 見たことのある……なんて、浅い言葉では片付けられない。共に死線を切り抜けてきた戦友の顔が、そこにはあった。


「やっぱり……ボス、なのか……?」

「トニー……?」

「ああ、ボスッ! 無事だったか!!」

「トニー!! ハハハッ、マジかよ!!」


 久しぶりの再会に、俺達は抱き合って喜びを分かち合う。


 彼の生存を疑ったことはない。

 しかし、こうして実際に無事な姿を目の前にすると、やはり喜びを抑えきれなかった。信じる事と事実を得ることには、少なからず差があるようだ。


「……ったくよ、俺だって思ってたんなら銃を向けたりすんなよな!」

「ボスだと思ったからさ。何せ、私が教えたんだからな」

「言ってくれるぜ。どちらかと言えば、俺の才能なんだよ」

「はははっ、そういう所は変わらんな」


 喜びからか、つい言葉を多く重ねてしまう。

 しかし、最も聞かなければならないことが残っていたことを思い出し、俺はトニーに向かって口を開いた。


「トニー、華菜と雅也は? 二人も無事なのか!?」

「そ、それは……」


 俺の問いに、トニーの表情が一気に陰りを見せた。その様子に不安を煽られた俺は、彼に詰め寄るように腕を掴む。


「まさか、二人とも――!!」

「違う、そうじゃない! 確かなことは言えんが、それを確認したわけじゃない……」


 慌てて言い繕うトニー。

 そんな彼を見て、俺は情報の整理が必要であることを理解した。



 ―――*―――*―――*―――



  ~30分後~



「そうか……そんな事がな……」


 今までの出来事を語り終え、俺達は互いの状況を理解した。


(はあ……あと1歩だけ遅かったか……)


 華菜と雅也のことを聞き、俺は心の中で溜め息を吐いた。

 今になって思っても仕方が無いことだが、もう少しだけ早く基地まで辿り着けていれば、今頃は全員で再会を喜べていたのだ。


「スマンな、ボス。私が不甲斐ないばかりに……」

「いや、トニーのせいじゃない。多分、俺が傍にいたって同じ結果になってたさ」


 こういうのは、タイミングと状況が支配するものだ。誰かの力で何とかなるものではない。


「とにかく、生きてる可能性があるってだけで上等だ。それなら、見つけ出せば済む話だからな」


 何事も決して諦めない――それは、この世界になってから一貫して抱き続けてきた思いだ。こんな事で、それを曲げる気にはならない。


「そうか……良かったよ……」


 何に対しての《良かった》なのかは分からない。

 それでも、問おうとは思わなかった。彼の中で何かが得心できたのなら、それを否定するつもりなどないのだ。


「ところで、ボスは これからの行き道は決めてるのか?」

「ん? ああ……出来ればアジトに戻りたいけど……」


 そう言いながら、俺はトニーから借りた地図に目を落とす。


 現在地は、アジトの学校から相当に離れていた。体感以上に奴等とのカーチェイスは長かったらしい。

 しかも、ここから最短距離を通って学校に向かおうとすると、どうしても基地を通らなければならなくなる。つまり、学校へと戻るためには遠回りのルートを選ばざるを得ないのだ。


「確かに、ボスから聞いた話では かなりの厳戒態勢みたいだからな」

「ああ……それに、そっちの話も合わせると、変異ゾンビなんてモノを送り付ける奴等みたいだからな。そんな連中とは真正面からやり合うべきじゃない」


 回避できる危険に、わざわざ飛び込むこともない。しかし、そのためには一つだけ難点があった。


「ルートを開拓しないとダメだな……」


 確実に戻るためには、長居できる拠点を作り、そこから学校までのルートを調査していく必要がある。その場その場で戦ったり逃げたりしていたら、体力も物資も持たないからだ。


「それなら、しばらくは我々と行動を共にしないか? 丁度、落ち着ける場所を見つけたところでな」


 同じ考えに至ったのか、トニーから提案してくれる。俺としても異議はないので、その言葉に甘えさせてもらうことにした。


「まあ、少しばかりの問題はあるがな……」


 表情を曇らせながら、そう呟くトニー。

 そんな彼に首を傾げながらも、その《落ち着ける場所》とやらに案内してもらうことになった。



 ―――*―――*―――*―――



  ~10分後~



「スゲェ数だな……」


 遠巻きにスクランブル交差点を眺めながら、俺は思わず呟いていた。今まで、多くのゾンビが集まっている光景は目にしてきたが、その中でも結構なモノである。


「実は、あの交差点の奥に車を置いてきてしまってな。中には基地から持ってきた武器や弾薬が入ってるから、取りに戻らなければならんのだよ」

「ふうん……トニーにしては珍しいミスだな?」

「恥ずかしながらな。しかし、いきなり襲われた上に、俺が連れ出せたのは練度の低い新兵ばかりなんだ」

「新兵……?」

「ああ、韮澤――基地の指揮官が、一般人の中から募集して鍛えたらしい。まあ、忙し過ぎて実戦投入も未だに済んでないがな」

「……それって使えるのか?」

「だとしたら、車を置いてきたりはしてないよ」


 聞くまでもないことだった。

 俺も人のことは言えないが、実戦に慣れるまでは上手いこと戦うことが出来ない。訓練で得た技術を発揮するためには、経験が必要なのだ。


「……で、どうする? さすがに2人で抜けられる数を超えてるぞ?」

「ああ、だから彼等も連れていく。単独行動はさせられないが、幾つかの班に分けてのアタックなら可能だろう」

「指揮はトニーが執るんだろ?」

「ああ……と、言いたいところだが、ボスにも頼みたい」

「マジか? 実戦の指揮なんてやったことないぞ?」


 そういう事は、大概 トニーか雅也に任せていた。グループを率いる立場にはあったものの、俺がやっていたのは基本的に《判断》と《決定》と……《暴力》だけだ。


「ボスなら大丈夫さ。それだけの経験は得ているからな」

「……師匠が言うなら頑張るけどさ」


 まあ、やらなければならない状況なだけだが。


「指揮のコツとかって何かある?」

「状況を見極め、適切な指示を出す――それだけさ」

「それが難しいんだっての……」


 ボヤきつつも、俺は後ろ腰から銃を抜き取る。やるからには、成功させなければならないのだ。


「青木! 山田!」

「ハッ! お呼びでしょうか!!」

「これより車の奪還を行う。お前達の班は彼の指示に従うんだ」

「了解しました!!」


 威勢よく返事をすると、二人は持ち場へと走っていった。その後ろ姿を見ながら、俺も作戦成功のために気合を入れる。


「では、行こうか」

「ああ……行こう」


 短く返事をすると、俺は踵を返して交差点へと向かった。


「あぁああぁぁ…………」

「ぐがぁぁああ…………」


 相変わらず、我が物顔で交差点を闊歩するゾンビ達。その姿を見て、後ろに控える全員が固まるように息を飲んだ。


「ほ、ホントに行くのか……?」

「こんな数に襲われたら……」

「銃の訓練だって途中なのに……」

「逃げるなら今しか……」


 恐怖感から及び腰になる兵隊たち。

 このままでは作戦遂行に支障が出ると判断した俺は、彼等を奮起させることにした。


「…………やれるぞ!」


 敢えて大きな声を張り上げ、沈みかけていた場の空気を払拭する。


「奴等を見てみろ。動きは遅い上に、何も考えてねえんだ。訓練を積んだ俺達が負けるはずがない。そうだろ?」

「……………………」


 俺の言葉を受け、互いに顔を見合わせる兵隊たち。そんな彼等に煮え切らなさを感じた俺は、張る声に力を込めた。


「俺達に負けはない、必ず勝つ!! さあ、繰り返せ!!」

「お、俺達に負けはない!! 必ず勝つ!!」

「奴等を蹴散らして目的を達する!!」

「奴等を蹴散らして目的を達する!!」

「よし、それでいい! 長くても30分は掛からないミッションだ! 目の前のゾンビをブッ殺してれば何時の間にか終わってる! ビビらずに無心で行け!!」

「り、了解しました!!」


 敬礼と共に迷いのない声で返事をする兵隊たち。その姿に満足した俺は、自分でも最大限の気合を入れてゾンビに向き直る。


「よし、行くぞ!!!」

恐れなく言い放つと、俺は先陣を切ってゾンビの群れへと駆け出した。


「あぁああぁぁ……ッ!!」


 俺の存在に気付いたゾンビが、濁った目を向けながら近付いてきた。


「近付かれても焦るな! 相手の腕が届かなければ――」


『―――――――――ッ!!』


 言いながら正確に眉間を撃ち抜く。


「奴等に俺達を害する術はない! 攻撃範囲外から落ち着いて倒せば楽勝だ!」

「その通りだ! 今までの訓練を思い出せ!」


 俺の言葉にトニーも乗っかる。

 それが決め手になったのか、全員の顔が変わった。


「よし……やってやる!!」


 奮起した青木が自ら先頭に立った。


「さあ、来やがれ!!」


 気合を込めて青木が小銃を構える。


『―――――――――ッ!!!』


 3点バーストで発射された弾丸の一つが、ゾンビの頭を撃ち抜く。偶然か狙いかは分からないが、それが青木のみならず、全員の闘志に火を付けた。


「青木、やるじゃないか!!」

「おう、山田! 俺達にも出来るぞ!」


 青木の奮闘が見せた勝利という未来。

 もう、誰にも迷いはないだろう。


「よし、行くぞ!!」


 熟した機を逃すべきじゃない――そう判断した俺は、改めてゾンビの群れに切り込んだ。


「えあぁあぁああ……ッ!!」

「あぁああぁぁ……ッ!!」


 またも、二体のゾンビが俺の前に立ち塞がった。面倒な左右からの挟撃。しかし、俺に焦りはなかった。


「よっと……!」


 軽いサイドステップで、右側へと移動する。

 それと同時に、腰からナイフを抜き取った。

 そして、ガラ空きだった側頭部にナイフを突き立てる。

 確かな手応えを得た俺は、そのまま力任せに引き抜いた。


 糸の切れた人形のように倒れ伏すゾンビ。

 その様子には目もくれず、俺はナイフを仕舞って銃を構える。


『―――――――――ッ!!』


 銃弾に眉間を貫かれ、後ろ向きにゾンビが吹き飛ぶ。衰えていない腕に満足しながら、後ろに控えていた2班に目を向ける。

 するとーー


「クッ……隊長!!」


 迫り来るゾンビを目の当たりにして、山田が焦りの声を上げる。


「距離を取ってから撃て! 無理に近付くな!」

「わ、分かったッ…………!!」


 俺の指示に頷く山田。

 しかし、その後の行動を見守ることも、彼を手助けすることも出来なかった。俺の横合いからもゾンビが迫り来ていたからだ。


「ぐがぁぁああ……ッ!!」


 伸ばされる腕。それを強引に払い除けると、足払いで転倒させる。そこへ躊躇いなく銃弾を打ち込んだ。

 片付いたことを確認した俺は、慌てて山田の居た方へと視線を向けた。


「ふう……何とかなったぜ」


 無事に勝つことが出来たらしい。

 出す指揮が正しければ、彼等も兵士として成長し、同時に俺を認めてもくれるだろう。


「――って、そんなこと考えてる場合じゃねえ!!」


 思わず、そんな叫びが漏れる状況が目の前に広がっていた。


「あぁああぁぁ……ッ!!」

「ぐがぁぁああ……ッ!!」


 こちらへと大群で歩み寄ってくるゾンビ。

 その光景を見て、俺は自然と声を張り上げていた。


「トニー、頼む!!」

「ああ、了解した!!!」


 俺の考えを読んでいたのか、トニーは名前を呼ばれただけで行動へと移った。


『―――――――――ッ!!!』


 狙いを定めていない牽制射撃。

 雨霰と撃ち込まれる銃弾にゾンビの動きが遮断される。狙い通りの展開に、俺はチャンスと踏んだ。


「端から正確に撃て! 確実に仕留めるんだ!」


 最適と思える指示を出し、俺自身も銃を構える。


『―――――――――ッ!!!』


 自分たちの元へと辿り着く前に、すべてのゾンビを始末する。

 とりあえずは危機が去ったことに、俺は短めに安堵の溜め息を吐いた。


「喧嘩を売る相手は選ばないとな……」


 余裕の笑みと共に、そんなことを呟く。

 だが、その直後――


「ぐがぁぁああ……ッ!!」


 いきなら横合いから襲いかかられた。

 突然の出来事に反応が遅れ、不覚にも組み付かれてしまう。


「クソッ……!!」


 俺に食らいつこうと首を伸ばしてくるゾンビ。

 その様を見て、青木がナイフを構える。


「隊長、俺がやる!! 頭を上げてくれ!!」

「分かった、頼む!」


 そう言うと同時に、ゾンビの胸倉を掴んで強引に頭を上げさせる。直後、振り下ろされたナイフの刃が頭蓋を貫いた。


「ああ……焦った……」


 あまり情けない姿は見せたくないものだが、それでも俺は額に浮かんだ汗を拭わざるを得なかった。


「ボス、落ち着くのは早いぞ!」


 響き渡るトニーの声。

 それを受けて反射的に視線を上げれば――


「あぁああぁぁ……ッ!!」

「えあぁあぁああ……ッ!!」


 またもゾロゾロと集まってくるゾンビの大群。

 有り得ない話だが、ここまで来ると俺達の邪魔をするために集まっていたのではと思えてしまう。


(まあ、立ち塞がるなら蹴散らすだけさ……)


 そう心の中で呟きながら、俺は後ろに控えていた兵隊たちに視線を向ける。彼等の瞳には未だ恐怖感が消えていないが、同時に ここまでやってこられた事への自信が宿ってもいた。


(頼もしいな……)


 その姿に勝利を確信すると、俺はハンドガンのマガジンを交換してゾンビの群れに向かい駆け出した――



 ―――*―――*―――*―――



   ~そして、10分後~



「はあっ……はあっ……!」


 断続的な戦闘に、思わず息が上がってしまう。

 しかし、確実にゾンビの数は減ってきていた。


「ボス、見えたぞ!! あの路地の車だ!!」


 トニーが脇道を指差しながら声を張り上げる。

 つられて目を向ければ、そこには2台の車が止まっていた。


「よし……トニー、車まで走れ!! 奴等は俺達が引き付ける!!」


 言うと同時に牽制射撃を始める。

 トニーも同じ考えだったのか、自分が率いていた兵隊たちと共に車へと駆けていった。


「無理に倒す必要はない! とにかく近付けるな!!」


 残った青木と山田の班に指示を与える。

 これが最後だと理解しているのか、全員が死力を振り絞って応戦した。


 響き渡る銃声と、降り積もる薬莢。

 そして、硝煙の匂いが辺りを包み込む。

 そして、ついに――


「ボス、伏せるんだ!!!」


 耳に届くトニーの声。

 どことなく楽しげに聞こえたソレに、俺達は揃って地面に伏した。


『―――――――――ッ!!!』


 鼓膜を揺さぶる強烈な銃声。

 ハンドガンとは比べ物にならない口径の弾丸が、ゾンビを派手に吹き飛ばしていく。

 そして、辺りに静寂が取り戻された頃、俺の視界に動いているゾンビは一体もいなくなっていた。


「ふう……何とか片付いたな」


 充足感に満たされた笑みで呟くトニー。

 その手には、大口径の銃弾をバラ撒く機銃があった。


「ああ……まあ、楽勝だったけどな」


 気取って言いながら立ち上がる。

 そんな俺に、トニーも緊張感を解いた笑みを浮かべた。


「では、目的地に向かおう。流石に休まないとな」


 賛成だ。今は、ゆっくりと身体を休めたい気分だった。


「よし……じゃあ、行こうぜ」


 その言葉を合図に、俺達は新たなる拠点に向かって歩き出した――

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