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wonder hole -last player-  作者: にゃこ
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一筋の光-1


「どういうことですか…話が違うじゃないですか…」


体をゆっくり起こしたフウゼツの声が響く。

いや。話し方からしてチェズだろう。

一緒に入ってきたエンテの顔から余裕は消えていた。


「あぁなるなんて誰が想像できたよ?!お前らできたか?」


チェズもトゥルナも視線を落とす。沈黙がその場を包み、エンテの重たいため息が漏れる。


「…今回のことは謝る。まさかあのお坊っちゃまがあそこまでやるとは思ってもいなかった…」


「どういう…

「母上様!!ここも危険です!!とにかく出口まで急いでください!!!」


理解が追いつかないキシュの声と同時にトトラの鬼気迫る声が響くと、強い衝撃音と共に激しい揺れが襲いかかった。トトラ達が作った道に欠陥があるなど考えられない。外の衝撃が想像を遥かに超えているのだ。

トトラの言葉に急かされるようにみんなが急ぎ出口へ向かおうと駆け出すと、先ほど入ってきた扉が煙のように解け暗闇へ吸い込まれ始めた。あそこに吸い込まれれば戻っては来れないことくらい理解できる。皆残り僅かな力を振り絞って走り、全ての道が消える前に外へと飛び出すことができた。

ホッとしたのも束の間。突如襲いかかる激しい熱風。ありとあらゆる物質が空へ舞い燃やし尽くす。立つのもままならない中エンテがすぐさま鉱石のドームを作り上げキシュ達は助かった。ようやく世界が見えた。


「な…に…あれ…」


来た時には雪で覆われた白の大地は茶色へと変貌し、海の水は勢いよく後方へ引っ張られている。視界に一本の筋が見えた。目を凝らし見るとそれは激しく立ち登る炎の柱。遥か遠くにあるだろうにわかる。空を見上げると確かに雨が降っているのに大地へと辿り着く前に煙となり空へ登っている。


「…もた…ね…」


跪き両手を大地に広げ続けるエンテの背中から余裕のない声が漏れた。


「!」


エンテの背中に当てられた小さな手のひら。同時に温かな力が体を巡った。どこか懐かしくも感じたこの力の主を知った時、驚きと同時に納得した。


「ありがとな。」

「お互い様よ。あなたのおかげで私達助かってるんだもん。」

「お前…名前は?」


少しして答えが返ってきた。


「キシュ」

「そっか。ありがとなキシュ。」


ようやく風が止まった頃にはエンテもキシュも限界スレスレだった。1分もたっていないだろうに、何時間も耐えていたような疲労感が2人を襲っていた。解かれた鉱石のドームから流れる熱気に汗が噴き出す。

何もかもがおかしかった。

雪に覆われたこの大地は夏でもこんな気温にはならない。


「どういうことだ…?」


トトラの絶望した声が漏れた。トトラだけではないその場にいた全員が同じ表情だ。トゥルナ、エンテ、チェズを除いて。

彼らは全てを知っているようだ。


「船は…」


トトラの声に気付いたキシュが海の方へ目をやると船は来た時と同じ状態で停泊しているのを確認できた。先ほどの引き潮の影響を受けていないのは魔法のおかげだろうことはすぐに理解できる。


「よかった…」


けれども安心はできなかった。

この地に津波が襲いかかるのに、もう猶予は残されてはいない。


「皆様急ぎ船へ向かいましょう!ここにいるよりも船に乗ったほうが安全です!」


トトラの一言に皆賛同した。ない力を振り絞り急いで船へと向かった。その距離が長く遠いものに感じられた。向かってくるキシュ達に気がついた乗船員達がすぐに駆けつけてくれた。


「皆様無事でよかった!!」

「船の状態は?魔法防壁の状態があまりよくないようだが…」

「先ほどの衝撃で防壁の強度が半分に…」

「半分…」


トトラが息をのんだ。

船にかけられた防御魔法は念には念をと何重にもかけられていたのにその半分が失われたことが信じられなかった。


「防壁魔法を補強します!あなた方は私とエンテのサポートを!!」


間髪入れずコロッツィオの…トゥルナの声が響く。


「母上様…」

「弱気になってはいけません!!次の衝撃はすぐそこなのですよ!!」


トゥルナの言葉が響く。

トトラはいつも通りの平静を取り戻し、皆々に指示をだす。乗船員達は了解の掛け声を上げ持ち場へ急いだ。


「私達も手伝う!!」

「しか…」


トトラは言いかけた言葉を噛み殺した。


「…助かります…。我らの力だけでは充分持ち堪えれません。」

「少しでも足しになるなら出せる力出すに決まってんじゃない!」


キシュの声にトトラは感謝した。


「お願いいたします!」


船の中央にある制御室の2階。天井がクリスタルのドームで包まれ、辺りを一望できる。

それぞれがトトラの適切な指示に従い、トゥルナとエンテを中心に魔力を注ぐ。水の力と大地の力を編み込んだ魔法防壁が幾重にも重ねられた。

後方へ向かい津波の状態を観察していたサマーティー。双眼鏡など必要はなかった。ほんの小さな音はすぐさま耳を覆いたくなるほどの轟音となり、小さな波はもはやそびえたつ壁の高さになってこちらへものすごい速さで向かっていたのだ。

あまりにも信じられない状況に目を疑った。震える手を動かしマイクに叫んだ。


「くるぞ!!!!外にいるやつは中入れ!!とにかく何かに掴まれ!!!」


目に見える範囲で外にいる船員達が中に入るのを確認し、サマーティーも急ぎ中への扉に駆け込んだ。扉にへなへなと力なく座り込んだ瞬間に激しい衝撃が船を襲う。投げ飛ばされる体。すぐに近くにあった手すりを掴む。

激しい揺れにただ耐えるしかなかった。数分経ち、揺れが落ち着いたことを確認し、サマーティーは魔法陣のある中央制御室へと向かうと、へとへとで首を垂れたみんなの姿が目に飛び込んだ。


「大丈夫か?!」


すぐさま皆のところへ駆け寄るとみんなが笑ってなんとかねと答えた。

他の船員達は泣いて大喜びしていた。


「国に戻るまでは気を抜くな…」


トトラの危機迫った低い声に皆が不思議に思ったがその理由はすぐに理解できた。

船員が操舵室から血相を変えて消え入る声で報告してくれた。


「船の残り魔力が…」

「あぁ…わかっている。」


防壁魔法のために注いだ魔力には残りわずかな船の動力も利用したのだ。そうでもしなければ沈んでいた。仕方のないことだった。


「この船は諦め、救援を要請する。」


報告に来た船員、その場にへたる船員。皆が何かを言おうとするも口を注ぐみ、グッと両手を握りつぶし、トトラの指示に従った。


「すまない…皆の理解に感謝する。」


その言葉に船員達が静かに涙した。

トトラは身に付けていた腕輪に手を触れ、通信を開始するとすぐに返信の声が部屋に響く。


「こちら管制室。」

「こちらトトラ。母上様達は無事だ。」

「トトラ様!ご無事なのですね!!!よかった…すぐにイザナ様達に報告を…

「待て。無事ではあるが船の動力が足りず戻れない状態だ。」

「そうですか…ちょっと待ってください。」


管制室の声が止まり、少しの沈黙。


「お待たせしました。今1番近いところにいるのはグビド様達の乗る飛空艇で、10分後にはそちらに着くことが可能と返事をいただきました。」

「わかった。こちらはこのまま待機している。」


通信が切られだと同時に皆の力が抜けていった。



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