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wonder hole -last player-  作者: にゃこ
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対峙-3


突然のシャザンヌ達の来訪。変わり果てたビッツの姿に驚くも、すぐに床に穴を開けジョージ達の方へ行ってしまった。しかし追いかけることはできなかった。目の前の脅威を止めることに集中しなければいけないのだから。ただただジョージ、フウゼツ、チェズの無事を祈るしかできなかった。エンテを追いかけず立ち向かうキシュ達を見て少し意外そうなシャザンヌは笑っていた。即座に動いたのはマリーだ。

コロツィオの中にいるトゥルナの力を受け取り放たれる津波がシャザンヌを襲う。しかし巨大な火の玉で身を包み攻撃から逃れるシャザンヌ。


「あんたの力ってそんなんだっけ?」


トゥルナ自身が放っていないとはいえ魔法は強力なものだ。それが効かない。トゥルナを焦りが襲う。


「これがあたしの力だと思ってるの?」


トゥルナは笑ってシャザンヌに言い放つ。


「いい?私のいう通りにやるのよ。」


マリーの右肩を強く掴み魔力を注ぐトゥルナの命令。躊躇するマリーに対してトゥルナは言葉を最後まで聞かず攻撃の指示をする。

先ほど放たれたものとは桁違いの大津波がマリーから放たれた。


「同じことの繰り返し?芸がないわね。」


シャザンヌが余裕の笑みを浮かべまた炎の球体で身を包む。しかし波は止む間も無く何度も放たれる。魔力を貰っているとはいえ、流石に連続して魔法を演唱するのはマリーの集中力と体力を削いでゆく。


「まだよ!」


限界に近いマリーなどお構いなしにトゥルナは指示を下す。マリーはそんな無茶に応えた。ここで止めなくてはいけない。大切な人達の顔が頭を駆け巡る。何としてでも止めたい。声が掠れても唱えた。


「これで最後よ!」


先ほどよりもより冷たい魔力が送られ、指示された通り静かに息を吹き出すとあたり一面冷気が包み水は瞬く間に冷たい氷へと変貌した。魔法を放ったマリーはもちろん、魔力を送り続けているトゥルナも肩を震わす。


「すげ…これが神の力なのかよ…」

「油断しちゃダメ。」


氷の世界へと変貌した空間に驚きを隠せないサマーティー。けれどもキシュの手の震えは止まらない。シャザンヌはこんなものではない。


パキ


それはとても小さい音だった。

しかし幾度も連鎖する音は次第にその場を包み込み大きな裂け目が走り、一瞬にして氷が砕け散った。裂け目から現れたのは余裕の笑みを浮かべるシャザンヌ。


「やっぱ弱くなってんじゃないあんた?」


伸ばされたシャザンヌの手のひらから勢いよく放たれる無数の炎。身を守るための魔法を唱えるも間に合わず、炎が襲いくる。


しかし炎がトゥルナやマリーに直撃することはなかった。サマーティーとキシュが2人を守ったのだ。サマーティーは巨大な剣を斜めに構えなるべく炎の直撃を避けた。キシュは立っていた2人を庇うようにして床へと滑り込んだ。身を低くしたお陰で炎の攻撃の直撃は避けることができた。しばらくして防御障壁の魔法が展開された。少しの余裕が生まれる。

サマーティーもキシュもかなりの傷を受けていた。キシュの掛けた防御魔法があったとは言え身を呈して守ったサマーティーの傷は深く重度の火傷を負っていた。耐熱性のグローブも所々燃えてなくなり代わりに真っ赤に腫れ上がる皮膚が除いた。

急いでコロツィオが回復魔法をかけるが、本来すぐに癒されるはずの痛みはなかなか取れなかった。それだけ強い魔法なのだ。


トゥルナは理解できなかった。アベドもトゥルナも条件は同じはずなのにアベドの力は衰えていない。確かにこちらはマリーを介しての攻撃なのだから依代から直接放つ魔法に比べれば威力が落ちるのは納得がいく。そもそも依代を介しているのだからどうあがいても本来の力を発揮などできるはずがないのだ。それなのにアベドは違う。


勝利に対して影を感じた。


トゥルナの気持ちをコロツィオが察する。


ートゥルナさん変わって。

ー?!何を言っているの?

ーやばいんでしょ?


トゥルナは沈黙した。


ーやってみたいことがあるの。だから変わって。



マリーの肩にコロツィオの手が優しく置かれた。振り向いた先にはトゥルナではなくコロツィオがいた。


「コロツィオ??」

「ねぇさんトゥルナさんの力を使ってみんなにできる限りの時空魔法使ってサポートに回って。」


驚いたもののコロツィオの強い眼差しをマリーは信じ、できる限りの速度魔法を唱えると目の前を流れる炎のスピードが落ちた。


「サマーティー!!キシュ攻撃に回って!!」


コロツィオの声に促されサマーティーの足が大地を蹴り上げ真っ直ぐシャザンヌに向かった。

サマーティーに迷いはなかった。シャザンヌの肌を切りつける刃。けれどもシャザンヌの周りを炎が守り思っていた以上に傷を負わすことができない。


手に力が入る。

出遅れるキシュはサマーティーのように迷いを拭いきれていなかった。

胸と目が熱くなる。

けれどもやらなければいけない。

足を踏み出し、溢れる迷いを吐き出すように、自分を鼓舞させるようにキシュは叫んだ。


振り下ろす刃の間からシャザンヌの微笑みに揺らぐ心を殺し大地を蹴り上げ振り下ろす刃。


しかし一瞬の揺らぎは隙を作り炎がキシュを襲う。時速魔法の効果がなければ直撃だった。


「キシュ!!!大丈夫か?!」

「大丈夫!!!!」


捨てたつもりの感情。けれども細かな粒があちこちに残って覚悟を阻む。

足が震える。頭を巡る優しく微笑むシャザンヌ。わかっている。あの微笑みが姉ではないことを。だからやるんだ止めるんだ。


キシュもサマーティーも必死に攻撃した。けれども炎が遮り傷一つすらつけることができない。それどころか隙を突かれ逆に攻撃される始末。これでは意味がなかった。

サマーティーが一旦後退しようと言いかけた時、コロツィオの声が響いた。

放たれる魔法は仲間を包み込む。

受けた攻撃はみるみるうちに回復してゆき、何十にも重なる防御障壁の魔法。

魔力と引き換えに展開される高度な補助魔法。


上がる息。ぼたぼたと落ちる汗。

トゥルナの力があるにもかかわらずコロツィオは自身の力だけでやり遂げた。それもこれもこの後トゥルナにはやってもらいたいことがあったからだ。静かにコロツィオは首につけていたネックレスを外した。


「キシューーーーーーーーーー!!!!!」


コロツィオの大きな声に驚いて振り向くキシュの瞳には投げ込まれたネックレスが映った。

蒼く輝く光を見た瞬間、トゥルナの思考が頭に流れ込んできた。


ー 体借りるわよ。



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