〓氷の巫女姫達〓
イコワは星が散りばめられた暗闇の世界にいた。足は勝手にあの場所へと進む。
雪を踏みしめる音が響く中ふたつの影があることに気がついた。イサラの両親。アリサとサト。
イザナに気がついた2人は力なく挨拶をした。
どんな言葉をかければ良いのかわからなかった。
長い沈黙の中アリサの声が響いた。
「イコワちゃん…貴方は知ってたのね。」
イコワの心は罪悪感で押しつぶされそうになった。もう知らないとは言えないのだから。
小さな声で答えるとアリサはイコワに尋ねた。
「あの子は幸せだったかしら…?」
アリサの言葉にイコワの記憶が呼び戻される。
「イサラは…」
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ここはつまらない。
イサラの口癖だった。
年がら年中花が咲き乱れて暖かい光で満ち溢れている。寝るときだってそう。外はほんの少しだけしか暗くならない。
イサラはこの地が嫌いで嫌いで仕方がなかった。
「イサラ〜待った〜??」
イサラは自分とは対象的な濃い藍のストレートのサラサラの髪をしている。物静かに見えてとても情熱的で好奇心旺盛な幼馴染。
偶然にも同じ日。
同じ時間に。
同じ場所で生まれた。
性格や見た目は全然違うけれども、何か深い絆を感じる。母上たちは運命ね。って笑い合っていたそうだ。
「待ってないわ。けれど早く行きましょ!トゥルナ様が待ってる!」
2人は急いで門へ急ぐ。
「イサラ様。イコワ様。用意は整えてあります。どうぞ。」
クーゼとフラウが待っていてくれた。トゥルナ様は外にある氷の神殿におられるので、出向く時には暖かな格好に着替えなければいけない。
クーゼとフラウはイサラとイコワの防寒具などを整え待っていてくれたのだ。
クーゼはイサラのフラウはイコワの付き人。
ソーサーは一人一人にサーの付き人がつく。
サーはソーサーより少しだけはやく年をとる。
そして、ソーサーと違って目が見えるのだ。
それはとても心強い。目が見えなくても生きてはいけるが、やはり視覚の世界は気になるもの。
2人は付き人に着替えを手伝ってもらい、門の外へ。吹き荒れる風に舞いあがる雪。
門の中とは大違い。イサラはこの厳しさが好きだった。歩いて移動というわけではなく、用意された魔法の車で氷の神殿へ向かう。神殿には魔物たちが門番をしている。ついこの間まで魔物達が暴れていたそうだが、イザナ様達によって手懐けられたそうだ。
奥へ向かい重厚な扉を開き広間に出る。
外とは違い少しばかり暖かい。
だだっ広い空間の真ん中に祭壇があり青色の宝石があるだけ。
クーゼとフラウは広間の外で2人を待っている。
「トゥルナ様!!」
2人は声を揃え意気揚々と宝石に話しかける。すると2人の脳内に声が響いた。
ーあら?おチビさんたち。今日はイノアは?
「今日はおばぁ様のお身体が優れないので代わりに来ました!」
ー…そうですか…
優しく悲しい声が響く。
イノアはトゥルナを体に宿せる巫女様。けれども大層年を取っている。
「今村では次の巫女は〜イサラってなってるんですよ〜!」
嬉しそうに話す自分に対してイサラはムッスリしてる。
ーどうしたのですか?イサラ。気が乱れていますよ。
「わたし…巫女にはなりたくないです」
トゥルナを前にして大胆なことを言ったので、イコワはアワアワしている。
イサラはとても正直者だ。嫌なものは嫌とはっきり言う。そう言うところを自分もトゥルナ様も好んでいた。
「あたしはここから出たいです!外の世界を見て回りたいのです!!」
「イサラぁ…」
「だって!本当のことだもん!」
クスクスと笑う声が響く。
ーわかっていますよ。あなたは昔からそうでしたね。あなたと話をするのはとても愉快です。
けれど残念だわ…わたしはあなたとお話しするのがとても好きなのよ?
トゥルナ様の言葉にまんざらでもなさそうなイサラは困った顔をしていたが、その話はすぐに別の話へと切り替えられ、楽しい時間が過ぎて行く。そして2人は神殿を後に村へ戻っていった。こうしてまた、他愛もなく一日が無駄にすぎる。
しかし運命の日はとうとうやってきた。
イサラのおばぁ様が危篤状態になってしまったのだ。もちろん次の巫女はイサラで全会一致。
継承の儀は明日執り行われることが決まった。
今まで揺れていたイサラの心の音がぴたりと止まったのを覚えている。だからすぐにトゥルナの元へ向かった。
案の定、その日の晩にイサラがトゥルナの元へやってきた。
「イコワ?なんでここに??」
「イサラのことならなんだってわかるよ〜!トゥルナ様に懇願しにきたんでしょ?」
「だからあたし先回りしたんだ〜」
「え?」
「あたしを巫女にしてくださいって」
「え…」
ー私としてはあなたがいなくなるのは寂しいですが…あなたのその夢を潰す方が嫌です。
「イサラ」
声が響く。
けれどこの声はもう自分の声ではない。
「イサラ。あなたはここを出なさいそして沢山のことを知り、あなたが思うように生きてみなさい。」
「いいのですか?!」
「えぇ。けれどもうこの地には戻ってこれませんよ?それでも良いのですか?」
「そんな!イサラ様!!ダメです!!」
横にいたクーゼは思惑が外れ、焦った顔を見せている。それはそうだろう。許してもらえるとは到底思えない願いだったのだから。
「クーゼ…ごめんね。ここから出て外の世界で生きたい…」
「イサラ様…イサラ様がいくと言うのなら僕も行きます!」
イサラは心配そうにトゥルナにクーゼも同行できるか頼む。
「わかりました。それでは行くのです…」
イコワは杖を掲げ呪文を唱える
「あなた達にはこの地について他者に漏らすことを禁止します。」
イサラとクーゼはこくりと頷く
「それでは行きなさい。我が子よ…」
そうして2人は転移魔法によってこの地をさった。
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あれからほんの少ししか時間は立っていたない。
けれどもイサラは後悔なんてしてない。
それは自分が1番わかっている。
彼女は自由に飛ぶことを望んだのだから。
だから断言できる。
「イサラは幸せだったはずです。」
イコワの力強い言葉にアリサは涙を流しありがとうと小さく呟いた。




