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wonder hole -last player-  作者: にゃこ
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始まりの合図-4


あれからすぐにイトワの使いがやってきて、皆回復措置室へ向かった。回復措置室にはイザナやイトワも待っていた。

全員が来たことを確認し、イザナがコロッツィオにの方へゆっくりと静かに近寄りピタリと止まった。


「…偉大なる母上様…。なぜ死んだはずのイサラが私達に攻撃を?」


震えるイザナの声が響いた後すこしの沈黙が流れ、コロッツィオの静かな声が場を包む。



「全ては私の責任よ。貴方達を偽りイサラを外の世界へ出したのは私…」

「違います!!私が!!私があの時…」

「イコワ…いいの。あれは私が決めたことなの。」

「トゥルナさま…」


イコワの今にも泣きそうな声。

優しく感謝を伝えるトゥルナ。

だれも反論などできなかった。

曇りのない答えを誰が否定できるだろうか?

けれども心は?気持ちはどうだろう?


イザナにはできなかった。


悔しい気持ちで胸が溢れ目や鼻が熱くなっていく。沢山の言葉を吐き出したくてたまらない。けれども理性がそれを許してはくれなかった。手を力一杯握るしか捌け口を見つけることはできなかった。


「…わかりました私情を挟んで申し訳ありませんでした。本題に入ります。今回の件…レルエナが我ら…ソーサーを排除することが目的だと想定しますがどうでしょうか?」

「そう判断したのは?」


チェズの質問にイザナは今回の内部被害を説明してくれた。その内容は決して冷静に説明できるものではないのに。

説明を聞いてキシュの頭は混乱した。

疑問が次から次へと襲ってくるのだ。けれどもその答えは決してこの場では得ることができない。そう。討論しても無意味だった。わかっていることだけを整理するため口を開ける。


「レルエナが魔力の強いソーサーを排除しようとしてる…。邪魔だから?」


その言葉にグビドは疑問を投げかけた。

ソーサーは強い戦力になりうるはず。現にキシュ達が戦った相手は相当な魔力を持っていたのでは?とその疑問に皆困り果てる。


「殺されるにしろ、連れて行かれるにしろレルエナは今後も我らを襲撃する可能性は高い。」


イトワの発言は最もだ。


ソーサーが邪魔であれ利用価値があれ襲われるのは明白だ。ではなにができる?

守りを固めるしかない。


「けれども今は結界を張り直してるしそれを壊すことができる敵もいないから平気じゃ?」


キシュの問いかけにトゥルナが答えてくれた。


「今のままでは無理よ。私とチェズで補強したと言っても前のような強さは無いわ。だからレルエナがあの化け物を放ってもこちらは無視はできない。」

「えぇ。分かっています。私達はこの地で戦わなければいけないのです。マクリア・メソンへの同行、レルエナへの侵入は予定より数を減らす必要があります。」


イトワの発言は最もだ。

ソーサーのサポートはこうなった以上期待できない。


今対処しなければいけないのは

マクリア・メソンでアベドを止めること。

その間に化け物の製造を叩くために侵入しているミンキュとミリョウのサポートをすること。


当初マクリア・メソンへはキシュ達とアリナ含む少数の精鋭が向かい、ミンキュとミリョウのサポートにグビドとイザナを含むソーサー達が向かう算段となっていた。

けれども今回のことを考えると編成を考えなおさなければいけないし、レルエナが行動を起こしたのだから今すぐにマクリア・メソンに向かわなければいけないことは皆わかっていた。


「発言よろしいですか?」


重たい空気を切る低く落ち着いた声。

みんなの視線の先にはマリーの横に立つ見ず知らずの男性。


「えぇ。けど貴方は?」

「私はポリアン国・国王代理クュオと申します。」

「何言ってるの〜!!国王じゃない〜!!」

「いや。私は君の代わりだ。」


間髪入れずつっこむマリーに律儀に答えるクュオ。同じやりとりが繰り返されるなかキシュが止めに入る。


「失礼しました。我らザルアも共に戦います。」


クュオの言葉にグビドが驚いた。

レルエナとポリアンは同盟を結んでいる関係。この状況下で同盟破棄をすることは命綱を自ら切り離すことと同じだ。なぜ今になってこんな行動を取るのか理解できずクュオに質問を投げかけると表情を変えずにクュオは言葉を返した。


「今レルエナはオーランソの脅威です。クロノアの件もありますが、私たちも化け物の恐ろしさを身をもって感じています。形ばかりの同盟関係がいつ蔑ろにされるかわかりません。諸国の王達と協議し我らザルアはレルエナを止めることを決めました。」


それはとても心強い言葉であった。

ザルアの力を借りれるのであれば、だいぶとこの地を守る兵力が確保できる。


「助かります。それでは我らは今後のことを話しましょう。」


そう言ってイトワとクュオはその場から離れることとなった。


「それでは私はこれで失礼する。マリー必ず帰ってきてください。」

「大丈夫だよ〜!!指切りしたじゃ〜ん!」


自信満々に左の小指を見せるマリー。

その表情に安堵するクュオもまた左の小指を見せた。笑顔でクュオを見送るマリーにキシュ達は追いつけていない様子。部屋の扉が閉められるとすぐに質問の嵐にマリーは驚くも答えてくれた。


「えっと〜クュオはあたしの旦那さんになる人なの〜。」


さらりと恥じらいもなく答えるのでそのまま流してしまいそうになったが「旦那さん」という単語に驚きを隠せなかった。クュオの存在を知っていたジョージですら驚いた。


「ねねねねねねぇさん!!!それって…それって…」

「うん!全部終わったら結婚するの〜」


幼年の子供が話してくれるようなノリで答えるものだから、みんなマリーが結婚がどんなものなのかわかっているのか不安になってしまったけれども、当の本人はそんなことお構いなしでニコニコしているのでまぁどうにかなるんだろうという空気があたりを包むなかイザナの咳が響く。


「そろそろよろしいですか?」


あまり機嫌の良くないイザナに皆竦んでしまう。


「ミンキュ、ミリョウから連絡がありました。やはりシャザンヌは動いたようです。私たちもマクリア・メソンに向かう必要があります。」


一気に重たい空気がのしかかる。

自分の力が通用するのか不安しかなかった。


「マクリア・メソンへ通じる道は幸いにも完成間近です。準備が出来次第道の入り口へ向かってください。ところで…偉大なる母上様はコロッツィオを巫女とされるのですか?」


イザナの反抗的な視線につられてみんながコロッツィオに視線を移す。いろんなことが怒涛のように起きて誰も突っ込むことができなかった。


視線の先にいたのは透き通った青い瞳のコロッツィオ…そうトゥルナがいた。


「えぇ。そのつもりよ。」

「しかし、母上様の力を存分に出すには我らソーサーが一番なのでは?」

「えぇ。そうね。けれどもこの子の体も悪くないわ。それに…この子もそれを望んでいる。」

「しかし!!」

「私に指図するつもりか?」


冷たい言葉が場を凍らす。流石のイザナも強く出ることはできなかった。すぐに首を下げる。


「イコワとも話はついている。あの子にはこの地をお前と共に守ってもらいます。いいですね。」


「…わかりました…」

「ちょっと待ってよ!話しについていけないんだけど!!」


重たい空気を断ち切るキシュの声は戸惑っていた。

コロッツィオの体にトゥルナが入る?コロッツィオもそれを望んでいる?全く理解ができなかった。トゥルナはにっこり笑ったかと思うと急に瞳が緑に変わった。コロッツィオの苦い笑顔。


「コロッツィオ…」

「みんなと戦うなら…力がないと無理じゃない?だから…」

「だからって!!そんな軽く決めていいの?!」

「軽くないよ…。」


少し寂しそうなコロッツィオの言葉にこれ以上責めることはできなかった。

誰がみたってコロッツィオは強くなった。

けれどもそれでは足りないことを誰よりも理解しているのはコロッツィオ本人だ。

いろんな思いがよぎる。

危険な目に遭ってまでなぜここまでしてくれるのかキシュには理解できなかった。けれども止めることはできない。コロッツィオの決めたことだから。


「…ごめん…」


「謝るのはあたしの方だよ。勝手ばかり言ってごめんね。だから…ね。泣かないで。」


コロッツィオの言葉は溜まっていた涙を溢す。


「キシュってば泣き虫なんだから。」


そんなんじゃない!って言い返してもクスクスと笑われてしまった。


「本当にこれはあたしの勝手なんだ。キシュが負い目を感じることはないんだよ。」


ニコリと微笑むコロッツィオにわかったとしか返事できなかった。

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