高みへ-3
「降参です〜。こんな短期間でここまで成長するなんて〜流石です〜」
「そんなこと言って…まだ本気出してないじゃない…」
息切れをするキシュの問いにイコワは笑って答える。
訓練を始めてそろそろ2ヶ月が経つ。
魔法の扱いにも慣れ、イコワとの対戦形式の特訓もある程度押す勢いにまでなった。魔力レベルはそこそこあげることができたと実感していると、イコワからサマーティー達と一緒に体力トレーニングの開始を告げられた。
これに関してはなまった体を元に戻すのと同時に、サマーティー達の魔法耐性をつける訓練とのこと。
久々にグビドの鬼対応に恐怖と懐かしさを感じる日々が続いた。
コロッツィオはその間魔法の強化がしたいということで、イコワと引き続き特訓をしている。たまに合流して対戦訓練もしていて、今日が二度目の対戦訓練だ。
くじ紐を握り締めながらグビドがチーム分けを促す。初めての訓練では皆の能力を見てチームを決めていたが今回はランダム。しかもよくよく見ると5人しかいないのにくじ紐の数がおかしい。倍はある。
そう。何チームできるのかもわからないし個人戦になるかもしれない…。運に頼るしかない。そんなハラハラな状態でも皆落ち着いていた。
一斉に引かれるくじ。
揺れるくじ紐の色を見てグビドが笑う。
「おー。バランス悪いな。」
守る事を得意とするコロッツィオにサマーティー。素早さはピカイチだが攻撃力とサポート力がもひとつなフウゼツにキシュ。
そして最後にバランスの良いジョージ
「ひとまずコロッツィオ・サマーティーとジョージでやってみるか。制限時間は10分だ。」
訓練室は広く天井も高い。
どこまでも続く白い空間にイコワが結界を敷き境界線を作る。
開始の合図とともに始まる戦い。
コロッツィオの防御魔法が敷かれる。
与えられるダメージは減ることが分かっているのにジョージは腰を落とし空高く飛び立つ。
こうされてはサマーティーは手が出せない。
「くそっ!」
逃げ回り照準から逃れるしかない。
サマーティーは今の地点からなるべく離れようと駆け出す。
空から一直線に振り下ろされるのであればそれは有効であっただろう。けれども違うのだ。ジョージの体を空で捻り、槍を思い切り振り回す。
「っ!!」
風の刃は広範囲に降り注がれ、コロッツィオとサマーティーを襲う。魔法防御壁もかなり削がれる結果となっている。
「すご…」
「僕の攻撃からヒントを得たそうです。」
にっこりと嬉しそうなフウゼツ。
しかし急に顔を真っ赤にして恥ずかしそうにした。
「ど…どうしたの??」
「いえ!…思えばキシュさんとはあまりお話ししてなかったので!」
「そういえば…」
思えば一緒に訓練をしたと言ってもゆっくり話すのは初めてだった。
「まぁペアーだし仲良くしましょ?」
「あ!はい。」
「確かにあの攻撃はフウゼツよくやってたね。」
「えぇ。かまいたちって言うんです。ジョージさんとペアーになった時に見よう見まねでやったらできたそうです。」
「見よう見まねって…」
「凄いですよね。」
きっとジョージのことだ。1人で訓練したんだろう。あんなに怪我をしていたのに…
「ほんと…凄い。」
ジョージとサマーティー達の戦いは明らかにレベルが上がってる。使える技も増えてるし、なによりも洞察力が上がっている。何が弱点なのかどこを付けばいいのか。よく理解して行動している。感に頼っていた時とは比べものにはならない。
ジョージから繰り出される攻撃は一点集中に広範囲攻撃とバラエティーに飛んでいる。だから次の攻撃の予測が難しいだろうに、ちゃんとサマーティーは行動を読み、コロッツィオを守りながら攻撃を仕掛けている。
サマーティーも動きが以前より滑らかになっているように見える。繰り出される刃はスピードが上がっている。
鋼と鋼がぶつかり合う音。
攻撃の手が止まると次はジョージの槍がサマーティーを襲う。軽くリーチが長い槍が連続で繰り出され、サマーティーは大きな剣を盾にして防ぐしかできない。しかしそれでは後ろがガラ空き。そこはすかさず槍を軸にしてサマーティーを飛び越え攻撃を仕掛けるジョージ。
「終了だ。」
グビドの声が響き結界が解かれる。
「あたたた…」
背中をさするサマーティー。攻撃が当たったと言うのに傷はそこまで深くない。
「防御障壁解けてると思ってたのに…」
「解けかけてたから、二重でサマーティーにかけといたの。」
得意げに笑うコロッツィオ。
「しかも治癒魔法もかけてくれてるしな…。すげーよ。ありがとう。」
「サマーティーだって私のこと守ってくれてたじゃん。ありがとー。」
ワイワイ感想を言い合ってる中、グビドがタバコを加えながら近づくとピリッとした空気になる。
「楽にしろっ。楽に」
ひらひらと手ふるも、辛辣な言葉を投げるグビドに緊張せずにいられない。
「ジョージなかなかいい判断だ。それにサマーティーの重い攻撃にも耐えれるようになったな。」
「はい。」
「サマーティーもだいぶスマートになってきた。後もうちょいってとこだな。」
「はい。」
「コロッツィオはかなりいい線いっているから自信持っていいぞ。」
「ありがとうございます!」
「けど物足りなかったんじゃないか?」
「!」
コロッツィオの顔を見れば本心はすぐにわかる。それもそうだ、守ることを専門としているコロッツィオが守られていたのだから。
「今度はジョージと組んで、フウゼツ・キシュと対戦するか…ジョージ行けるか?」
「少し休憩が欲しいです。」
「もちろんだ。5分後に始める。いいか?」
勢いのいい返事が返ってくる。
「俺はあまり守ってやれないぞ?」
「うん!大丈夫!あたしがジョージのこと守るから!」
ジョージの言葉にコロッツィオの男前な返事。
思いがけない言葉に吹き出す。
「心強いな。」
満足げなコロッツィオ。
「フウゼツとあたしって凄いタイプが似てると思うの。」
少し心配そうにジョージとコロッツィオを眺めるフウゼツにキシュの声にハッとする。
「そ…そうですね。僕たち攻撃は軽めだから…サマーティーさんのように一撃必殺は難しそうですね。」
「えぇ…だからあたし達はあたし達にしかできない戦いをしましょう」
その強い眼差しはフウゼツの勇気を奮い立たせるには十分だ。
「…ぼくたちなりの戦い…」




