〓花と風−4〓
それからというものグビドの心はポッカリと穴があいたようだった。イザグをレルエナ帝国に迎え入れ、数日後ソーサー約20名と引き換えに帰って行った。
去り際にイザグと話す機会があったが、少し顔色が悪かったように見えた。
イザグは生贄とした同胞にどうか無礼の無いようにと念を押していった。
イザグはこれ以上のソーサーの露見だけは避けて欲しいとたったひとつだけ願ったようだ。その願いを女王は快く承諾したらしい。
イザグが去った後に待っているのは、いつも通りの生活。周辺の魔物討伐。鍛錬。仲間達との酒盛り。
ただ違うのは彼女から貰った腰紐を見つめ、1人酒をのむのが一日の締めになったことだ。
そんな日々が続くものだから、周りもいつもと違うことに気がつき始めた。特に同じ部屋に同居しているジョシュアとゼティアはすぐにその異変に気がついた。
溜息を時折吐きながら訓練をする姿を遠くから眺める2人。
「なぁなぁ。グビド変じゃないか?」
「ゼティアも思っていたのか?俺もだ。」
「そりゃそうだろ。どう見ても心ここにあらずじゃないか。」
「ソーサーの地から帰って来てからか…」
「何か会ったのかなぁ?まさかあっちの女に惚れたとか!」
「やめろよ。そんな冗談!グビドが女に惚れるなんてことあるか?」
「ははは!ないか。あ!ロングッド!ちょっと。」
ちょうどジョシュアとゼティアの前をロングッドが通り過ぎると、尽かさずゼティアは呼び止める。
「あ。はい!なんでありましょうか!」
「堅苦しいのはなしだ。楽にしろ。」
「はい。」
「この頃グビドの様子が変だが、お前何か知らないか?」
ゼルベルダの問いかけに、ロングッドはわかりやすく気を落とす。
「どうしたんだ?なんで君が気を落とすんだ?」
「やはりお二人にも隊長が変なのわかりますか?」
「わかるに決まってるだろ。」
ゼティアが即答すると、ロングッドは重く大きなため息をひとつ。
「失恋ですよ。」
「え?」2人の声が重なる。
まさかの予想だにしなかった答えに言葉を失う。
「だから失恋ですってば!初めっからわかっていたことなのに…。」
ロングッドは2人にソーサーの地で起こったことを話すと2人とも大興奮。
まるで御伽話を聞かされているようだった。
「そ!それって絶対両想いじゃないか!!!まさかあのグビドが!!」
「しかし。可哀想な奴だ。始めての恋が結ばれないってのは…。」
「本当ですよ…。だから私は何度も釘を刺したのに…。隊長があんなんだと、隊員は不安になってしまいます。」
「お前も何かと苦労するなぁ。」
「はい…。」
「今夜あたりにうまい酒持って行こう。いくらかましにはなるだろう。」
「ありがとうございます。ジョシュア様。」
ジョシュアの左手首の腕輪が赤く光る。女王からの呼び出しだ。赤は緊急の用事。
ジェナシスは急ぎ女王の間へ向かう。
女王は困った顔で手紙を読んでいた。
「魔導部隊長 ジョシュア殿到着です。」
「うん。通せ。」
女王はジェナシスを招き入れる。
「被験者達はどうしてる?」
「特に問題はありませんよ。ちゃんと発情期のものたちです。交配実験も予定通り行うつもりです。」
「そうか…。」
「どうしたんです?珍しく困っていらっしゃいますが。その手紙のせいですか?」
「えぇ。ソーサーからの手紙。」
「ソーサー?」
「えぇ。」
差し出された手紙を読むジョシュアは笑みがこぼれる。
「どうした?なぜ笑う?」
「これはお受けになっても良いと思います!いえ!お受けすべきです。」
「しかし、リスクがあるぞ。」
「問題ないでしょう。あそこが発見されることなどありえません。それよりもメリットのほうがでかいですよ。これをきっかけに同盟を迫ることもできます。」
「あり得ない。という言葉ほど信じれないものは無い。…がやはりメリットの方が大きいわね。早速返事をだしましょう。」
「はっ。」
女王の間を出るや否やジェナシスはガッツポーズをとった。
今日は宴会だ!盛大に祝おう。




