〓花と風−3〓
朝の光が眩しい。中庭で一人ボンヤリたたずむグビド。のどかな光。鳥たちのさえずり。目をつむり堪能していたときだ。自分に向かってくる殺気に驚き、構えを取る。
「さすがね。隙がないわ。」
彼女の声だが、ちがう。
「君は…」
「イザナよ。ひとつ教えて欲しいことがあるの。」
「なんだ?」
「パソナとマキナは相性の悪い種族だってスー・ズー様から聞いたことがあるの。あんたマキナでしょ?それなのになんでパソナの国に使えてるわけ?」
「俺はパソナに従っているわけじゃない。彼女に従っている。」
「彼女?…あぁ女王のことね。」
「そうだ。彼女はすべての種族の垣根を気にせず平穏な世を作ることを目指している。階級ではなく、能力で人をお選びになる。まぁ、俺が彼女に仕えているのは単に感だがな。」
「…そうね、貴方は自由を貴ぶマキナですもんね。」
「まぁ。そういうことさ。どちらが面白そうか?って考えた結果さ。ところでなんでそんなことを聞くんだ?」
「なんとなくよ。」
「なんとなく…か。殺気を渦巻かせてやってきたってのに変だ。」
冷静なイザナは顔色ひとつかえない。
「あたしは貴方を恨むわ。」
「え?」
イザナは静かに去って行った。
何がなんだかわからないグビド。
なぜ自分が恨まれなければいけないのかもわからなかった。
それからして、パタパタとイリナが小走りでやってきた。
「グビド!こんなとこにいたんですね!」
− まずい胸がまた疼いてくる。
「どうした?」
「グビドに見せたいものがあるんです!来てもらえますか?」
断ろうとしたがそれは無理な話だ。こんなに嬉しそうに楽しそうにしているイリナを悲しませたくなかった。
「…いいぞ。」
「本当ですか?!こっちです!」
笑って駆け足で手を引くイリナは城の側にある塔の魔方陣から魔方陣へと移動する。始めての魔方陣での移動は少しなれない。はじめは立ちくらみがした。
イリナが心配してくれる。大丈夫だと言うと、嬉しそうに笑う。胸の鼓動が早くなる。
「つきました!!ここです!」
目に飛び込んできたのは一面に広がる星空と舞い上がる花びら。
外の世界と結界の世界の境目は空は暗闇が、地面は光と花々が支配している。こんな幻想的な世界は初めてだ。芸術だとかに疎いグビドも、呆気にとられるほどの美しさが広がっている。言葉が思い浮かばない。
「気に入っていただけましたか?」
「これは?」
「私とイザナの秘密の場所です。綺麗でしょ?」
「あぁ…。」
ニコリと笑うイリナ。
押し殺していた気持ちは抑えることができないのをグビドは感じた。
あと数時間すれば、永久に彼女には会えない。だからこそだったのかもしれない。
「?グビド?!」
イリナを包み込む大きく暖かな腕。鼓動が聞こえてくる。身体中の力が抜けて行く。グビドが腕を離した途端に、ヘナヘナと座り込んでしまった。
「だ。大丈夫か?」
「あ…あ。い…いいえ。あ。はい…」
耳まで真っ赤になっている。グビドはイリナにひざまずく。
「勝手だとは思うがすまない。」
「…」
「二度と合うことは出来ないが、…忘れては欲しくない…。これを持っていてもらえないだろうか?」
グビドは左手首のレザーアンクレットを外しイリナの右手にそっと置いた。
「こ…これは??」
「お守りみたいなもんだ。すまない…きらびやかなもん持ってないんだ。これしか渡すことができない…」
武道と酒にばかり夢中になっていた自分を恨んだ。こんな小汚い物しか渡せない自分は惨めだ…。けれどイリナは予想に反して喜んだ。
「嬉しいです!!すごく…嬉しい。」
「…そうか…。良かった。」
赤と青の美しい宝石がついた腰紐をイリナは急いでとって差し出した。
「おれにか?」
小さくコクリとイリナは頷く。
「ありがとう。」
再び大きな腕がイリナを包んだ。
今度は小さな腕もグビドを包んでいる、
ほんの少しの時間が今は大切で…大切で仕方が無い。あと少しだけ時間が欲しい。けれどもう戻らなければいけない。
グビドは抱きしめあった体を離し、軽く口づけをして立ち上がる。手を差し伸べ、イリナも立った。
「行こうか。」
「…はい。」




