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wonder hole -last player-  作者: にゃこ
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〓花と風-2〓


自分を呼ぶ声が聞こえる。

この声はさっき助けた少女だろうか?

重たいまぶたをゆっくりと持ち上げ、あたりを見回したが、誰もいない。


「……夢か?…っつー。」


受けた傷が疼く。

手を伸ばそうとすると何もないのにぶつかった感覚。グビドは自分が光の球体に閉じ込められていることに気がついた。もう一度あたりを見回す。

何もない。

部屋はただ白い空間だけが広がっている。


− ここはどこだ?ロングッドがいない。


部屋が突如暗くなり、急上昇する球体。立ち上がろうとしていたグビドの体はバランスを崩してしまい、滑って尻餅をついてしまった。痛みで立ち上がることを諦める。


「どうなってんだ?」


突如訪れた暗闇は突如として去り、激しい眩しさがグビドを襲う。反射的に右腕で目をかばう。



「侵入者二名お連れいたしました」

「うむ。」


右腕をゆっくりと下げ、声のする方に目をやった。そこには高齢のルラとパソナ、そしてその左脇にルラとパソナの少女。右脇に俯いたパソナの少女が立っている。


− …いや。あのパソナのようなのがソーサーだろう。


「隊長!」


左からロングッドの声がした。

すぐ横にいるルラが睨んでいる。これ以上話すことはできなさそうだ。グビドは感じた。こいつらがあの罠をしかけたんだと。


「何故この地にやって来た?お前たちは何者だ?」


高齢のソーサーがグビド達に問いかける。グビドはロングッドに視線を送る。ここからグビド達の仕事が始まるのだ。


「我名は、グビド・ラルフレッド・ハワード。我らはレルエナ帝国女王レルナの命によりこの地を訪れた。ソーサーの長よ。危害を加えないことをここに誓います。」

「レルエナ帝国…。パソナの国か。」


高齢のソーサーはため息をひとつ。隣にいたルラに目をやる。ルラが一礼すると、2人を閉じ込めていた球体は消えた。


「いかにも私がソーサーの長・イズグである。して、強欲なるパソナの女王が我らソーサーに何のようだ?」


イズグの発言はロングッドの気に触れ、今にも噛みつきそうになるのをグビドは左手を差し伸ばし抑える。


「女王より預かりしものです。」


胸の内ポケットから文を取り出し、近くにいたルラに渡した。そしてイズグの隣にいたルラへと渡され、文の内容をイズグに伝える。イズグは呆れながらグビドの方に顔を向ける


「我らに生贄を差し出せと?」

「我々は略奪を避けたいのです。お返事は?」

「聞くまでもないだろう。受けよう。」


すんなりと承諾をもらえたことに、グビド達の肩の力は抜ける一方、ソーサー達は不安の空気に包まれる。


「お父上!!生贄とは?!一体何が記されていたのですか?」


左側のソーサーの少女がイズグに喰いかかる。


「ソーサーの男子、女子10人づつを引き渡せとある。」


その場にいる者は声を押し殺す事が出来ず、騒めきだった。少女の顔面は蒼白になったかと思えばすぐに真っ赤になり、鬼のような形相へと変わってゆく。


「それを引き受けられるのですか?!なぜ?!!!何のために?!」

「レルエナ帝国の繁栄のためとある…。私達の魔力が狙いだな。」


グビドは首を縦に降り、イズグはため息をついた。


「なぜ私達の存在がわかったんだ?」

「女王の命です。私はそれ以上知りません。」


イズグの隣にいたルラは嘆いた。


「どういことだ?我々の存在を何故知っている?」


その疑問はグビド達も同じだった。

けれども皆、全知全能な女王だから知っているのだと終わらせるのだ。だからレルエナでは疑問は湧かない。それに女王に問いかけたところで、何も答えてはくれないだろう。だからその答えはだれもわからない。


「漏れたものは仕方が無い。レルエナは今やオーランソ大陸をほぼ全域支配するほどの大国だ。ここで拒めばこの地が血に染まるのはわかりきっている。」

「そんな…私達の魔力でどうにかならないのですか?父上…」

「どうにかならんわけでもない。しかし、要求された数以上の被害は確実に出るだろう…」


自分たちの力が強い事を誇りに思うが数が少ない。

オーランソ大陸全土となれば数で圧倒的に不利になるのはわかり切っていた。

頭では理解できても悔しさが勝る。

行き場のない少女の小さな拳は震える。


「だがこちらにも条件はあるぞ。」

「…それは女王に直接お願いいたします。」

「なに?」

「貴方にはレルエナに来ていただきます。」

「貴様!!!どこまで我らを侮辱するつもりだ!!」

「だめ!イザナ!」


少女の怒りは流石に我慢の限界に達し、は怒りで杖を降ろうとしていた。それをさっきまで俯いていた少女が止めた。


「どうしたの?!イリナ!何で止めるのよ!?」


目の前にいる少女に驚きを隠せないでいた。

グビドもロングッドも驚いて目が丸くなる。


「なんでお前が…」


グビドの声が漏れる。

その言葉は今度はソーサー側を驚かせ、イリナの頬がうっすら赤くなった。


「?どう言うことなのだ?なぜ君が娘を知っている?」

「…父上。この方が私とルフラを助けてくれたのです。」


イリナの言葉はソーサー側を困惑させた。

流石のイズグも困惑している。


「…君はイリナの命の恩人か…なんとも言えぬ気持ちだ。…しかし、礼は言おう。我が娘を救っていただき感謝する。」


イズグが深々と一礼をするとその場にいた全員が頭を下げた。グビドとロングッドもつられて深々とお辞儀した。


「レルエナに向かう件は了解した。一度女王を見たかったことだ。いつ旅立つ?」

「明朝にでも出発すれば、夕刻には後方部隊のところに着くかと…」


イズグはイリナの顔が曇ったのを見過ごさない。


「後方部隊はどこにいるのだ?」

「この大陸の最南端に位置する海になります。」

「それなら私達の魔法ですぐにつく。出発は昼をすぎてからでいいであろう。よいかな?」


グビドは了解すると、イズグはルラに耳打ちをして部屋をでた。


「お二人のお部屋を用意いたします。それまでの間城内でもご覧になっていてください。案内は私・アーディスがいたします。」


イザナは不機嫌そうにイリナは喜んで部屋を後にした。


「ではまいりましょう。」


アーディスは2人を連れて城内を案内した。暖かい夕日が窓から漏れている。どういうことだろう?

確かにここは氷の世界。暗闇の世界のはずだ。しかしどうだろうか?光が満ち溢れ、木々が多い茂っている。アーディスはグビドをみて笑った。


「不思議に思われるのも無理はありませんね。」

「これは貴殿たちの魔法なのか?」

「それはお教えできませんが。まぁ魔法ですね。」

「本当に凄いのだな…。」


グビドは心底感動していた。その言葉に裏表がないのは誰にだってわかる。アーディスはまた笑った。


「どうしたのですか?」

「ふふ…。失礼いたしました。貴方は美しい心をお持ちなのですね。」


ロングッドが誇らしく笑った。


「自分の気持ちに正直なだけですよ?そんな…心が美しいとかいうもんじゃありません。」


グビドは照れて笑う。


「貴方のような方が伝令にこられて良かったと安心しております。」

「それを見越して女王は私を向かわせたんでしょう。私はウケがいいみたいですから。」

「あなた方の主はそこまで考えられていたのですか…」

「…えぇ。私も時に恐ろしく感じます。あの方の策は隙がありませんから。」


部屋の支度が終わったようで、三人は客間へと向かって行った。




「イリナ!どうしちゃったの?あなた何だかいつも以上にボンヤリしているわ。まさかあのでっかい奴のせい?」

「デカイやつだなんて!グビドよ!イザナ。」

「やだ…イリナなんであいつを名前呼びしてるの?あいつは敵の手先よ。略奪が嫌だのいってるけど、結局は略奪者よ。」

「イザナ…。グビドを悪く言わないで。お願い。」


イリナが怒っているのはすぐわかる。

イリナの心は奪われてしまったのだ。

イザナは確信した。


「イリナ。あいつの事好きなの?」

「そ…そんなんじゃない…と…」


イリナはまだ自分の気持ちに気がついていない。

けど時間の問題だ。きっとすぐに気がついてしまう。


豪勢な食事会が開かれ、グビドとロングッドの腹はみたされていった。廊下を歩いていると前からイリナがやってきた。


「あ。」頬を染めるイリナ

「どこにいかれるのですか?」すかさず聞くロングッド。

「ルフラの様子をみに行こうかと…。」

「あの時のルラのところか?」心配そうなグビド。

「は…はい。」

「あの後どうなったか心配していた。俺たちも一緒にいってもいいか?」

「あ!は…はい!ルフラもよろこびます!ぜひ!!」


三人は城を抜け、森へ入っていた。深い森の中にひとつの灯り。イリナは小さな小屋の扉をあけると老婆が迎えてくれた。


「スー・ズー様。ルフラの様子はどうですか?」

「これはこれは!イリナさま…とこちらは…?」


スー・ズーは興味津々に2人を見えない目で見る。


「あ。こちらの方々は私達を助けてくださった。」

「グビドです。実際に助けたのは私の部下のロングッドですよ。」

「いえ。隊長が見つけたおかげで助けられたのです。」

「おやおや。あんたさま純血のマキナだね。そして、こっちは不思議な血だね…」

「?なんでわかるんだ?」

「私のばぁさまからマキナ・パソナ・ルラの特徴を教えられたもんでね。マキナは素朴で柔らかな気を放っているんじゃよ。あんたはそのお手本みたいな気をはなっておる。」

「こいつはどんな気をはなっているんです?」


グビドはロングッドを指差し、興味津々でスー・ズーに尋ねる。ロングッドはやめてください!とグビドの指をはらう。スー・ズーは笑って応えてくれた。


「ルラのようにキラキラと眩しいんじゃがパソナのように固い。その気からはさざなみの音がきこえる。」

「そういえば、あなたから不思議な音がきこえますね。」イリナもスー・ズーに同意した。


グビドも少し納得した。


「こいつはルラの血が入った珍しいパソナだ。」

「私達の先祖は海洋民族なので、波の音がするんですかね?なんだか嬉しいです。」


「あの!スー・ズー様!ルフラの様子は…」

「あぁ。大丈夫じゃよ。処置が早かったおかげじゃよ。一週間は安静が必要じゃがな。今も寝ておるよ。」

「そうですか。良かった…。」


スー・ズーはルフラのところに連れて行ってくれた。眠っているルフラ。安心するイリナをみて、グビドもホッとした。


三人はスー・ズーの家を後にし、城へ戻ろうとした。


「あ。すみません。スー・ズー殿のところに忘れ物をしてしまいました。」

「何をしている…待っててやるから取りに行って来い。」


ロングッドは急ぎ足できた道を戻っていく。


「あの…もうここには戻ってこられないのですか?」

「ん?そうだな。」

「そうですか…。」


しょんぼりとするイリナの頭。なんて小さいんだろう。手のひらに収まりそうだ。


ポンポン


「ありがとう。」


グビドの言葉に驚くイリナ。


「え?」

「お前がいなかったら、こんなにうまくはいってなかった。」

「そんな!あたしはなにもできなかった…。貴方が罠にかかったときいて、急いで止めようとしたのに…間に合わなくて…。」

「とめようとしてくれたのか?」


「はい…。」


申し訳なさそうなイリナ。グビドはこんなに自分のために頑張ってくれる女の子を知らない。始めて見る自分を心配してくれている女の子。なんなのだろう?胸がキュッとなる。なんだこれは?


「あ…ありがとう。」

「そ…そんな…。」


微妙な距離。長い沈黙。

早く帰って来い!グビドは心で叫んだ。それから少ししてロングッドは笑って戻ってきた。


「すみませーん!」

「遅いぞ!」


ロングッドは2人の顔を交互に見て、グビドにもイリナと同じ気持ちが芽吹いたことを確信して顔がくもった。城に戻り部屋に入るなり、ロングッドは怒り口調でグビドに釘をさした。


「隊長!だめですよ!」

「?何がだ??」

「イリナ嬢のことです!」

「!!な!何を言っている?!」

「はぁ…隊長は女には疎いと思っていたから心配はしていませんでしたが…」

「俺はそんな!!」

「そうならいいんです。そうなら!わかっていますよね?!彼女はソーサーの長の娘ですよ。天と地が引っくり返っても結ばれるはずありませんよ。」

「…わかっているし、そんな気は…ない。」

「ならいいのです。」


ロングッドは自分の部屋へと戻って行き、部屋は静かになった。グビドは布団に潜り込んで天井を眺めた。なんとも言えない複雑な感情が渦巻く。


− なんだろうなこれ?わけがわからん。ロングッドの話はわかり切っていることだ。そもそも俺は彼女をなんとも思っていない…。


モヤモヤは大きく唸る。いや…思っていないのだ。

グビドは自分に何度も言い聞かせた。




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