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wonder hole -last player-  作者: にゃこ
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〓花と風-1〓

wonder hole lastplayer Chainと同じ時間軸のお話。


凍てつく大地に立ち上る1つの白い息。

大袈裟な防寒着がなければ数秒で死んでいるだろう。こんな所に人が居るとは到底思えない。


男は夜空に立ち上る息をただ見送っていた。


「隊長〜。目的地まで後数時間で到着できるかと思われます。」


彼はレルエナ騎馬隊の補佐官ロングッド。ルラとパソナの混血で魔力が強い。魔力がほとんどない男にとっては頼りがいのある部下だ。ルラの血が混ざっているせいか、小柄で華奢な体型をしていて、愛くるしい顔をしている。美しいミルクティー色の短い巻毛はよりロングッドを幼く見せている。

それに比べてこの男はロングッドとは真逆だ。横に並べば親子くらいあるであろう身長差。マキナは高身長にしなやかな筋肉を持ち、身のこなしが軽やかな種族なのに、男は少し違った。もちろん高身長なのだが、パソナのようにガッシリとした体格であった。まさに巨人であった。


「もう少しだな。よし気合入れていくぞ。」


2人は女王からの任務を全うするためこの地にいる。マーグルというフカフカの羽毛をもつダチョウのような鳥にまたがり先を進んでいた。


凍てつく大地は暗い。昼だというのに暗闇に覆われている。空を見上げると天にはまばゆい光で星が輝く。

一•二時間走った時、男の鼻がヒトの匂いを嗅ぎ取った。


「ロングッド!止まれ。」

「ど?どうしたんですか?隊長?」

「人の匂いがする。」

「え?ちょっと待ってください。」


ロングッドはマーグルのタズナをはなし、両手を握り意識を集中させた。


「た。たしかに、ここから東一キロ先に微量ながら魔力を感じます。」

「いくぞ!」


男はマーグルのタズナを強く叩き東へと向かった。ロングッドは男の背中を追う。


− 感じる。

− これは弱っている奴の匂いだ。


本能が言っている獲物がいると。

数分走った先に氷の洞窟があった。

その入口当たりに二人の人影をみた。

傷がいたるところにあるルラの女性。血がとめどなく出ている。その傷を必死に止めようとするパソナのように見える女性。

ただならぬ状況であるのはすぐわかった。


「…隊長…」

「いくぞ。」

「はい!」




止まらない。血が止まらない。

イリナはありったけの魔力を使って、供人のルフラに回復魔法をかけ続けている。氷結の神殿の帰りに魔物の大群と戦って力があまり残っていない。それでも持てる限りの力をルフラへ注ぐ。

ルフラが右手をゆっくり上げた。


「どうしたの?ルフラ今は動いてはだめ。」


何かを訴えるルフラ。地面から雪が舞い上がった。

柔らかく、冷たい。ルフラを優しく包んでいる。

イリナが声を発する前に大きな声がした。振り向いた先には知らない2人。


「大丈夫か?」

「…は…い。」

「お前もかなり傷を追っているじゃないか。ロングッド!こっちもできるか?」

「はい。大丈夫です。」


ロングッドは両手を組み目をつむり念じた。イリナを優しい雪の結晶が包む。驚くことに、傷が癒されている。男はルフラを抱き上げ安堵した。


「良かった。呼吸が収まっている。」


男の言葉にイリナも安堵し肩の力が抜け、ポロポロと涙がこぼれる。


「よく頑張ったな。」


男がポンポンと頭を叩く。

大きく分厚い手の感触。


「家はどこだ?」

「え?」

「だから、家だよ。送って行く。どうせ魔力もないだろ。」


イリナは見ず知らずの始めて出会う異種族のヒトを村に通すことをためらったが、男のまっすぐな心に胸打たれた。


男の前にイリナ、ロングッドの前にルフラを乗せ、マグールに跨る。ロングッドはルフラが落ちないよう、自分と固定させた。

イリナの言う通りに走った。

約二時間ほど走ったところで、イリナがここでいい。と言った。

男はあたりに何もないのを不思議に思ったが、イリナを下ろし、ロングッドにルフラを下ろすよう指示した。


「ありがとうございました。」

「気にするな。」


目が見えないイリナにも男が優しく笑っているのがわかる。またあの大きな感触が頭を覆った。


「よしっ。いくぞ。」

「はっ。」

「あ!あの…」


イリナの大きな声に振り向く男とロングッド。

そこには顔を真っ赤にしたイリナ。

ロングッドはイリナに何が起こっているのかわかってニヤニヤしだす。


「どうした?」

「あの…お名前…お名前を教えてください。」

「名前?気に…ぐっ…」


ロングッドが脇腹を小突く。

口がうごいている。


なのってください!


男はよくわからない面持ちで大きく自分の名を言った。


「グビド・ラルフレッド・ハワードだ。グビドと皆は呼んでいる。」

「グビド…さま」

「ははは!よせよせ様なんてそんな柄じゃない!グビドでいい。」

「あ!あ…はい!」

「それじゃぁな。気をつけろよ。」


イリナは2人の背中が見えなくなるまで手を降った。


「よし。」


イリナは右腕を左から右へ振り払った。すると光と共に扉が現れる。その扉を開けて中へと入って行く。扉は閉じた瞬間光となって消えた。



暖かい草原。柔らかな光。木々が揺らめき、せせらぎが聞こえる。

長い一日だった。村の門番がすぐに駆け寄ってくる。


「!!イリナ様!ルフラ様!そのお怪我は!!」

「私は大丈夫。ルフラももう大丈夫なはずだけど、スー・ズー様のところに連れて行ってもらえる?」

「はっ!わかりました。」

「私は城に戻ります。」

「わかりました。」


門番にルフラを預け、イリナは塔へと向かった。

塔の門番2人が敬礼をし、扉を開ける。その先には大きな魔法陣。イリナが魔法陣の上に立つと、光がイリナを包み消した。

目を開くと、イザナが駆け寄ってきた。


「イリナ!どうしたの?!その傷!!何があったの?!」

「氷結の神殿で魔物の大群に遭遇しちゃったの。なんとか倒せたんだけど…ギリギリできつかったわ。」

「その割には怪我少ないわね。」


双子の姉のイザナは冷静で、感が鋭い。イリナは顔が真っ赤になった。


「いや。あの…エ。えっと…」


そんなモゴモゴしているイリナを呆れて見るイザナ。


「イリナー。今はそれどころじゃないのよ。侵入者よ。」

「え?」

「罠に引っかかったの。」

「魔物…だよね?」

「それが違うみたい。異種族がこの地に来てるのよ…」


グビド達だ。

顔から血の気がひくのがわかる。急いで助けなければ。足が王座の間に向かった。


「イリナ!どうしたってのよ?」



ロングッドが感知していたのは罠だった。ソーサーとは一体どれだけ強い魔力をもっているんだ。

グビドは呆れなが爪を装着した。


「すみません隊長…」

「お前が悪いわけじゃねーよ。いくぞ。」


2人の目に写っているのは、村ではない。巨大な氷の龍。

鋭い爪。吐息からは細かな氷の結晶が吹き荒れる。


「やべーなこれ…。おい。退路あるか?」

「いいえ先ほどの道が氷の結界で閉じられてます。」

「くそったれ。なぶり殺されるのは勘弁だ。ロングッド!サポート頼む!」

「わかりました!」


ロングッドは念じ続ける。大地に語り続けた。

どうか隊長に大きな守りをと。

中々大地は答えてくれない。ロングッドが念じ続ける間、グビドは戦いつづけている。龍の爪がロングッドにむけられる。


「ぐっ…」


グビドの血が頬にかかる。

それでもロングッドは念じ続ける。


− くそったれ!!答えろ!!


大地がやっと答えてくれた。グビドに回復魔法がかかり、2人を氷の結晶膜が守っている。


「おせーぞ…」

「すみません…。大地が中々応えてくれなくて…」


グビドは笑った。


「そりゃそうか…。ここはソーサーの地だもんな…。」


龍は大きく息を吸い込んだ。


「くるぞ!防御にはいれ!」


吐き出された息は氷の結晶だったが何かおかしい。

眠気が2人を襲う。


「たい…ちょ…」


既に眠りについているグビド。その姿を最後にロングッドも睡魔に襲われた

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