異変-2
列車に揺られること2時間。コロッツィオ達が到着したのは甘くさわやかな香りが漂う町ココアンノ。駅から降りると早速現地のお菓子が出迎えてくれている。
コロッツィオは大興奮。早速出店でお菓子を飼っている。
「すごい匂いだ…」
「本当だね…」
ミンキュとフウゼツは甘い匂いが少々きついようで、大興奮のコロッツィオを急かす。
たっぷり買い込んだお菓子をバックに詰め込み、一向は登山を開始するか一夜を街で過ごすか決めることとなった。
時間が無いことは全員がわかっていること。
皆んなは夕闇の山へ入ることを選択した。
コロッツィオの魔法で明かりを灯した杖を頼りに道なき道を進む。熱帯雨林の山は暑いのかと思いきや、街より少し涼しくすごしやすい。けれども油断はできない。なぜなら…
「痛いーーー!!!!!!」
「ぼ!僕も噛まれてしましました!!!」
甲高く響くミンキュの声。
コロッツィオは急いでミリョウからもらった虫除けを使うと、体についていた小さな蟻の大群は勢いよく逃げていき、他の虫達も引いていった。
「これは大型の魔物と戦うよりも苦労しますね…」
「本当だね…ったぁー…」
「小さいからって侮れないわ…皆んな痺れとか無い?虫って結構毒持ってるから。」
「大丈夫…」
「あたしも…あ。でも痒いかも…」
「あまりにも痒みが我慢できなかったら言って。解毒するから。」
3人は草木をかき分け、降り注ぐ雨の中を進み始める。
「あれ?コロッツィオさんポケットがなんか光ってますよ?」
そう言われるとほんのりと鍵を入れているポケットが暖かいことに気がつく。光るポケットから鍵を2つ取り出すと、自分たちの向かっている方向よりも西にずれて光が伸びている。
「鍵が指し示すってこう言うことですか…」
「少しズレてる?」
「どうなんでしょうか…怪しい場所とは違うとこなのかな…。とりあえず行きましょう。」
そう言って暗がりの森を進む。
草木をかき分け、滑る地面。流石に疲れが溜まる。雨宿りできそうなところを探すも、どこにも見当たらない。流石に疲れ果ててしまい大きな木の根元にテントを張って休むことにした。
火を灯そうにも、湿った地面ではどうすることもできない。とにかくテントの中で雨をしのぎ眠るだけ。買い込んだ食料と水を飲み休んだ。
やまない雨の中であっても鳥たちは歌い朝を教えてくれる。重たい瞼をこすり、コロッツィオは頭をチェック。いつも以上に爆発した自分の髪にがっかりする。
「もう…なんでこう盛り上がるのよ…」
「変じゃないですよ。」
突然の声に驚いたコロッツィオの叫び声。
「お!驚かさないでよ!」
「す…すみません。」
「どうしたんですか?!」
辺り一面に響いたコロッツィオの叫び声に急いで駆けつけるミンキュに謝り倒した。コロッツィオ以外は朝の身支度をすでに済ませているようだ。コロッツィオも急いで支度を済ませ目的地への旅を開始させた。
鍵の指し示す方へと進み続ける。
変わることのない空色。すり減る体力と上がる息。長いこと歩いているとだんだん鍵の光の角度が段々と水平に近づいている。近づいていることがわかった。
そして太陽の光が一筋注がれる場所へとたどり着く。光は一点を指し示す地面。
「ここ?」
コロッツィオがポケットから石を取り出してみる。
− あんた達今どこ?
突如響くミリョウの声。心の中に響いているので、ミンキュには何が何だかわからない様子。
「どうしたんですか?」
− どうしたもこうしたもないわよ。アイツら来てるわよ!
「え?!」
− 今何とかあとをつけてる…。今船から降りたわ。
「コロッツィオさん!!これ!」
コロッツィオとフウゼツの混乱する頭に追い打ちをかけるミンキュの声。
そこにあるのは突如現れた3つ目の鍵。
そして轟く地響き。
「きゃぁ!!」
バランスを崩したコロッツィオの体をフウゼツが受け止める。
「なんなのこの揺れ?」
「ミリョウさんのところも?!」
ー立っていられないわ!まだ続いてる。
「コロッツィオさんみてください!」
焦った声に視線を注ぐ。
3つの鍵は1つの鍵へと姿を変え、宙を浮きひとりでに動き、くるりと回転し、どこかの鍵を開けている。
空を鳥たちが駆け巡る。
「何なのこれ…。」
思惑は外れ。
ここでないどこかの扉が開いたのだ。
ここではない。
− ミリョウさん!!あなたの近くで物音がしませんでしたか?!
フウゼツが焦って確認する。
− 当たり前じゃない…。ここから鳴ってるわ…
「くそっ!!!エンテはここじゃない!!」
「急がないと!!」
「あなたはそこで私達が来るのを待っていなさい!!いいかい?!」
− わ…わかったわ。
突然変わる口調に驚きを隠せないミリョウ。
「彼女の元に急ごう」
「けれどもミリョウさんの場所わからないわよ?」
「通信が生きていたのだからいけるはず!ソーサー!答えよ!」
すぐにソーサー側から返答があった。
まさか自分たちに問いかけが来るとは思っておらず焦っている様子。
「先程の通信先の位置情報わかるか?」
「あ…はい。現在あなた方がおられる位置から標高50メートル南約20キロです。」
「わかった。通信はこれで終わりだ。」
そう言ってチェズとソーサーとの通信が完了する。
「行きますよ!!」
「行きますよ!ってここから20キロって相当よ!!どうやっ」
「いいから私につかまって!!」
そう言ってチェズは指を振り3人に防御魔法がかかり、フウゼツの体は宙を浮き、あっという間に目下に広がる樹海。教えてもらったであろう方角からやってくる鳥と煙。
風に乗り進めば進むほど、熱気と煤が襲う。
弾ける火の粉。
そこには生物らしきものは存在しない。
燃え盛る木々は水々しい緑の葉を真っ赤な炎の花を咲かせる。
口を押さえ、地上に降り立ちとにかく走る。走るのが苦手なコロッツィオはみんなの足を引っ張ってることを理解していた。けれども走れるだけ走ったが、永遠と続く炎の壁に目的の場所を見つけれないでいた。すぐにミリョウに問いかけた。
− は?火事??どういうこと?
3人は混乱する。
コロッツィオは自分のズボンのポケットから魔力が漏れていることに気がついた。
「ちょっと待って…」
コロッツィオの声に気がつき2人は立ち止まる。気がつくと一筋の光が伸びている。
「これ…」
「鍵が指し示してる…」
一際高く燃え上がる炎の壁。
「これ…って…」
その時フウゼツが岩の前へと歩みだした。
「下がって…」
低い声に2人はしたがった。
炎にフウゼツの手が触れる。手が焼ける音。痛みを耐え瞳をつむり、全意識を集中させる。
瞳を開けた瞬間。
風の釜が炎を切り裂く。
目の前には大きな祠。
「ミリョウさん!!」
再会を喜ぶ暇はなかった。
祠から響くゆっくりと重い足音。




