第八十一話 新しい執事魔法
「さて、と」
奥様とお嬢様の昼食も終わり、僕は自分の部屋に戻ってきた。
お嬢様は、本日二度目、昼食後の『おねむタイム』だ。
面接終了時にも『おねむタイム』に突入したお嬢様は、「寝る子は育つ」を体現されている。ここ数日、言葉がしっかりしてこられたし、身体のキレもいい。
一時間ほどのお昼寝のあとは、メイドさんたちが先生となり、お勉強の時間となる。
その間、僕はしばしの休憩だ。
部屋に戻ったあと、まずは空気の入れ替えをするべく、窓を全開にする。空を見上げると一面の青空が広がっていた。ここ数日、暖かい日が続いている。
ベッドに腰を降ろしたあと、ハンバーガーを取り出してかぶりつく。このハンバーガーは、お嬢様にお出しする前に作った試作品のひとつ。
レタスとパテだけを挟んだものだが、味は抜群である。味、ボリューム、魔力。どれも申し分ない出来で、侯爵様ご提供禁止令が出てしまうのも無理はない。
ハンバーガーをお茶で流し込んだあと、僕は『執事ボックス』からフライパンを取り出し、机の上に置く。油をなじませたばかりの新品で、まだ数回しか使っていない。
このフライパンは僕個人が用意したものだ。
以前、セイバスさんに相談し、お嬢様用にと侯爵家の紋章入り食器セットを用意してもらった。しかし、調理器具も必要だろうと考えた僕は、料理長であるレイゴストさんに器具について相談したのだ。そのレイゴストさんから御用達の調理器具職人さんを紹介してもらい、購入したのがこのフライパンである。
フライパンは、本体から柄の部分まで全て黒光りする鉄でできており、いかにも熟練した職人さんが作りました、という独特の雰囲気がある。
もちろん持っているのはフライパンだけではない。『執事ボックス』には、ほかにも包丁や鍋などの調理器具も用意してある。
これも全てはお嬢様のため。これで、いつ、どこでも、食材さえあればお食事をご用意する準備が整った。
用意したものはもうひとつあった。
それはウシドンの切り落とし肉。ハンバーガーの試作ついでにもらってきた。切り落とし肉と言っても、侯爵様御一家に出すことができないだけで、もとはミノスさん推薦の極上肉だ。整形時に発生する切り落とし肉とはいえ、つやつやとした肉質は、余分な霜もなく見ているだけでよだれがあふれ出てくる。
これから『執事魔法』の改良や強化を試すのだが、その前に大神官様がやっていた魔力を熱に変える方法を『執事魔法』に応用できないか試してみるつもりだった。そのためのフライパンと肉だ。
魔力を熱に変えて、自らIHクッキングヒーターと化す大神官様は、一家に一精霊、「ある(いる?)」と便利な方だった。魔力を熱に変えることができれば、料理だけでなく寒い季節に暖房器具として使うことも可能だろう。
以前、ヒミカさんに大神官様のことを聞いたとき、彼女は大神官様のことを、「あたたかい方」と答えた。ヒミカさんを心から大切に想う大神官様は、間違いなく心の温かい方だ。ただ僕は別の意味も含まれていると思っている。暖房器具的な意味で。
「さて、魔力を熱に変える方法は、と」
大神官様がどうやっているのかわからないが、熱というのは運動エネルギーだ。分子や原子の動きを活発化させれば熱が発生する。ということは魔力を使って物質の分子らの熱運動を活発に動くよう促してやればいいはずだ。
前世には、「もっと熱くなれよ!」の詠唱だけで、各地に快晴をもたらし、気温を上昇させる偉大な魔術師がいた。その魔術師が遠方に出かけると、住んでいる地域の気温が下がり、寒波が襲ってくるという伝説まである。
その方を参考にするならば、魔力を使って分子たちを活性化させ、『やる気』にさせればいいはずだ。
僕は鉄製のフライパンの柄を掴んで持ち上げ、持っている手に魔力を込めながら、詠唱を始める。
「熱くなれヨー、モット熱くなれヨー、あきらめんなヨー」
ヒミカさんの神聖魔法やヨヨさんの呪歌などと違って、もともと『執事魔法』に決まった言葉の詠唱はない。そもそも教えられていない。セイバスさんにも、「執事たるもの、魔法くらい詠唱無しで使えなくてどうしますか」と言われている。
しかし、言葉に乗せて『執事魔法』を使った場合、無詠唱のときよりも安定性が増し、効果が高くなることも教えられていた。『執事ゲート』で使っている『開け』、『繋げ』というキーワードも、ある意味ゲートを安定、維持させる言葉と言えるだろう。
ただ、安定性にしろ、効果にしろ、無詠唱で同等の力が出せないのは、執事として未熟な証拠だ。大切なのは、仕えるご主人様をさりなげく支え、サポートし、邪魔をしないこと。もちろん時と場合によっては、剣にも盾にもなってこその執事である。
今回、実験も兼ねて詠唱しているのだが、「熱くなれヨー」とささやくように祈り、詠唱し、念じても効果が出た様子はない。なんとなく温かくなってきたような気もするが、手のぬくもりが柄に伝わっただけだろう。これでは料理にも保温にも使えない。
「もう少しちゃんとした言葉の詠唱が必要かもしれない」
まずは詠唱から見直そう。
そう考えた僕は、それらしい言葉を紡ぎ、詠唱する。
「――罪人を焼く業火、熱核に踊る恒星、狂熱に浮かれる愚者、灰燼と化す魂――七つの輪廻、蒼き炎を司る死の炉に躯を捧げよ」
すると、手から美しい青い炎が現れ、持っているフライパンを包み込んだ。
炎の色は気高く純然たる高貴な青だ。
「おぉ~」
炎は一瞬で消えてしまったが、その輝きに思わず声を漏れた。
青い炎は、魔力が熱に変わり、具現化したものに違いない。
それっぽい言葉を並べただけだが、効果はあったようだ。
魔力が熱に変わり、握っているフライパンの柄がみるみる熱くなっていく。
そう、火傷するほどみるみる熱く――。
「熱っっっっぅ!」
反射的に、開いてる部屋の窓から裏庭に向かってフライパンを放り投げた。放り投げられた、「それ」は緩やかな弧を描きながら飛んでいく。くるくると回転しながら飛ぶその姿は、まさに確認済み飛行物体こと、フライ=パンだ。「揚げる」、「炒める」という本来の意味ごと飛んでいった。
この世界にも重力がある。投げたものは、当然、落ちる。
フライパンは騒がしい音を鳴らしながら、二、三度飛び跳ねたあと、見事な着地を決めた。柄の部分が地面に刺さり、直立不動の体勢だ。フライパンは投げられたことを怒っているかのごとく、その身からゆらゆらとした熱気と白く煙を上げている。
ふと手から伝わるじくじくとした痛みに、僕はため息をつく。恐る恐る手のひらを見ると、柄を握っていた部分が焼けただれていた。
その火傷を確認した僕は、さらに深いため息をついた。
(何やってんだか)
自虐的になりつつも、僕は執事魔法『執事救急箱』を使う。軽い火傷程度なら一瞬だが、焼けただれるほどの火傷ともなると数時間かかるだろう。治るとはいえ、今、お嬢様に御用を申し付けられたら、満足な対応ができないかもしれない。体調を万全に整えておくのも仕事のうちだ。それを考えると、なんとも情けない負傷だった。
「ん?」
傷を治療したときに、手のひらから伝わる妙な違和感に気がついた。
傷の治りが思っていた以上に早い。いや、早すぎたのだ。
いつもならゆっくり塞がっていく傷が綺麗に治っている。火傷のあとも消え、痛みもない。
異常とも言える早さで治った原因を考えてみるが思い当たる節はなかった。
(おっと! 今はそれどころじゃない)
庭では熱くなったフライパンがお怒りだ。
完治した手を握ったり、開いたりして感触を確かめる。不思議なことがあるものだと思いながら、僕は急いで部屋を出た。
裏庭に出ると、フライパンがその存在感を示していた。
地面に刺さるその姿は、何かの標識に見えてくる。もし文字が書かれているとすれば、「ポイ投げ禁止」と書かれているはずだ。
料理長のレイゴストさんに見られたら間違いなく叱られる所業である。調理器具で遊ぶなと言われること間違いなし。普段は子供に優しい料理長だが、叱ることもできる立派な方だ。
直立不動で地面に刺さるフライパンを恐る恐る手でつつく。柄が土に刺さったことで熱が発散したのか、熱かったフライパンもそれなりに冷めていた。
念のため、柄の部分にハンカチを巻いてから掴み、地面から抜いて土を払う。フライパンが傷ついたり、歪んだりしてないか確認してみたが、特に問題ないようだ。さすがは職人が作った一品である。鈍器と呼んでも差し支えないほどの耐久力だった。
物は試しにと、柄にハンカチを巻いたまま、詠唱を交えながら恐る恐る魔力を流し込んでみた。先ほどのように青い炎が出たが、炎はフライパンを包むことなく消えてしまった。事実、フライパンは全く熱くなっていない。
どうやらハンカチを間に挟むと、熱に変えた魔力がフライパンにうまく流れていかないようだ。それにハンカチは燃えることもなく、多少温かくなっただけ。もちろん火傷もしなかった。もしかしたら魔力を流す材質によって熱さが変わるのだろうか。
「うーん」
「……アルクん。さっきからなにしてんの」
庭でフライパンの柄を持ったまま唸っている僕の後ろから、心底呆れたような声がかけられた。
「やあ、ヨヨさん。いらっしゃい」
「こんにちは。フライパンを使った魔族の遊び?」
「そんな遊びありませんよ」僕は思わず苦笑する。
「じゃあ、何をしていたの」
彼女は好奇心溢れる顔をしながら興味深げに聞いてくる。
「ちょっと執事魔法を開発してました」
頭の上で手を組んだまま空中に浮かぶヨヨさんが、「ハァッ!?」と声を上げながら首を傾ける。
「ちょっと散歩してました的な感覚で、魔法なんて作れないでしょ」
「作ったのはいいんですが、火傷しちゃいました」
苦笑する僕を見て、ため息を漏らすヨヨさん。
「なぜこうも簡単に魔法作っちゃうのかしら、この子」」
「魔法を作ることくらい、執事なら誰でもできますよ」
「でーきーまーせーんっ」
そんなに大きい声出さなくても聞こえてます、ヨヨさん。
「おっしゃるとおり、うまくできませんでした」
考えてみれば柄の部分は鉄製だから、フライパンを熱しようとすれば柄が熱くなるのも当然だ。しかも柄から魔力を流しているので、最初に熱くなるのは柄の部分。だからといって柄にハンカチを巻くとフライパンは熱くならない。
ふと神殿でのことを思い出す。
神殿の執務室で卵を焼いているとき、大神官様は平気な顔してジュウジュウと音を立てるフライパンを持っていた。もしかしたら触っている部分が熱くならない方法でもあるのだろうか。
だが、僕はある重要なことを思い出す。
(そうだ! 大神官様は火の精霊フェニックスだ)
その容姿につい忘れていたが、大神官様は火の精霊だ。
火の精霊が火傷をするだろうか。
いや、するはずがない。
フライパンが熱くなったとしても、熱さを感じていない可能性が高い。火の中に手を入れたとしても平気な顔をしているだろう。
魔力を熱に変えることには成功したものの、火の精霊じゃない僕には大神官様のやり方は真似できない。
「うまくできる、できないの話じゃないってば。思いつきで魔法は作れないって意味よ! 普通は発動すらしないから」
「へぇー」
「へぇー、じゃない!」
今日のヨヨさんも元気いっぱいだ。
昨晩のプリンのせいか、心なしか肌もつやつやしている。
そんなヨヨさんが、魔法の開発も妖精族が使う魔道具も簡単にできるものではないと熱弁し始めた。魔法はイメージが大切だそうで、漠然としたイメージでは発動すらしないらしい。
熱弁に一段落ついたときには、すっかりお疲れの様子だった。つやつやだった肌も、今はもう昔の話だ。
「……もういいわ。熱くなるなら手で持たなければいいじゃない」
(手で持たない?)
僕はその意味を考える。
なるほど。これは盲点だった。持っていると熱くなるのであれば、持たずに熱くすればいい。
「なるほど! それはいいアイデアです」
「……皮肉を込めた冗談のつもりだったんだけど」
皮肉だろうと冗談だろうと問題ない。
ヨヨさんの一言でいい方法を思いついたのだ。
「さぁ、やってみましょう」
すっかり冷めたフライパンを地面に置いたあと、一歩だけ離れた僕は、深呼吸してからフライパンに手のひらを向ける。先ほどと同じ詠唱をしながら魔力を熱に変えていく。すると熱となった魔力が青い炎となって具現化し、手のひらを包み込んだ。続いて、やや強めに魔力を放出する。そうしないとすぐに消えてしまいそうだったからだ。
ある程度、炎が大きくなったところでフライパンに向け、飛んで行くようイメージする。するとイメージ通り、青い炎はフライパンへと勢いよく向かっていった。
(あれ?)
しかし、青い炎はフライパンに届く前に溶けるようにして霧散してしまう。その後、何度やっても結果は同じ。魔力を多めにしても、近づいて飛ばしてみても、フライパンに当たった瞬間、霧散してしまった。残念なことにフライパンは冷たいままだ。試しに反対側の手に向かって飛ばしてみたら、もわっとした生ぬるい熱気が飛んできた。その距離、一メートルもない。
どうやら失敗したらしい。
「イメージが足りないのよ」
「うーん。イメージですか」
確かに熱そのものが飛んで行くイメージが思い浮かばない。イメージが足りないせいで、生ぬるい風を生み出すのに精一杯のようだ。
そうなると魔力を熱に変えてから飛ばすのではなく、魔力を飛ばしてから熱に変えたほうがイメージしやすそうだ。
次に、僕が考えついたのは『雷』だった。
物体に電気を流すと熱が発生する。
前世の偉人で、美味しいものを見ると、じゅーるじゅるとヨダレを垂らすだろう人族の一人が発見した法則だ。物理法則なんて魔法の前では意味をなさないがイメージ作りには便利だった。
僕は手のひらをフライパンに向け、新たに作った詠唱を口にする。先ほどはフライパンに熱を流すイメージの詠唱だったが、今度は魔力を雷に変え、飛ばすイメージにしてみた。
「――雷雲に抱かれる雷獣、守護するは八色雷公――終末に轟く雷轟、不可視の雷電、波動となりて貫かん」
手のひらから出た魔力が雷となってフライパンに当たる。僕とフライパンの間にある空気が震え、バチバチと爆ぜるような音が派手に鳴り始めた。手に伝わってくるしびれのせいで、フライパンに魔力が当たるよう調整するのが難しい。
「さ、さっきと魔法が違うじゃない! な、なに? なんなの?」
ヨヨさんが驚いているが、実験を継続する。
気を抜くと制御できなくなりそうなのだ。
しばらく魔力を当てていると、フライパンからうっすらと白い煙が上がり始めた。フライパンがちゃんと熱されているかどうか確認するため、魔法を中断してから近づき、手をかざす。
(おっ、成功のようだ)
かざしたその手にはジリジリとした熱気が伝わってきた。
どうやらフライパンを直接、手で持たなくても熱することに成功したようだ。
続いて、どれほどの熱が出ているか確認するため水を用意する。水滴の蒸発加減で、だいたいの予熱が測れるからだ。
僕は執事魔法『執事井戸』を使い、コップの中に水を作った。
ところが――。
「あれ?」
思わず声が出る。
コップ一杯分の水を出す予定だったが、左手で持っているコップからは、あとからあとから水があふれてくるではないか。しかも徐々に勢いを増しているようだ。
コップを持ったまま、慌ててフライパンから離れたものの、水は勢いよく噴水のように噴き出して、僕に降り注ぐ。
魔法を強制的に中断させたが、時すでに遅し。
僕はすっかりずぶ濡れになってしまった。
「ぷぷっ。何してんのよ」
ずぶ濡れの僕を見てヨヨさんが吹き出した。
指をさしながらお腹を抱えて笑っている。
僕は引きつり気味の作り笑いを浮かべながら、濡れた上着を脱ぎ、庭のベンチにかけた。今日晴れてて良かったと心から思う。日中は暖かくなってきたとはいえ、まだまだ寒い夜もあるのだ。
(それにしても……)
今までこんな失敗をしたことはなかった。
しかし濡れるだけで済んだのはまだマシだ。今のが火を出す『執事キッチン』だったら大変なことになっていたに違いない。
(さて、と)
濡れた髪をかきあげ、深呼吸。
今度は、より慎重に『執事井戸』を使い、水を作り出す。
コップの底から沸き上がるように増えていく水は、八分目のあたりでピタリと止まる。しばらくコップを眺めていたが、それ以上、水が増えることはなかった。
ホッと胸を撫で下ろした僕は、その水をフライパンの中に少し垂らす。
垂らした水滴たちは、一瞬、ジュッという音を鳴らしたあと、滑るようにフライパンの中で踊っている。
(ライデンフロスト効果とか言ったかな)
これは水の沸点よりフライパンの表面が熱くなっていると起こる現象だ。しばらくフライパンの中で踊っていた水滴たちはやがて蒸発して消えた。
魔力を当てることによってフライパンを熱することに成功した。肉を焼くのに十分な温度だろう。魔力量や当てる時間を変えれば、熱さの微調整も可能となるはずだ。
ただ、問題があった。
フライパンを置く場所だ。
先ほどの魔法でフライパンを置いた地面と、その周りにあった草の一部が焼けている。フライパンからの熱が伝わってしまったことに加え、雷となった魔力が周りの地面や草にも当たってしまったようだ。慣れればフライパンだけに当てることもできるだろうが練習が必要だろう。それだけ制御が難しかった。
あと、もうひとつ。
うるさいのである。
これは大問題だった。お嬢様は落雷が苦手というわけではないが、下手をしたら怖がられてしまう。怖がられないとしても、「うるさいのっ!」と怒られてしまうかもしれない。
いずれにせよ、今のままでは可燃物の多い場所では使うことができない。制御しきれない執事魔法など、執事の名折れだ。
そもそもフライパンの上から魔力を当てていたのでは、フライパンより先に食材に当たってしまうだろう。
では、直接食材に魔力を当てたらどうなるか。
実験してみることにした。
試しに練習がてら、地面に向けて使ってみる。
先ほどより当たる範囲を半分以下まで絞り、同程度の魔力で地面の一点に当たるよう調整して魔法を使う。
ちなみに今回は無詠唱でやってみたが、問題なく発動した。
一度コツを掴めば詠唱は必要ないらしい。
先ほどと同様、空気が振動し、バチバチと音が鳴る。範囲を狭くしたおかげか、音の大きさも半減していた。まあ、それでもうるさいことに変わりはない。しばらくそうしていると、地面から嫌な臭いがする煙が出てきた。あまりの臭さに魔法を中断し、その場から少し離れる。煙が出なくなるのを待ってから地面を確認すると、そこにはいびつな形にガラス化した物体がいくつも転がっていた。石英やケイ素でも混ざっていたのだろう。雷管石とかいったか。
「ちょ、ちょ、ちょ」
聞こえてきた変な鳴き声に顔を向けると、ヨヨさんが引きつったような顔をして浮かんでいた。
その気持ちはよくわかる。
これは食材を温めるどころの話ではない。食材を使って試さなくてよかったと胸を撫で下ろす。
ガラス化するほどの高温などもってのほかだ。
「これでは……これでは食材が焦げちゃいますもんね」
「食材が焦げるどころの話じゃない! 全部、炭になるわっ!」
ヨヨさんらしい全力のツッコミが心地よい。
さすがは妖精族である。
「何したのよ? 今のって雷属性の魔法よね」
ヨヨさんが説明を求めてくるが、どう伝えたらいいか悩む。
僕は魔法の専門家じゃないから雷属性というのがよくわからない。それに前世の知識である、法則とか熱運動とか言ってもわからないだろう。
ただ、何も言わないのは礼儀に反する。
「雷属性が何かわかりませんが、執事魔法ですよ」
「はいはい。それで?」
ご満足いただけないらしい。
「えーと。フライパンに向かって魔力を込めながら、熱くなれよ、と念じるのです。諦めるな! 頑張れ! と応援する感じでも大丈夫です。やる気になったフライパンが――」
「……何言ってんのかさっぱりわかんない」
うん、礼儀とか満足とか、それ以前の問題だったようだ。
どう説明しようか悩む僕に、彼女は真面目な顔で言った。
「まあ、いいわ。でも、これだけは約束して。この魔法を生き物に使うのは禁止。使用不可。ダメ! 絶対!」
ヨヨさんは胸の前で腕を交差してバツを作っている。
以前、開発した『執事ミキサー』を見せたときにも対生物使用禁止令が出た。『執事ミキサー』は、ひき肉を作ったり、粉砂糖を作ったり、マヨネーズを作るときに使う料理用の執事魔法だ。
この魔法もお嬢様のため、肉を焼いたり、スープなどを温めたりする(つもりで作った)魔法である。直接当てると、高温すぎて肉は炭に、スープは粉末になりそうだが、もとより生き物を対象としていない。
「はぁ。わかりましたけど、なぜ禁止なんです?」
「本当にわかってないの? この魔法を生き物に直接当てたらどうなるのかしら? 前見せてもらった『執事ミキサー』を生き物に直接使ったらどうなる?」
生き物に直接当てる?
少し考えたあと、ヨヨさんが禁止した理由がよくわかった。
「……なるほど。残虐焼きや活き造りですね」
「残虐焼きとか、活き造りとかの意味はわからないけど、生きたまま焼き殺したり、斬り刻んだりできる魔法だと理解して言ってるのかしら、それは」
ヨヨさんは殺傷能力のある魔法だと言いたかったらしい。てっきり調理方法だと思っていたが違ったようだ。僕は思いつかなかったが、そういう使い方もできるだろう。
ヨヨさんは僕の勘違いに気がついていないようなので黙っておく。
「も、もちろんです」
「どうだか。絶対に勘違いしてたでしょ」
バレてました。
「僕は執事ですからね。そんな危ないことしませんよ」
「アルクんのことだから、ティリアちゃんを泣かせようとした連中に使うんじゃないの?」
「やだなぁ。――ソンナ楽ナ死ニ方サセルモノカッ」
「やっぱり魔族こわっ!」
「でもまあ、お嬢様のための執事魔法です。この魔法はうるさすぎて使えないでしょうね」
「怖がらせて、アルクん本人がお嬢様を泣かしそうね」
「……ですよねー」
結局、二つともお蔵入りとなった。
今後、使うかどうかは別として、とりあえず魔力を雷のように変化させる魔法を『執事ビリビリ』と名付け、フライパンで火傷した魔法を『執事魂』と名付けた。
――執事魔法『執事ビリビリ』とは。
魔力を電気や電磁波に変え、雷などを発生させる。電気の力によって物体の温度を上昇させることが可能。失敗から生まれた執事魔法ゆえに、今のところ地面を焼いたり、炭を作ったりすることにしか使えない。生き物禁止令発動中。
――執事魔法『執事魂』とは。
魔力を熱に変え、手で触ったものを熱する魔法。材質によって変化あり。素手で接触しないと効果がなく、熱したものによっては手も焼ける。具現化した熱は美しい青い炎となる。炎を飛ばすことも可能だが、すぐに霧散し、一メートルも離れるとただの生ぬるい風になる。
それはそうと、どうしたものか。
このままでは、お嬢様が突然、「お船の上で、ごはんするのー」とおっしゃられたときに困ってしまう。『執事キッチン』や『執事ビリビリ』では船ごと燃やしかねないし、『執事魂』で火傷しながら作る料理など、優しいお嬢様がお許しになるはずもない。船の上には土がないため『執事食器棚』でコンロを作ることもできないだろう。
大陸から大陸、島から島へと航海する大型船ならともかく、近海に浮かぶ中型以下の船に厨房設備はほとんどついてない。事前準備を怠って、『航海先に立たず』なんてことになっては執事失格である。いつ、どんな場所でもお嬢様のご要望に答えてこそ優秀な執事なのだ。航海で後悔したくない。
フライパンに直接、魔力を注ぐ方法だと熱すぎて手で持てない。魔力を飛ばす方法も今のところフライパンだけを温めるには制御が難しい。
そうなると熱源とフライパンは切り離して考えた方がいいだろう。フライパンを直接温める大神官様方式やフライパンに魔力を当てて熱くするのを諦めた僕は、考え方を切り替えることにした。
何かほかの方法はないだろうか。
(大神官様の真似は無理だった……ん? 大神官様?)
「あ、そうだ」
魔力を熱に変えることは成功している。
ただフライパンにその熱を伝えることが難しかった。
フライパンに直接熱を流したり、魔力を当てて熱くしたりする方法は、いろいろ難点があったため断念した。
ならば、魔力を熱に変え、その熱を何かで封じ込め、そこにフライパンを入れて熱すれば問題ないはず。
そこで僕が思いついたのは大神官様が壊したことのない(はずの)石窯だった。石窯は、パンを焼くときのみならず、幅広く料理に使われている。
魔力で石窯を作り、石窯の中に魔力で作った熱を閉じ込める。そこにフライパンを入れ、熱する。何も深く考える必要などなかったのだ。
頭の中でイメージをまとめながら、魔力を集中させる。
詠唱はなしだ。
細部までイメージした石窯を具現化させるため更に魔力を込める。
すると、目の前に半透明のレンガで組まれた小さい石窯が現れた。
耐火性レンガによく見られる淡い色合いの石窯は、イメージどおりの出来だ。サイズは大きめのフライパンが余裕で入るくらい。およそ六十センチ四方の箱のようなミニ石窯である。通常はこのサイズだが、魔力消費量を増やせば大きさを変えることが可能だ。大きな獲物を見つけても気軽に丸焼き料理を楽しむことができるよう配慮した。もちろん密閉できるフタ付きである。熱を調整するための穴もある。
「なんとかできるもんですね」
「ええ!?」
突然、空中に現れた石窯にヨヨさんが驚いた声を上げた。
なにか言いたそうに口をパクパクと動かすヨヨさんだが、今は実験を続ける。
(さて、どうかな)
フライパンを手に取り、釜の中へと入れる。
魔力で作った石窯だが、ちゃんとフライパンを置くことも触ることもできる。強度もかなりあるようだ。
続いて、本命の作業である。
魔力で作った釜の内側から熱が出るようイメージする。もともと魔力でできた石窯である。窯の内側を熱に変えるだけだ。これは思ったより簡単に実現することができた。熱される側のフライパンとは違い、石窯は予熱など熱を利用する側だ。そのため、「熱を出す、溜める」というイメージがしやすかった。
魔力でできた石窯は、自身の魔力を熱に変えていく。そのため薪や炭を必要としない。もちろん長時間使用する際は、魔力を足すことも可能だ。
フライパンを取り出して、ちゃんと熱くなっているか確認する。
(うん。問題ない)
フライパンは十分熱くなっていた。フライパンに直接魔力を流すより効率は悪いようだが、本物の石窯と同じ火力は得られているようだ。
ここまでの実験中、気がついたことがある。
石窯の側面に立つと熱が伝わってこないのだ。普通、石窯の周りに立てば結構な熱が伝わってくる。当然、石窯を触れば火傷もする。
今も、大きく開いている石窯の口からは、じりじりと熱が伝わってくるものの、それ以外の場所からは一切熱が伝わってこなかった。試しに石窯の側面を素手で触ってみたが、全く熱くない。フライパンを取り出し、石窯の口にフタをすると、釜の口から伝わっていた熱も完全に遮断された。
意図したものではないが、これは嬉しい誤算だった。お嬢様が間違って触られたり、近くに寄られたりしても安全な設計になっていたのだ。
また半透明の石窯のため、フライパンを取り出さなくても焼き具合を確認できる便利仕様となっている。ただ、炎が出ているわけではないので食材を見てないと熱加減がわからないのが難点だ。これは慣れれば大丈夫だろう。
石窯は宙に浮いている状態なので地面が焼ける心配がない。揺れる船の上でも安心して使える。『執事食器棚』で作った土コンロと違い、高さ調整や移動も思うがままだ。
試しにフライパンでウシドンの切り落とし肉を焼いてみたが、薪や炭で焼くよりも早く、しっかり焼くことができた。外はカリッと、中はジューシー。まさに完璧な焼き上がりだ。遠赤外線効果まで付与されているらしい。これも石窯をイメージしたおかげだろう。
火ではなく熱で調理するため、船の上など火を使えない場所でも問題ない。
問題があるとすれば、その魔力消費量だ。『執事キッチン』などの魔法に比べ、具現化にかなりの魔力を消費する感覚がある。とは言っても一日くらいなら維持できるレベルだ。
「なかなか便利な執事魔法ができました。『執事石窯』と名付けましょう」
――執事魔法『執事石窯』とは。
魔力で作り出した石窯である。空中に出現させた石窯は、大きさや高さの調整が可能。普通の石窯と同じく十分な火力が得られ、自身の魔力を使用していくため、薪や炭を必要としない。途中で魔力の補充も可能。開いた石窯の口以外の部分からは、周りに熱を発することがない。石窯の口にフタをして、熱を完全に遮断することも可能。触っても火傷しない安全設計で、遠赤外線効果あり。魔力消費が通常よりも多い。温度調整用の穴もある。
焼き上がった肉をヨヨさんに披露しながら、得意な顔をして新しい魔法に名を付ける。
そんなヨヨさんは焼きあがった肉に目を向けることなく、空中に浮かぶ石窯をじっと見ている。そして微動だにしないまま、ボソリとつぶやいた。
「……結界魔法」
「はい?」
「それ結界魔法っていう魔法よ。――あと、今は執事魔法ですよ的な発言は却下します」
「執……(なん……だと)」
僕が主張する前に冷静な口調で反論を却下されたが、真実は変わらない。これは執事魔法である。
ただ、結界魔法という魔法がどんな魔法なのか気になったので尋ねてみる。
「結界魔法っていうのはどんな魔法なんですか」
「名前のとおり結界を張る魔法ね。通さず、守り、封じる。どちらかと言うと守りに特化した魔法と言えるわ。空間魔法の系統として生まれ、失われた魔法と言われていたんだけど……目の前にあるわね、石窯になって」
「ああ、ヒミカさんの『神の障壁』みたいなものですか」
何か胡散臭いものを見るような目で僕をじっと見るヨヨさん。
「ヒミカちゃんの神聖魔法よりかなり劣るけど、似たところはあるわ」
「なるほど」
「ところで魔法を開発する理由はなに? しかも、なぜ石窯? ポンポンと魔法を作っちゃうことに驚いていたから聞き忘れていたわ」
「最初はただの実験でしたが、この『執事石窯』は、お嬢様が船の上で食事したいと言われたときに使える便利な執――魔法です」
「はい?」
「ですから、船の上など火が使えない場所で食事の準備ができる魔法を開発していたんですよ」
「……相変わらず、滅多にないマニアックな状況を想定してるわね。前は、三年後のピクニックを想定してティリアちゃん用の食器を用意しようとしていたし」
「それはもう用意しました。このフライパンもそうです」
腕を腰に当て、熱々のフライパンを掲げてみせる。
黒々としたフライパンの中で、ウシドンの肉汁が太陽に反射して輝いていた。水の精霊様からお米が届いたら、この脂で焼き飯を作ろうと思う。
「長生きする魔族のくせに、なぜこんなにも考え方が忙しないのかしら」
「何を言ってるんです。いつでもお嬢様のご要望を――」
「はいはい」
最近、ヨヨさんが話を聞いてくれないような気がする。
僕の勘違いだろうか。
とりあえずそのことは棚に置いておくとして。
守りに特化した魔法。それこそが『結界魔法』だそうだ。
障壁を作り出し、物理や魔法などを遮断する。その障壁で囲んだものを封印する方法もあったそうだが、今は結界魔法そのものが失われているため、封印方法もわからないらしい。
結界魔法そのものはどうでもいい話だが、先ほど『執事石窯』で作った石窯から、熱が外に伝わってこなかった理由が判明した。結界うんちゃらのおかげで、熱が外に出なかったようだ。『執事石窯』は想像以上に便利な執事魔法だった。
「この執――魔法はいいですね。虫除けとかに使えそうです」
「はい? 虫除け?」
「例えば――」
僕は魔力を練り上げ、網戸のように細かい目の開いた障壁で僕とヨヨさんを囲う。細かい網目でできた半透明の箱は、まるで巨大な虫カゴのようだ。このままだと見づらいので、色でもつかないかなぁと念じたところ、網の部分が前世で良く見かけた網戸のように、灰色になった。うむ、これなら見やすい。
「ふぁっ!?」
「これなら小さな虫が入ってこれず、風を感じることもでき、外で寝ても安心です」
前世には快適な睡眠を得るため、便利な道具がたくさんあった。
網戸もそのひとつだが、今回作ったこれは『蚊帳』をイメージして作り上げたものだ。形は虫カゴだが、寝苦しい暑い夜もこれさえあれば、安眠間違いなし。お部屋の窓を開けていても虫(昆虫以外を含む)を寄せ付けず、お嬢様に安心安全、快適な睡眠をお約束できるというものだ。ただ、この魔法も『執事石窯』同様、魔力の消費が激しかった。まあ、一晩くらい維持することはできるだろう。
この魔法を『執事かご』と名付け、網目のないものは『執事箱』と名付けたいと思う。
――執事魔法『執事かご』とは。
魔力で作り出したカゴである。細かい網目になっている。暑い夜でもお嬢様の安眠を守るために大活躍(予定)の魔法。
網目の有無や大きさ、規模、色付けは自由自在。強度は、生半可な魔法や物理攻撃程度は弾くことができる。『執事石窯』同様、魔力消費が多い。
――執事魔法『執事箱』
魔力で作り出した箱である。『執事かご』の網目なしバージョン。空気など望むものだけを通すことも可能。規模、色付けは自由自在。強度は、生半可な魔法や物理攻撃程度は弾くことができる。『執事石窯』、『執事かご』同様、魔力消費が多い。
ヨヨさんは網でできた障壁をぐるりと見回している。
そしてつぶやくように言った。
「失われた魔法をこうもあっさりと……いろいろ違ってるけど」
「ヨヨさんも言ってたじゃないですか。魔法はイメージだと。それに結界魔法とは属性が違いますからね。似て非なるものでしょう」
執事魔法とは一言も言っていない。
ヨヨさんがいくら、じとーっとした目でこちらを睨んでいても、執事魔法という言葉は使っていないからセーフである。
「なぜかしら。失われた魔法を目にしているはずなのに、アルクんが使っているのを見ると、魔法の原理とかどうでもよくなってくる」
「はっはっは。褒めても何も出ませんよ」
「自分の非常識さを自覚してない魔族って怖いわぁ」
まだお昼だというのに、先ほどよりも疲れた顔をするヨヨさん。
僕は『執事かご』を解除し、『執事ボックス』からあるものを取り出しながら彼女に聞いた。
「お疲れのようですし、プリン食べます?」
「食べるけどさ、ひとつだけいい?」
「はい、なんでしょう」
「アイテムボックス……執事ボックスに携帯用コンロを入れておくとか、お弁当を入れておくとかじゃ駄目なの? 時間が止まる執事ボックスならお弁当入れておいても腐らないでしょ」
「……え?」
「……え?」
庭にあるベンチの上では、ぐったりとしたヨヨさんと僕のプリンタイムが始まった。
ベンチに座った僕は、空中の一点を見つめながら無言でプリンを口に運ぶ。
もくもくと。
一口食べるたびに心と魔力が癒やされていくが、使った時間は戻らない。
ヨヨさんによる的確で確実で反論の余地がない提案に、どっと疲れが出た僕はプリンを食べずにはいられなかったのだ。「疲れたのは誰のせいよ!」と言っていたヨヨさんも、僕の隣でプリンに夢中になっている。
お皿の上でプルプルと揺れる魔族用サイズの大きなプリンを小さなスプーンでカッカッカッと口に運ぶさまは、エルフのニーナさんを彷彿とさせるほどの食べっぷりだ。いつの日か、頭を突っ込みながらプリンを貪るヨヨさんの姿を見ることになるだろう。泳げるほど大きなプリンを作ってあげたら泣いて喜んでくれそうだ。
『執事井戸』の失敗によってずぶ濡れになった上着は、『執事石窯』を使って乾かしている。窯の口を開け、少し離して干せば、石窯も乾燥機に早変わりだ。暑くなる今からの季節には必要ないが、寒い時期には暖炉代わりに使えるはずだ。
これさえあれば、お嬢様の服が濡れてもすぐ乾かせるし、寒い日も『執事石窯』さえあれば風邪を召されることもないだろう。
(良かった、使い道があって)
プリンも食べ終わり、どの執事魔法から改良しようか考えていると、同じくプリンを食べ終えたヨヨさんから話しかけられる。
「で、魔法の開発は終わったの?」
「開発は思いつきです。本来は執事魔法の強化が目的ですね」
「思いつきで失われた結界魔法を復活させるとか……言ってることは無茶苦茶ね。もう慣れたけど」
思いつきとはいえ、あっさり復活した結界魔法とやらは、執事魔法として生まれ変わった。これからは石窯や暖房器具となって活躍するだろう。臭いを漏らすことのない生ごみ専用ゴミ箱としても活躍が約束されている。
「それにしても、なぜ魔法の強化を必要とするのかしら、執事なのに」
「お嬢様のためにも魔法の強化は必要だと執事長に言われました」
「元凶は執事長ね。執事が魔法を使うことからしておかしいのに」
ヨヨさんは、もう諦めましたという顔をしながらそう言った。
どうもプリン一個では足りなかったようだ。




