第六十話 お遊戯のお時間です
疑いの眼差しを向けた僕からキバの悪魔は慌てて目をそらした。はたして偶然だろうか。確かにタイミング次第ではそういうこともあるだろう。しかし、チラチラとこちらの様子を見ては目をそらすという、『いかにも』な行動を繰り返しされたら、さすがに偶然という言葉で終わらせることはできない。
(言葉を理解する動物ねぇ)
魔族や他の種族の中には、魔物や動物と会話する能力を持った者もいるかもしれない。それに長年連れ添った騎乗用の動物等であれば、こちらの言葉をある程度理解するようになるだろう。しかし、野生の動物がこちらの言葉を理解することは、まずありえない。まさかとは思うが確かめてみる必要がある。
「魔族はなんでも食うと知っておったが、まさかチョトツも食うのか」
ジュロウさんが不思議そうに尋ねてくるが、その言葉を少し利用させてもらうことにしよう。
「え? 脂が乗ってて美味しそうじゃないですか」
「……なんじゃ、アルク殿。魔族のくせに味がわかるのか」
どうやらジュロウさんは、魔族が味オンチだと知っているらしい。味がわかるのか、と聞いてきたということは、シュリーカー族は味を理解しているに違いない。魔族ではなく魔物寄りと言っていたことから魔族と同じ味オンチではないのも納得できる。
そうなると魔族の味覚は魔物以下ということか。
「おや。さすがは族長。魔族が味オンチだとご存知でしたか」
「……孫娘は、面白い魔族に助けられたのぅ」
「でも健康に育ったチョトツは、本当に美味しいんですよ」
「そんなにうまいのかね」
「もちろん美味しく食べるための準備も必要ですけどね」
美味しいという言葉のたびに、キバの悪魔がビクッと身体を震わせている。
僕は、そんなキバの悪魔に目を向けながら話を続ける。
「チョトツを美味しく調理するには、まずは生きたまま鋭い刃物で腹を切り裂き、川などの場所を使って、流水で血抜きするんです。そして、まだ暖かいグチョグチョの内臓をズルズルリンと引きずり出し、丁寧に洗います。血抜きされながら、チョトツがビクンビクンと動いているかもしれませんが気にしないでください。心臓が動いていたほうが血抜きも楽です。胃や腸などの内蔵は、裏返して念入りに洗い、もつ鍋にするとこれがまた旨い。更に健康なチョトツの肝臓は絶品です。そうそう、胆のうは乾燥させると胃腸薬にもなります。
赤みの肉は、焼いてもいいですし、干し肉や塩漬けに加工しても美味しいですが、これもまた鍋がオススメですね。僕の知っているある国では、鍋用のチョトツの生肉を『牡丹』という花に例えるんです。これはチョトツの生肉を薄切りにして、花の形に盛り付けるのですが、肉の赤みと脂身の白さがその牡丹の花に良く似ているんです。鍋にすれば、チョトツの肉の出汁も出ますし、キノコや野菜などと一緒に煮込むと最高ですよ」
ここで一息ついてから、低い声で一言付け加える。
「うんまぁい牡丹肉ぅ、どこかにぃねぇがなぁ」
「ふ、ふひぃっ」
僕と目が合ったキバの悪魔から力が抜けるような声が漏れた。あれは絶対こちらの言葉を理解している。
8メートル近い巨大な牡丹肉(加工前)がじりじりと後ずさりしていく。恐らくここから逃げ出す隙を探っているのだろうが、キバの悪魔の周りはシュリーカー族が囲っている。残念だがここから逃げだすことは不可能である。
ところがそのシュリーカー族に目を向けると、彼らは痛そうな顔をしながら、お腹を抑え、うずくまっているではないか。これでは囲いの意味がない。「想像しちまった」、「気持ち悪い……うぇっ」といった声が聞こえたが、朝食べた食事にあたったのだろうか。ひどい食あたりでないことを願うとしよう。
他のシュリーカー族の食あたりはともかく、僕の隣で立つ族長はさすがである。どっしりと構え、周りのシュリーカーたちを叱咤する。
「貴様ら、客人の作り話に狼狽えるな。生きたまま腹を割くなど、そんなこと魔族とはいえ子供がするはずもないだろう。しっかりせんか!」
「ある国のチョトツ猟師が、狩りの最中、どうやって暖をとるかご存じです? 狩ったばかりのチョトツの腹を引き裂いたあと、腹に手を突っ込むんですよ。冬でもチョトツの腹の中は温かくて、冷えた手を温めるのにいいらしいです。腹に突っ込んだ手は血だらけになりますけど」
「……アルク殿ぇ」
族長の、「今、それを言うかね」と言いたげな声を合図に、キバの悪魔が僕へと突進してきた。まるで、これ以上聞くに堪えないとでも言いたげな反応である。やや腰が引けているように見えるものの、突進の直撃を食らえば、普通の魔族では耐え切れないだろう。
「いかん!」
「大丈夫です」
慌てたジュロウさんが僕をかばおうと前に出ようとする。それを断った僕は、キバの悪魔との間に、執事魔法『執事食器棚』で幾重にも壁を作り出した。キバの悪魔は、その壁をものともせず破壊しながら突っ込んでくるが、壁によって勢いはかなり削がれている。
続いて『執事食器棚』を使い、突進してくる直線上にキバの悪魔が入るくらいの広さで深さ二メートルほどの落とし穴を掘る。と、同時に僕は、その縁から三歩ほど下がった。
キバの悪魔も地面の異変に気がついたのだろう。慌てて止まろうとするが、その判断は遅すぎた。勢いを殺せなかったキバの悪魔は、地面を滑るようにしてそのままの体勢で穴に落ち、落とし穴の壁面に鼻から突っ込んだ。
突っ込んだときの衝撃で、このあたり一帯を軽く揺らして、キバの悪魔はその動きを止めた。
落とし穴に近づく僕を止めようとジュロウさんの声が聞こえたが、今はあえて無視をする。そのまま落とし穴の縁に立つ。僕の目の前には、キバの悪魔の閉じられた目があった。
しばらく様子を見ていたがキバの悪魔はピクリとも動かない。だが、生きてはいるようだ。落とし穴の壁面に衝突したせいで軽い脳しんとうでも起こしたのだろう。
動かないキバの悪魔に安心したのか、ジュロウさんをはじめとするシュリーカーたちが穴の周りに近づいてくる。
「死んでおるのかの?」
「いえ、まだ生きていますよ」
「トドメは我々にまかせてもらえないか」
「おまかせします」
僕は一歩下がると、ジュロウさんに場所を譲る。キバの悪魔によって、シュリーカー族には多数の怪我人が出ている。シュリーの母親の怪我もキバの悪魔が原因だった。更に生活の糧である畑を荒らされた思いは、それらを育てている彼らにしかわからないだろう。
ジュロウさんは、指先を伸ばし貫手で構えた。気を練るように呼吸を繰り返し、大きく腕を引く。その貫手には、靄のようなものがかかり、何かしらの力が集まっているのがわかる。シュリーカー族の体術は魔族以上に洗練されているようだ。
キバの悪魔めがけて、ジュロウさんの一撃が放たれる。
そのジュロウさんの殺気を感じ取ったのか、本能としての行動なのかはわからない。
トドメの一撃をキバの悪魔に叩きこもうとした瞬間、キバの悪魔の目が開いた。その目はどす黒く濁っており、目からは黒い涙のようなものがドロリドロリとあふれている。
(ん? あれは)
キバの悪魔は、「ブオォォ」という雄叫びを上げながら、目の前のジュロウさんを槍のような牙で突き刺そうと頭を突き出した。その動きを瞬間的に察したジュロウさんは、貫手を手刀に変え、自らを貫こうとする牙を折ろうとする。熟練の戦士だからこそできる鋭い切り返しだ。
しかし、貫手から手刀へと変えたその一瞬の間が、差となって現れる。牙を折ろうとするジュロウさんの攻撃は間に合いそうもない。手刀が当たる前に、鋭い牙がジュロウさんを貫くだろう。
誰もがそう思ったに違いない。
だが、その動きを見ていたのはキバの悪魔とジュロウさんだけではない。一歩後ろには僕がいるのだ。
「失礼します」
キバの悪魔が、ジュロウさんの腹を貫こうとしたそのとき、僕の左手がその牙を掴む。弱っているだけでなく無理な体勢で放たれた攻撃など、止める程度造作もない。そのまま軌道をそらすと、キバの悪魔の頭を地面へと押しつける。
同時に、その牙に叩きつけられようとしていたジュロウさんの手刀を受け止めた。
ところが弱っているキバの悪魔と違い、ジュロウさんの手刀は想像以上に威力が高く、止めきれそうになかった。そう判断した僕は、止めるのを諦め、手刀の力に逆らわないよう流すようにして勢いを削ぐ。その判断は正しかったのだろう。ジュロウさんの手刀は勢いを完全に消された状態で僕の手に収まっている。
これぞまさに、『お嬢様が花瓶を落としちゃったけど、割らないようにそっと受け止める』執事ならではの技だ。言っておくが技名ではない。
執事たるもの、お嬢様が物を落とされたとき、床に落ちきる前に受け止めることができなくてどうするのですか、という教育の賜物である。
「……わしもアルク殿に助けられたようだの」
「お孫さんからは、じいじを助けて、と言われましたので何よりです」
キバの悪魔は、口から泡を吐きながら必死になって逃れようと頭を振るが、牙を掴んだままの僕がそれを許さない。今も目からはドロリとした黒い涙のようなものが流れ続けている。
(これは……間違いないな)
「あ、少し離れててください」
僕は、執事魔法『執事の模様替え』を発動させると、両方の牙を掴み、キバの悪魔を真上へと放り投げた。
「ほーら、たかいたかーい」
この執事魔法『執事の模様替え』は、お嬢様のお部屋の模様替えを行うときに便利な魔法である。どんなに重い家具だろうと、簡単に、軽やかに、素早く、疲れることなく運ぶことができる。ただ僕の場合、家具の移動くらいなら魔法がなくても動かせるため、使う機会が少ない魔法だった。使うのはメイドさんに頼まれたときくらいだろうか。以前、この魔法を使ったのは、ミストファング侯爵領のお屋敷にある庭師の家を動かしたときくらいだろう。
(そういえば庭師さんは元気だろうか)
キバの悪魔は、10メートルほどの高さまで達したあと、自然の摂理に従って落ちてくる。手足をばたつかせているが、飛べるはずもない。耳が大きければ努力次第で飛べたかもしれないが、あいにくとイノシシの耳は小さいのだ。優しくキャッチした僕は、もう一度真上へと放り投げる。ほんの少しだけ力を込めて。
「ほーら、もっとたかいたかーい」
先ほどよりも更に高く、巨大なチョトツが宙を舞う。高さ的には地上から二十メートルほどの高さだろうか。「ぶぅぅひいぃぃぃ」と喜んでいるような声を出している。楽しんでもらえてなによりだ。
「ありゃ、そうとう怯えておるのぅ」
離れたところからジュロウさんの声が聞こえた気がするが気のせいだろう。
鳴きながら落ちてきたキバの悪魔を受け止めると、今度はひねりを加えながら放り投げる。
「ほーら、回転しながら、更にたかいたかーい」
ぐるぐると回転しながら空を飛ぶキバの悪魔は、まさに未確認飛行物体だ。いや、この場合はキバの悪魔だと確認済みなので、ただの飛行物体が正しい。
そういえば、お嬢様も回転しながらのたかいたかいがお好きだった。どれだけ回転しても、降下されるときには自らバランスを取り、体勢を整えておられた。両腕を広げ、楽しそうな声を上げながら、僕の腕のなかに飛び込んでこられたことを思い出す。今を思えば、さすがはお嬢様である。いつか重力を制する日も近いだろう。帰ったら、ひさしぶりにお嬢様にもやってあげようと心の中の執事メモに書いておく。
ぐったりとしたチョトツを受け止め、地面に立たせるが、すぐに横になってしまった。立っていられないほど、喜んでもらえたようだ。
「腰を抜かしておるではないか。魔族というのは無茶苦茶だのぅ」
遠巻きに見ていたジュロウさんが僕の隣に立ち、息も絶え絶えな様子のチョトツを憐れみの目で見ながら、疲れたようにつぶやいた。
「ジュロウさんほどじゃありませんよ。あの手刀はすごかったです」
「受け流されるとは思わなかったが、大丈夫かね」
「今はもう大丈夫です」
実は、ジュロウさんの手刀の威力を完全に受け流せず、僕の右の手のひらはすっぱりと切れていた。すでに『執事救急箱』で治療済みだが、その傷は鋭利な刃物で斬ったようだった。もし受け流しに失敗したのがお嬢様の大切なお皿だとしたら、僕の手の中でお皿にヒビが入っていたに違いない。まだまだ執事としての修行が足りないようだ。
「わしの手刀を受けて、手がついてるほうが驚きだがのぅ」
僕はその言葉に苦笑しながら、寝込んでいるチョトツの頭を持ち上げ、顔を近づける。
「そろそろ出てこないと、鼻から手を突っ込んで脳みそかき混ぜながら引きずり出しますよ」
「ちっ、なぜバレた」
するとチョトツから幽霊のように現れたのは、黒い肌とコウモリのような羽を持った三十センチほどの人型生物。角が生えた頭には毛が無く、耳はいびつに尖っている。目はキバの悪魔と同様、白目の部分が黒く、血走った瞳は異常なほど赤黒く濁っていた。性別はわからないが、ひどい猫背で、膨らんだ腹と先端が鈎状になった尻尾が特徴だ。少し乗り物酔いをしたかのようにフラフラしている。
「なんじゃぁ! こやつは」
突然、チョトツの中から現れた奇怪な生物に、ジュロウさんが声をあげた。周りのシュリーカー族らも驚いているようだ。
「くそぅ、こんなガキにみつかるとは、おれもヤキがまわったぜ」
その悪態を無視して、まだ生きているチョトツの目を確認する。その目からはもう黒い涙は出ていない。チョトツは憑きものが落ちたかのように安らかな寝息を立てていた。
だが、その身体は普通のチョトツと同じくらいの大きさに縮んでいる。キバの悪魔の象徴だった鋭く長い牙は、身体が縮むと同時に二本とも抜け落ちたようだ。根が残っていれば、牙はそのうちまた生えてくるだろう。抜けた牙は回収しておいた。
僕はこの生物を知っている。
「おまえ、悪魔だな。確か、インプだったか」
「く、くわしいじゃねぇか」
「悪魔じゃと!」
「ええ。どうやらこいつがチョトツに取り憑いて悪さをしてたのでしょう」
悪魔とは、魔界といわれる世界から喚び出される異質な存在である。
たまにこちらの世界に紛れてくる悪魔もいるが、通常、悪魔は術者によって召喚される。召喚された悪魔は、術者に使役されたり、使い魔となったりする。
悪魔の能力は下級から上級にわけられており、なかでもインプは下級悪魔の一種だ。
インプよりも上の悪魔を使役することもできるが、よほどの実力者でないと中級や上級の悪魔を従えるのは難しいとされている。魔族だろうと悪魔を軽く扱えるわけではないのだ。
悪魔は魔力がなければこちらの世界に存在することができない。存在そのものが魔力の塊みたいなもの、それが悪魔だ。悪魔が身体を維持するためには、術者の使い魔となって魔力を分けてもらうか、動物などに取り憑くしかない。
動物など――そう、取り憑くのは動物に限らないのだ。
過去に、上級悪魔の使役に失敗し、その悪魔に取り憑かれた純魔族の貴族がいた。その魔族は操られるまま一族を生贄に捧げ、最終的には王族暗殺未遂を起こした。本人は王族暗殺の罪で上級悪魔ごと消滅させられ、貴族位は没収。家はお取り潰しとなった。実際にはその家を継ぐ血縁ある者が誰も残っていなかったそうだ。
魔王国では、悪魔を使い魔とし、使役させることは禁止されていない。普通の使い魔と同様、責任は使役する側が全面的に持つことが定められている。悪魔の罪は術者の罪なのだ。
このように使役に失敗したときのデメリットを考えると、上級の悪魔よりも優秀な魔族を雇ったほうが、メリットが大きいというのが一般的な認識だ。様々な理由から悪魔を使役している魔族もいるが、その数は限られている。
ちなみに魔族と悪魔を混同する人族もいるようだが、これは大きな間違いである。
「なぜ、悪魔が俺たちの畑を……?」
悪魔という言葉に、ジュロウさんだけでなく周りのシュリーカーたちもざわついている。図らずもキバの悪魔と呼ばれたチョトツには、実際、悪魔が取り憑いていたのだ。
悪魔に取り憑かれると、性格が豹変したり、キバの悪魔のように身体に変化が起きたりする。普通のチョトツよりも体が大きかったのは、インプの魔力のせいだろう。また取り憑かれた側が悪魔に抵抗したり、弱っていたりすると黒い涙を流す。この涙は悪魔の魔力だとも言われている。
おそらくだがインプが取り憑いていたことで、僕の言葉がチョトツにも伝わったのだろう。よほど食べられたくなかったらしい。それにジュロウさんとの戦いで弱っていたはずだ。僕が悪魔の存在に気がついたのも、キバの悪魔が流す黒い涙を見たからだ。
「ぐぬぬ。バレちゃあしかたない」
インプは両腕を広げると、尻尾を勢いよく振り回す。その尻尾がたびたび僕に当たりそうになるのが実にウザい。
「くらえ! せいしんしはい」
いつの間に詠唱をしていたのだろうか。インプの魔法が僕を襲う。
魔法の名前からすると、以前、ヨヨさんに相手を操る能力を持った魔種族の話をしたが、それに類する魔法なのだろう。
僕の頭の中を、どろりとした何かが覆いかぶさるような感覚が生まれ、それはやがて吸い込まれるように消えていった。
「ゲッゲッゲッ。おまえをチョトツのかわりにしてやる。ギャーッハッハ」
何が面白いのか理解できないが、目の前のインプがお腹を抱えながら高笑いしている。その笑い声につられるように僕も笑いながら、インプの顔面に頭突きをお見舞いし、仰け反ったところでその細い喉を掴む。
「ぐぼろっ!? な、なにぃ。なぜ、おれのまほうがきかん!」
「何をしたのかわかりませんが、そのウザい尻尾斬ってもいいですか」
「おい、やめろ! しっぽがないとまほうがつかえなくなる」
(なるほど。尻尾を振り回すことで詠唱になるんですか)
「切られたくないなら、正直に話してもらいましょう。シュリーカー族の畑を襲った理由は? 誰に喚び出されたのですか?」
「だれがこたえるか、ばーか」
微妙に聞き取りづらい話し方で、こちらを挑発するインプ。
僕は『執事ボックス』から、侯爵様からいただいた短剣を取り出すと、インプの尻尾を軽く撫でるように斬りつける。するとジュルッという音とともに、斬りつけた部分がえぐれるように消失した。
「ぎゃああ! な、なんだ、それは。おれからマリョクがぬける」
「これはソウルイーターですよ。魔力を吸い取る短剣です。ああ、そういえば悪魔って魔力の塊みたいなものでしたね。……さぁて、何本目の傷で死ぬかな。あ、話したくなったら話してください。それまで僕は実験してますから」
再び尻尾を斬りつける。
「ひぃぎやぁ」
まわりのシュリーカー族らは手をお尻に当てながら震えている。見た目がキノコなので、どこがお尻なのかはわからないが、シュリーカー族にもお尻はあるらしい。だが、斬ったのは尻尾である。
「悪魔だ。悪魔がいる」
「なんてむごい」
「悪魔よりも悪魔らしい」
勇敢なシュリーカー族も目の前のインプに怯えているようだ。下級とはいえインプも悪魔なのだ。それが目の前にいるのだから無理もないだろう。
「あ、ジュロウさんたちもやります? シュリーカー族を襲い、畑を荒らしたのは、こいつです」
「……いや、さすがにそこまでようせんわ。これ以上、被害がなくなれば十分じゃ」
なぜかジュロウさんたちシュリーカー族は引き気味だった。首をブンブンと振りながら遠慮している。
キバの悪魔にトドメを刺すとか言ってたのに、なぜ遠慮するのだろう。
僕はそう思いながら、インプとのお話し合いを続けるのであった。




