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第五十六話 鶏の中に鶴を見る

 「このままではお客様との契約は難しいかもしれませんな」


 煽りの言葉が気に障ったのだろう。顔を赤くしたフトック氏が、突然ゴネ始め、「このまま契約を結ぶのは難しい」と、言い出した。


 僕は、その言葉にほくそ笑む。


 もしここでフトック氏が、貴様らとは契約を結ぶのは不可能だと怒り出せば、それを王都中に広めるつもりだった。


 『巫女様が監査役をしている隊商との契約を拒むなんて、何かやましいことでもあるのではないか?』


 これはこれで面白くなりそうだったが、フトック氏は、「難しい」と言ったのだ。「難しい」というのは、困難ではあるが不可能ではないということ。


 前世で僕が住んでいた国であれば、相手のことを考え、「ああ、無理なんだな」なんて思ったかもしれない。良い意味で空気の読める国でもあった。

 しかしその空気を逆手に取り、悪質な電話勧誘に、「結構です」と答えたら大量の商品や教材が送られてきた、なんて詐欺まがいのことが起きるようになった。最近では、「はっきりと断りましょう」なんて注意喚起まで出ていたくらいだ。


 おっと、話がそれた。


 目の前にいるフトック氏が、少しでも有利な条件を引き出そうとしているのは明らかだ。


 氏の「難しい」という言葉に僕は、「な、なぜですか。このままでは代表に怒られてしまいます」などと、笑いをこらえながら狼狽えてみせるという高度な芝居をしてみせる。


 すると、僕に一泡吹かせてやったと思ったのだろう。フトック氏は『してやったり』という顔を浮かべ、にやけている。その顔は、僕がほくそ笑んだことに気がついていない。


 こちらが話を進めようとしても、フトック氏は首を振るばかり。多少、高い価格でも取引がしたいと申し出ても色よい返事は返ってこない。


 僕は、さも困ったように装いながら、悩みに悩んだような顔をしつつ、フトック氏にとっておきの提案を持ちかける。


「では、こういう条件はいかがでしょう。損害賠償が発生するような事案や法律に違反した場合、隊商の権利をフトック食肉協会に譲るという契約を結ぶのです」


 この一言で、フトック氏の目つきが変わった。


 これが僕の仕掛けたことだと気がつかずに。

 この条件の内容については、もとより提示するつもりだったのだ。


 損害賠償契約は、魔王国の取引では普通に結ばれる。期日までに支払いができない場合や納品が遅れた場合の保証契約である。その保証は損害にもよるが、お金であったり、物品だったりする。担保たんぽと思えばわかりやすいだろうか。


 商業ギルドでも言われたが、双方納得の上で結んだ契約であるのなら十倍返しだろうと百倍返しだろうと関係ない。それこそ隊商の権利を担保に契約を結んでも問題はないのだ。


 あれほど巫女の存在に食いついてきたフトック氏側としては、願ってもない機会であろう。巫女であるヒミカさんを自分の陣営に引き込むことができるのだ。


 特に他店の乗っ取りをくわだてている氏としては、巫女という存在は喉から手が出るほど欲しい人材のはずである。


 というのも『巫女様のいる店が乗っ取りなんてするはずがない』というのが一般的な認識なのだ。


 実際にはそんなことはないのだが、一般魔族の意識なんてものはその程度である。もちろん心身ともに巫女巫女みこみこしいヒミカさんは別として、役職だけでその者の性格や真意ははかれない。中にはあくどいことをしている上職の者だっているのだ。


 だが、それほどまでに巫女の信用というのはこの世界では大きい。その信用は歴代の巫女が積み重ねてきたものでもあるし、ヒミカさんが積み上げてきた信用でもある。


 だからこそヒミカさんには監査役になってもらったのだ。


 オリーブやキュウリを持ち出し、こちら側は優秀であると必要以上に煽ったのも、相手を怒らせ、こちらが下手したてに出るための前準備にすぎない。下手に出たこちらを見て、警戒心を解き、調子づかせ、つけあがらせるのが目的だった。最初から自分たちが不利になる条件を出せば、何を企んでいるのだ、と警戒されてしまっただろう。


 フトック氏としては魅力的な条件だろう。ヒミカさんが所属する隊商『妖精の祝祭』が美味しいエサに見えているはずだ。


 カモが巫女背負ってやってきた、とでも言いたげなにやけ顔を浮かべ、違う世界に旅行中のフトック氏に対し、僕は申し訳なさそうな顔をしながら頭を振る。


「ああ。申し訳ありません。会長さん。僕は、会長さんともあろう方に失礼なことを言ってしまいました」

「ぶふ? どういうことでしょう」


 旅行中のフトック氏が、一瞬にしてこちらの世界に戻ってくる。


「自分で言うのもなんですが、このような不平等な契約条件など、王都にフトック氏ありとまで言われた方が結ぶ契約にふさわしくありません。これでは会長さんが僕たちを脅したという心ない噂が立つやもしれません。この条件は撤回させてもらいます」

「ちょっおまっ。お、お待ちください、お客様」


 明らかにカモが巫女背負って逃げていくかのように、狼狽えた様子を見せるフトック氏。なんともわかりやすい御仁である。ここまで操りやすいと悪気すら感じ……ないか。そもそも商売は商人同士の戦争である。


 (僕は執事だけどね。さてと……)


「いえ、今回は会長さんとの契約はあきらめます。会長さんほど名高い商人に対して、このような失礼な条件を口に出した思慮の浅い僕をお許し下さい」


 僕は席を立ち、頭を下げる。頭を下げるのはなんと言ってもタダである。


 チラリと顔を上げると、フトック氏は慌てた顔をしている。どうやら針につけた隊商の権利譲渡という条件エサが、喉の奥まで刺さっているようだ。逃がすものかという思いが伝わってくる。


「貴重なお時間をありがとうございました。それでは失礼いたします」


 そうフトック氏に伝えた後、僕は店の外へと向かう。


「お、お待ちください。で、では、お客様。こうしましょう。万が一、私どもに不手際があった際は、こちらも店の権利を譲り渡すということで。ただし、そちらに不手際があったときは、巫女様には当協会の監査役についていただきますぞ」


 (隊商の権利よりも巫女の地位を狙ってることがバレバレだよ)


 僕は振り返り、驚いたような顔をしながら暑苦しいフトック氏の元へと駆け寄った。


「よろしいのですか! さすがは王都にフトック氏あり、と言われた大商人。名高い商人である会長さんの懐の深さに感服いたしました。これなら平等な条件になりますね。監査の件は、巫女様もわかっておいででしょう」


 僕は身振り手振りを交えて、やや大げさにフトック氏を褒め称える。見え見えのお世辞にも関わらず、フトック氏は気分を良くしたようだ。


 よく考えれば、『フトック氏あり』、『大商人』、『名高い商人』という言葉が良い意味だけとは限らないことに気がつくのだが、氏が気づいた様子はない。これらの言葉も『結構です』と同じようなものだ。悪徳商人フトック氏あり、悪名高い商人、腹の大きな商人だと思っていても、一部の言葉を言い忘れただけである。


 席に戻った僕は、当たり障りのない会話をしながら書面で契約を交わす。書面には先ほどの条件がしっかり付け加えられている。



【追加契約】

◆取引相手に、以下の違反があった場合、違反した側は店舗もしくは隊商の権利を相手に譲るものとする。ただし、双方の相談によっては減免も可能とする。

 ・魔王国法に違反した場合

 ・損害賠償が発生し、適正な対応が行われなかった場合

 ・商品の納品、代金の支払いが滞り、適正な対応が行われなかった場合



 あとはサインをすれば契約完了だ。


 これと同じ書面のものを三枚書き、双方が一枚ずつ保管する。残りの一枚は、商業ギルドに提出するためのものだ。普通、個別の取引契約については商業ギルドに出す必要はない。しかし、大きな契約や特殊な条件で契約した場合、揉め事になったときのことを考えて商業ギルドを通すのだ。


「では今後ともよろしくお願いいたします。それはそうと、本日は店の前にあるカゴの商品を全て買わせていただこうと思うのですが構いませんか」

「カゴの商品?」

「ええ、今日、サンプルにいただいたお店の前に置いてある商品です」


 いつの間に近づいたのだろう。フトック氏のそばに一人の女性が立っていた。その女性がフトック氏に耳打ちをする。


「あ、ああ。キ、キノコですね。お買い上げありがとうございます」


 商品がキノコだと、今、初めて知ったかのようにフトック氏が言う。どうやら彼女が耳打ちしたのは商品の名前だったようだ。どうやらフトック氏は商品の名前を知らなかったようだ。


「ところで、そちらの方は……」


 僕は先ほどフトック氏に耳打ちをした女性を見ながら聞いた。人族の年齢でいうと二十歳前後だろうか。


 草木染めの緑色のチェニック(短衣)と茶色のズボンを着こなしている。透明感のある肌は白く細身。小さな顔の割に大きい青い瞳の目は、力強さと優しさを合わせ持っている。腰まで伸びたストレートの細い髪は、薄めの金髪。そして、その髪の間から飛び出ている細長い耳が良く目立つ。


「……エルフ」

「ええ。左様でございます、アルク様」


 契約を結んだフトック氏に耳打ちした女性は、まさしくエルフだった。王都には魔族だけでなく、龍族やエルフ族が住んでいる。だが、実際にエルフを見たのは初めてだった。


「おや。私は名乗った覚えはありませんが」

「契約を結ばれるお客様のお名前の確認や商品の名前くらい覚えるのは商人として当然です。アルク様のお名前は、失礼かと思いましたがそちらの契約書と隊商許可証を拝見しました」


 彼女はテーブルの上にある契約書と隊商許可証に目をやりながら答えた。


 自分の店で売っていたキノコの名前を知らなかったフトック氏は、女性エルフの言葉の意味をようやく理解したようだ。


「見習いの分際で、口をはさむな! 向こうへ行ってろ」

「アルク様、申し訳ございませんでした。失礼いたします」


 逆ギレともとれる物言いで怒鳴られた彼女は、僕にきれいなお辞儀をしてから店の奥へと去っていった。去り際、彼女の侮蔑のこもった視線が、フトック氏に向けられたのを僕は見逃さなかった。


 透明感のある声といい、見習いというフトック氏の言葉といい、キュウリを出したときに驚いていたのは、どうやら彼女のようだ。そのキュウリはすでに回収してある。


 (これは、これは。面白い店員さんがいたものだ)


「申し訳ありません。アルク様。うちの見習いが失礼いたしました」

「いえいえ。お気になさらないでください。『あの』エルフは、最近こちらのお店に入られたのですか」

「ええ。商人の基本を教えて欲しいと、三ヶ月ほど前に当店に来たのです。数字が得意と言っていたので店の帳簿の手伝いをやらせていますが、今のように店の中をふらふらとしている始末。あの下等種族め。見習い期間で無給とはいえ、何の役にも立ちません」

「そうでしょう。そうでしょう。一般的な魔族とは違いますからね」

「さすがはアルク様。よくわかっていらっしゃる」


 同意を得られたことにご満悦なフトック氏はわかっていないようだ。彼女に指摘されてから、僕を名前で呼び始めたことに。


 もとよりフトック氏には名乗っていない。もちろん名前を聞かれたこともない。フトック氏が客に対してどのように思っているのか試していたのだが、実にわかりやすかった。


 それに、僕が言った『あのエルフ』という言葉に、フトック氏は何を勘違いしたのか、彼女のことを下等種族とか、役に立たないとか、言いたい放題である。あのエルフという言葉の『あの』の意味は、あちらの、という意味であって、『あの野郎!』のように挑発的な意味を含ませた『あの』ではない。


 話を合わせたが、フトック氏の多種族に対する意識がよくわかった。あの素晴らしい食材であるウシドンを育てたミノスさんに対する態度からも感じていたが、気位が高く自尊心が強いらしい。どうやら脂肪がたっぷり詰まった腹と一緒で、自意識だけはでかいようだ。まあ、悪いことではない。魔族らしいと言えば魔族らしい態度なのだ。


 エルフの女性店員さんのことは記憶にとどめておくとして話を続ける。


「会長さん。ついでといってはなんですが、今と同じキノコを金貨一枚で買えるだけ、追加で用意してもらうことは可能ですか。昼間見たときよりも売れてしまったようで、もう少し欲しいのです。できれば二、三日中に」


 フトック食肉協会の店の前にあったカゴに入ったキノコらは、僕が全て買い占めてしまった。どうやら店に在庫はないらしい。


「わかりました。すぐにでも用意させます。明後日にはご用意できますよ。ところでお支払いはいかがしましょう」

「追加の分は商品の引き渡しのときにお願いします」


 店の前に置いてあったキノコの代金は、金貨一枚で十分お釣りがくる。しかし僕は大量の麦わらとマッシュルームとニンジン、それに塩を買い足すことで金貨一枚ぴったりの取引にしておいた。稲わらは後日使う予定だ。


 支払いの際、フトック氏の目の前で『執事ボックス』を開き、セイバスさんから預かったお嬢様の食材調達用の資金が入った袋を無造作にテーブルの上に置く。金貨が百枚入った袋は、じゃらりと重量感たっぷりの音を響かせた。


 袋を開き、わざと音を立てるようにして中身の金貨をかき混ぜる。このとき少しだけ金貨が外に見えるようにすると効果的だ。


 どう効果的かというと、フトック氏はもちろん、店内にいる従業員の目がその金貨の入った袋に注がれているのだ。王都に店を構えるフトック氏にしてみれば、金貨百枚など珍しい金額ではないかもしれない。だが従業員は別である。それも見た目は十歳の子供が一千万円ほどの価値がある財産を無造作に広げている。


 街から街へと旅をする隊商が、街の外で盗賊に襲われ、街の中ではスリや強盗などが珍しくない、このご時世からすれば実に無防備に見えることだろう。


 その証拠に店の従業員の目は、商売人というよりも盗賊が獲物を見る目に近い。フトック氏の様子をうかがうと……金貨の袋に釘付けになっていた。どうやら王都に店を構えてみてもお金には目がないらしい。


「じゃあ、今日の分の代金である金貨一枚。確かにお渡ししましたよ」

「あ、はい。確かに……」


 戸惑いながら金貨を受け取ったフトック氏と従業員たちの目は、僕が『執事ボックス』に入れるまで、金貨の入った袋から離れることはなかった。


 今回、予約したキノコの取引も書面で契約を交わすことにする。契約書には、キノコの代金は商品と引き換え、納期は二日後と書かれている。こちらは個別の取引のため、本来であれば商業ギルドに報告する必要はないのだが、渋るフトック氏を丸め込み、初取引ということで先ほどのように商業ギルドに提出する三枚目の契約書も書いてもらった。


「アルク様は、慎重ですな」

「いえいえ。記念みたいなものですよ」


 なんの記念かわからないのだろう。フトック氏は、「はぁ」と気のない返事を返してくる。


「商業ギルドに提出する契約書の控えは、僕が持って行きましょう。ただ、私だけですといろいろと懸念されることもあると思います。そちらも誰がご一緒していただくことはできませんか。例えば、先ほどの暇そうなエルフの女性店員さんとか――」


 こちらの提案にフトック氏はうなずき、僕はエルフの女性店員さんと一緒に商業ギルドへと向かうことになった。


「今日は有意義な取引をありがとうございました、会長さん」


 軽い挨拶を交わしてから、店を出て大通りを歩く。一緒に店を出たエルフの女性店員さんは、僕の後ろを黙ったまま静かに歩いている。

 商業ギルドに書類を提出し、ギルドを出たところでエルフの店員さんから話しかけられた。


「アルク様。なぜ、あの店と取引を?」

「と、言いますと?」


 エルフの女性店員さんの名前はニーナ。自分の店を持つのが夢だというニーナさんは、エルフの国を出て、広大な領地を有する魔王国へとやってきた。王都でも有名なフトック食肉協会で修行することになったのだが、もうしばらくしたら魔王国を出ていく予定だという。


 その理由を尋ねてみると、魔族の食事に対する無関心さが原因のようだ。魔族は味を理解していないし、毒のあるものを食べても平気だ。そして食材の名前すら気にしていない。魔力の補給ができればいいという魔族の考えがニーナさんの目指すお店の趣旨と異なるのだそうだ。

 誰が、とは言わなかったが、フトック氏の他種族を見下すあの態度も出て行く原因のひとつらしい。ニーナさんがフトック氏に耳打ちしたときに向けた軽蔑の目を見れば、どのような待遇を受けているか想像できる。それに彼女自身、フトック氏のことを商人として認めていないのだろう。


「魔族のことは、長老にある程度聞いてましたが、まさか食事に対して関心がないとは思いませんでした。……あ、魔族のアルク様にこんなことを言うなんて。申し訳ございません」

「いえいえ。僕もそう思いますから大丈夫ですよ。あと僕はまだ十歳ですからね。お客様扱いされるよりは普通に話してくれたほうが楽です」

「ですが……」

「それにニーナさんとお話したかったんですよ」


 そう、彼女には聞きたいことがある。僕はこの世界にキュウリがあることを知らなかった。偶然、河童族のソーサさんに会う機会があり、そこで初めてキュウリの存在を知ったのだが、彼女はその存在だけでなく名前も知っていた。


 もしかしたらニーナさんは、この世界の食材に詳しいのではないか。そう思ったからこそ一度話をしてみたかったのだ。


 ニーナさんにキュウリのことを聞くと、彼女はある河童族の村で食べさせてもらったことがあると言っていた。残念ながら僕と同じで売ってくれなかったそうだ。


「ということは、ニーナさんは食材を扱うお店を持ちたいのですか」

「ええ。そうなんです。世界中から美味しい食材を集め、お店に並べたい。美味しいものを食べたときの笑顔は、どの種族であっても幸せに満ちあふれています。その笑顔や幸せを多くの方に体験してもらいたい、そう思って商人になろうと決意したんです。……まあ、最初に魔族の国に来れたことは、ある意味勉強になりました」


 そう言って苦笑する。

 どうやらエルフをはじめ、ほかの種族には魔族が味オンチであることは知られていないようだ。


 さっき話していた、お店の趣旨と異なる、というのはこのことだろう。確かに味オンチの魔族では、美味しいものを食べて笑顔や幸せを体験してもらいたいという彼女の夢を叶えることは困難極まりない。


 では、なぜそんな魔王国に来たのかと問えば、広いから住んでいる者も多いと単純に考えたらしい。確かに商人である以上、買い手売り手が多い場所に集まるのは間違いではない。問題はニーナさんが取り扱おうとするものが食材だったことだ。



「世界中の美味しいものを扱うお店ですか。その夢はきっと叶うと思いますよ」

「え?」

「食事に対して関心の薄い魔族も変わりつつあるということです」


 僕は『執事ボックス』からコンペイトウの入った小瓶をこっそりと取り出し、ニーナさんに手渡した。


「ニーナさんとお話できた記念にどうぞ。休憩時間にでも食べてください」


 ポカーンとしているニーナさんの返事を待たず、僕はお嬢様の待つ屋敷へと戻るのだった。



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